読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

スパーズを中心に組織論的な話

レイカーズがスパーズから学べること

あまり更新できない、また古い話ばかりで悪んだけども、いくつかの話題が組み合わされることで別のものが見えてくることもあるので、ストックしてある情報からいくつかまとめて出します。

まずはESPNのバクスター・ホルメス記者による記事。記事タイトルまんまですが、新生レイカーズはスパーズを真似して安定したフロントというところからスタートすべきだ、という内容です。オーナーが代替わりして以降のレイカーズの低迷と混乱、そしてそれを精算する形でオールスター後にマジック・ジョンソンを新社長、ロブ・ペリンカを新GMに据え(この辺の話はNumber Webに宮地陽子氏が過不足なく書いているので改めて読まれたし)、再出発を図るレイカーズの最初のホームゲームがスパーズ戦だったこと(で、21点差の大敗を喫したこと)から構想された記事のようです。

ホルメスが書いているように、おおよそこの2チームはNBAにおいて極めて対象的なチームと見られている(ビッグマーケット対スモールマーケット、派手なプレー対基本的なプレー、スタープレーヤー対チームプレーヤー、極端な軋轢対不動の安定性……)、そうでありながら別々のやり方で長年NBAの最強豪チームでい続けている(いた)わけで、レイカーズが何から何までスパーズの真似をするというのは考えにくいし、またそうすべきでもないでしょう。ホルメスが主張しているのは、レイカーズがスパーズからなにか盗むとするなら、「成功はその構成員の協働の精神からもたらされる」というスパーズのアイデアであろうということです。文脈的には選手ではなくオーナーとフロントについての話です。ホルメスの主張は試合前のポポヴィッチへのインタビューに基づいたもので、そこから引用します。

「R.C.と私は長年一緒にやってきたし、その継続性は、敵意やその種のことなしに我々が素早い意思決定をするのに役立っている。("[General manager] R.C. [Buford] and I have been together for a long time. So, obviously, that continuity helped us make decisions quickly without animosity and that sort of thing.")」

「私はオーナーシップから物事は始まるのだといつも考えてきた。人々に自分の仕事を最後までやらせてやるオーナーはより大きな成功を収めていると思う。もし誰かが本来の自分の仕事じゃないことをして大成功しようとするなら、自分が関わる仕事はどんなことでもやってのけられると考えることが常に落とし穴になる、そしていくつかの組織はそうやって問題に巻き込まれてきた。我々はそのような問題を抱えたことはない。("Well, I've always thought it starts with ownership. I think owners who let people do their jobs end up being more successful in our business. And obviously, if someone has made a lot of bucks doing something else, the pitfall is always to think that you can do that no matter what business you might be in, and some organizations get into trouble because of that. We haven't had that problem.")」

「オーナーシップがあれば、我々は計画を遂行し、必要なときにオーナーに情報を提供し続けられる。パズルのピースが正しく配置されれば、マネジメント、コーチ、選手間のシナジーが生まれる。結局のところ、自分第一でなく、あるがままで上手くやっていけ、成熟した客観的な判断の仕方がわかってる人々が重要なのだ。全くもって人次第だ。("So ownership has allowed us to just run the program and keep them informed as we should. After that piece of the puzzle is in place, then it becomes a synergy between management, coaches and players. At that point, it's about people. It's about people that have hopefully gotten over themselves, that are comfortable in their own skins and know how to maturely and objectively agree and disagree. That's totally dependent on people.")」

自分第一でない、ということを非常に高く評価するというのは以前デジョンテ・マレーのドラフト指名とスパーズの育成・スカウティング思想で論じたとおりで、これは別に選手に限った話ではないということです。スパーズファンであれば特に目新しいところのない、ポポヴィッチが何かにつけてよく言うようなことだよなあ、という感じの話ではある。やや抽象的な語り口なのもいつものことで、じゃあスパーズにおいてオーナーやフロントの関係やあり方とは具体的にどういうものなのか、スパーズにおける協働の精神とは具体的にどういうものなのか。

スパーズのフロントとオーナーのあり方

スパーズのオーナーであるピーター・ホルトのリーダーシップについて、SAENのトム・オースボーン記者の記事。ポポヴィッチの「彼は賢いから自分がコーチでもマネージャーでもないことを分かっている(“Peter Holt is smart enough to know he’s not a basketball coach or a manager,”)」という言葉が端的な表現だと思います。ホルトがこれまでチーム運営についてしてきた仕事は、信頼できる優秀な人材(ポポヴィッチビュフォード)に然るべきポジションを与える、設備やスタジアムなどの十分なリソースを用意する、そしてことが動き出したら一切干渉しない、ということのみと言えます。そして自分はスポットライトが当たる場所を避け続ける。スパーズにおける自分第一ではないことを良しとする文化は、まずもってオーナー自身が体現しているといえます。そしてまたこのスタンスをオーナーになって以降貫いてきたことが、スパーズの長期に渡る安定した組織運営の土台になっています。初優勝した1998-1999シーズンの序盤で負け越し、通常のチームであればコーチとしてキャリアの薄いポポヴィッチがクビになってもおかしくない状況でも全く動じなかったことは、この手の記事では頻繁に語られることです。

フロント陣の関係構築の仕方について、USA Todayのサム・アミック記者の記事。ウォリアーズのボブ・マイヤーズGMが携帯電話に保存しているポポヴィッチの言葉が載せられていますのでこれを引用します。

「どのような経営者、GM、コーチであれ、オーナーとの間にシナジーが作られなければならない。 [...] 信頼があるところにシナジーは生まれる。そこに壁もテリトリーもない。あらゆることが議論され、公平に扱われる。批判は歓迎され、批判するものがいればこそ、素晴らしいの組織となるのだ。全ての人にそうした自由な雰囲気があることが組織を良く機能させる。それはドラフトから細かい戦術論まであらゆることに言えることだ。経営者やGMやコーチだけの専権事項というようなものはあってはならない、さもなくばカルチャーなど作られない。少なくとも、それで我々は上手くやっている。(“A synergy has to form between the owner, whoever his president is, whoever the GM is, whoever the coach is, [...] There’s got to be a synergy where there’s a trust. There (are) no walls. There is no territory. Everything is discussed. Everything is fair game. Criticism is welcome, and when you have that, then you have a hell of an organization. That free flow through all those people is what really makes it work. And that includes everything from draft to Os and Xs. Nothing should be left to one area – only to the president, only to the GM, only to the coach – or the culture just doesn’t form. At least that’s what’s worked for us.”)」

オープンでフェアな意見交換を各人が行い、信頼関係を構築していく、そうやって全ての物事を進めていくという趣旨になるでしょう。しかし気をつけなければならないのは、だからといって立場が上のものが組織の行動をコントロールするようなことはしないということです。先に書いたように、オーナーは「自分がコーチでもマネージャーでもないことを分かっている」ため現場で行われていることには一切介入しません。また、ポポヴィッチは社長でもあるのでGMよりも立場は上で、例えば人事に対して意見を強要したり、最悪GMをクビにすることなどもできるはずですが、ポポヴィッチビュフォードを信頼し、人事において彼の決定に対して干渉しません。以前レナード対ヒルのトレードにおいて、ポポヴィッチが最後まで反対していたものの、最終的にはビュフォードの意を飲んでトレードを承諾した経緯があることを書きました。また、ビュフォードのチーム構築のビジョンはかなり長期に渡るもので、例えばオルドリッジの獲得計画はその3,4年前から計画されていたものであることを後にオーナーが明かしていますが、それを許容してチーム作りや戦略構築をできるのはフロント陣やオーナーの強い信頼関係があってこそでしょう。テリトリーのない自由な意見交換を良しとする一方、各人の職分はかなり尊重されているといえます。

反面教師:ニックスの例

スパーズ的なオーナーやフロントのあり方を良しとするならば、おおよそそれと真逆のことをしているのがニックスです。ニックスについて、比較的最近ラリー・ブラウンが「フィル・ジャクソンがそんなにトライアングルをやらせたいんだったら、自分でコーチしろ」と発言したことについてESPNのイアン・べグリー記者の記事。ブラウンは「コーチを雇って自分の好みの一定のやり方でやらせる、ドラフト指名した選手にも自分の好みの一定のやり方でやらせる、なんでそんなことができるのか理解できない。("I can't figure out how you can hire a coach and tell him how you want him to play. I can't figure out how you can draft players for a coach that you know coaches a certain a style, and has been successful doing that style, and get him to play a style that you feel comfortable with,")NBA史上最高のコーチの一人がいるならそいつにコーチさせればいい。トライアングルがやりたいなら、そいつがコーチになって、全員にやり方を教え、それが上手くできる選手を揃えればいい。("Then you coach. You're talking about one of the greatest coaches in the history of our sport. Let him coach. If he wants to do the triangle, put it in, let him coach it, and then teach everybody around and get the players that are comfortable playing it.")」と割とキツめの(でも真っ当な)批判をラジオで行ったようです。

ニックスはシーズン前半はトライアングル色のあまりない戦術で戦っていたようですが、後半はおそらくジャクソンの影響でトライアングル色を強めたようです。デレク・フィッシャーはだんだんトライアングルを目指さない方針へと変わっていったかと思いますが、ジャクソンとの関係がそれでこじれて、結果的に昨シーズン後に解雇されました。トライアングルに関してはカーメロ・アンソニーかデリック・ローズか、「それがいいか悪いかの問題じゃなく、そもそも選択の余地がない」と、事実上強制であることを示唆していたかと思います。

ジャクソンは社長であって、GMでもコーチでもありません。コーチや選手との信頼関係の構築に失敗しているのはフィッシャーやアンソニーとの関係から明白だと思います。事実上コーチを自分の傀儡として扱っており、人事においてGMの領分を冒しています。ポポヴィッチの、組織がどうやって失敗するかについてのコメントに「もし誰かが本来の自分の仕事じゃないことをして大成功しようとするなら、自分が関わる仕事はどんなことでもやってのけられると考えることが常に落とし穴になる」というものがありましたが、まさにその落とし穴にはまっているという感があります。オーナーのジェームズ・ドーランの現場介入に関しては周知のとおりで、ジャクソンが来てからはあまり動きがありませんが、仮にジャクソンが社長の座を降りたとしても、およそスパーズ的な観点で良しと言えるようなチームにはならなそうです。

2月のNYでのスパーズ対ニックス戦前のポポヴィッチへのインタビューがNewsdayのロジャー・ルービン記者の記事に載っています。アンソニーのトレード騒動やオークリー出禁騒動で揺れていたニックスの現状批判の言葉を記者は引き出そうとしたみたいですが、それに対しては「自分の問題じゃないから」とかわされているものの、自分がGMとコーチを兼任していた時代を振り返って、それはとてつもなく大変だった、全てをやろうとすることは難しいと発言しています。あらゆることを自分でコントロールしようとして全てが上手くいかない状況のジャクソンに対する遠回しなアドバイスと見て良いと思います。

スパーズ的な組織のあり方が最も理想的であるということを前提とするならば、ニックスは失敗すべくして失敗していると言えます。他にも長期にわたって弱小チームに落ち着いているようなチームも同じ轍を踏んでいるところが多いかと思います。では、果たしてスパーズ的な組織のあり方は理想的と言えるのかどうか。Kは比較的覚めた目線のスパーズファンですが、やはりベストだと思います。客観的な評価としても、ESPNのマネジメントランキングで今年も全部門で1位でした。ほぼコンセンサスと言っていいのではないでしょうか。

スパーズの組織論的な話は、デジョンテ・マレーのドラフト指名とスパーズの育成・スカウティング思想でKが書けることは8割方書いたかなと思っていますが、今回の文章と合わせてだいたい書ききったかなあと思います。なおも書くとしたらすんげー細かい話になりそうだが……。

セルビアのMegaってこんなクラブ、他ドラフト話

セルビアのMegaってこんなクラブ

セルビアのMegaというクラブ(基本となる名前はKK Mega Basketで、スポンサー契約に絡んで名前が変わります。今はMega Leks。ヨーロッパだとこういうのはよくあります)に関して、マックス・ホルム記者の記事。ヨーロッパ全体では特に強いわけでもないのに、最近やたらNBAドラフトで指名される選手が多く、一番成功したのが2014年のヨキッチ、去年は3人もいい位置で指名されている(24位でルワウ=カバロー、32位でズバック、35位でザゴラック)、DraftExpressを基準にすれば今年も一人指名されそうです。セルビアといえば、フットボールと同じでレッドスターパルチザンがもちろん強いわけで、Megaはだいたいその下のポジションにいるようですが、なんでそのクラブがこれほどNBAドラフト指名選手を排出できるのか。

やってることは単純で、所属チームでプレータイムを得られない才能のある若手を、国籍を問わずヨーロッパ中から集めているということのようです。例えばルワウ=カバローはフランスの2部リーグのクラブで十分多くのプレータイムを得られていたわけではなかったそうですが、Megaでプレーした1年で一気に評価を上げることが出来たということが語られています。DraftExpressを見るとフランス時代もなかなか高い評価を得ていますが、Megaに移籍してから大幅に評価をあげています。

チーム作りの方針は、ヘッドコーチ曰く「我々の目標は選手がより容易により早くNBAに適応できるようにすることだ。彼らが正しく成長することで、クラブもともに成長する」ということのようです。NBAプレーヤーを排出すること自体を目的にするのはどうなんだと思う部分がある一方、そういう目標を立てることが選手の成長につながったり、より良い選手が移籍して来やすくなったりしてチーム成績に好影響を与えることはありそうですし、NBAチームにドラフト指名されればバイアウトで収入が発生したり、あるいはそれがなくても他のヨーロッパの強豪クラブに移籍することで移籍金が発生したり、クラブの知名度が上がってスポンサーがつきやすくなったりということもあるのかもしれません。経営の話は全く聞いてないようですが、経済的にも優位性のある戦略だからやれてるんだと思います。フットボールの優秀な小クラブがやってることをバスケでやってます、ということでしょう、おそらく。経済規模が全然違うので、移籍金で大儲けみたいなのはないと思いますが。

ミルチノフ頑張ってる

セルビアでドラフトと言うと思い出すニコラ・ミルチノフ。彼はパルチザンで17か18かでスターターになったスーパーエリートなのでMegaなんぞお呼びじゃねえぜってな感じですが。

で、そのミルチノフは順調に成長しているみたいです。ユーロリーグで見ると時間が経つごとにプレータイムが伸びてきてますし、スターターになる回数も増えてきているようで結構です。オリンピアコスってヨーロッパでも超がつくぐらいの強豪、このレベルのチームでユーロリーグでスターターに定着できる選手は多分NBAでも問題なくプレーできると思うので、良い傾向だと思います。相変わらずOREBのほうがDREBよりも多いとかいう謎のリバウンド力を発揮していますが、FTが数も率も上がっているようで、TS%が60%を大きく超えてきています。OREBからシューティングファールをもらいやすいので、彼のような強力なオフェンスリバウンダーこそFTは上手くあるべきです。イップスになってしまっている場合はともかく、努力家の選手はその努力がFT%の安定した向上という形で表れやすい、というのがKの認識ですので(レナードオルドリッジを見よ)、60%切っていたFT%が70%まで着々と向上しているという事実は、ミルチノフがスパーズの選手として適切な資質を持つことを示すものだと勝手に認識しています。ちなみに、現在のミルチノフのOREB%はユーロリーグで18.21%ですが、NBAのOREB%のリーダーはハワードとドラモンドの15.2%で、10%を超える選手は16人しかいません。(追記:プレータイムが一定以上ある選手で!プレータイムが比較的短い選手なら10%超えはたくさんいます。なんかダメな論じ方してしまった。それでも18%なんてほぼ見たことないが)リーグも違うしルールも多分違うと思うので比較してもしょうがないとは思いますが、OREB力の異常さは伝わるでしょう。普通こんな数字は見ない。DREB%がCとしてはだいぶ低いのがさらに謎を深めるミステリーな男、ミルチノフ。早く見たいから来シーズン連れて来て、と言いたいけどオリンピアコスと3年契約だからもう1年スタッシュでしょうね。

NCAAトーナメントでドラフトの評価は上がらない

てな話をVice Sportsのサム・ヴェセニー記者が書いている。"Prisoners of the Moment"というタイトルがうまい。NCAAトーナメントはあまりにも大きすぎる注目を集めるため、ファンやメディアはここでのプレーでプレーヤーに対する評価を左右されやすいが、しかしNCAAトーナメントのプレーなんてプレーヤーの資質を正確に評価するためにはサンプルとして少なすぎでしょ、殆どのNBAのフロントはそんなことには評価を左右されないし、そもそもNCAAトーナメントの前にだいたい評価を終えてて、NCAAトーナメントよりもドラフト前のワークアウトのほうが重要、ということのようです。

それでもやはり試合を見てしまうと影響される部分もある。特に人はより最近起こったことに多く影響を受ける(直近バイアス)ため、シーズン最後の試合であるNCAAトーナメントの印象にとらわれやすい。それを避けるために、高校時代からもっと長い期間をかけて観察し、またトーナメントの期間にハイプを避けるためにわざとヨーロッパのプレーヤーを見に行くGMなどもいるそうです。

これはあれですな、夏の甲子園でのプレーの印象にメディアやファンの評価が左右されるNPBドラフトと一緒、そして甲子園に球団フロントが案外左右されないのも一緒(明らかに左右されてるな、という球団も有りますが)。それでメシを食ってるプロの評価というのは正確だし、そのプロが「NCAAトーナメントには評価を左右されない」といっているのであれば、それが正しいスカウティングのやり方でしょう。ドラフト外でオールスター選手になったのがベン・ウォーレス一人だけ、時代を代表する選手はほとんど最上位で指名されていることを見ても、NBAのスカウトは本当に優秀だなあと思います。

DraftExpressの動画色々

DraftExpressの最終版のスカウティングビデオが出始めているので、ああ、今年も春になったんだなあ、と思う次第。前にもちょっと書いたけど、DraftExpressの動画はStrength編だけじゃなくWeakness編も見ましょうね。

ヨーゴス・パパヤニスの成長とキングスの(多分)明るい未来

しばらく更新しないでいるうちにブックマークに入れたネタがカビそうになってきているので、そういうのを風通しの良い所に出していきたいと思います。話としては古いものも多いでしょうが、日本語で書かれているブログやらツイッターやらで同じものを拾っているところは多分ないと思うので、書き留めておく意味は多少はあるでしょう。

The Step BackのDリーグウォッチャー、クリス・ライカートによるヨーゴス・パパヤニスの分析記事が結構面白い。彼は2016年ドラフトの13位で指名されたわけですが、これは全くのサプライズピックで、同時に持っていた22位指名権でも十分だったでしょうよとほぼすべてのメディアで叩かれていましたし、Kも正直理解できない指名だったのですが、キングスのディバッツGMはパパヤニスに対してこの順位で指名するだけの価値を見出していたからこその指名だったのでしょう。じゃあその価値ってなんなの、というのが分からなかったのですが、この記事を読むとなんとなくわかってきます。

端的に言って「典型的なアメリカンCの真逆のプレーヤー」ということになるでしょうか。とにかくソフトでコンタクトプレーを避ける一方、シューティングタッチは非常に良く、オープンなら躊躇なく3Pをうてるレンジの広さがあります。リム付近だけを仕事場とする古典的ビッグマンが淘汰される一方、フロアをストレッチできるビッグマンの重要性が上がり続けている現在の時流に適合する選手と言えます。コンタクトプレーを避ける結果FTAが非常に少ないですが、成功率は高く、コンタクトプレーでFTを稼げるようになったらそれだけでも強力なオフェンスオプションになりそうです。また、この記事で特に多く取り上げられているのがフックショットの上手さで、ペイント内での得点が殆どを占める中で特にフックショットの質が抜群にいい。今日現在までで51本打って32本成功、成功率が62.7%とかなかなか凄まじい。十分な本数を打ってこれほどフックショットの成功率が高い選手はそうはいないです。レイアップは53本打って成功率が45.7%なのですが、これはまあかなりひどい水準で、フックショットの成功率と本数と比較すると、「シュートスキルは極めて優れているがコンタクトに弱すぎる」ということが如実に伝わってきます。レイアップとフックショットの本数がほぼ同じというのも普通は考えられない。しかし、普通のセンターならゴリゴリインサイドで押し込んでレイアップにいったりするようなプレーが出来ない一方、普通のセンターは出来無いような高度なフックショットをうてる、それも技術的に防ぎようがなく精度も高いのだからかなり大きな武器になると思います。ペイント外からターンアラウンドでの10ftぐらいの距離でのフックショットの動画があるのですが、テクニカルかつ謎すぎて笑ってしまいます。平面でのクイックネスは遅いですが(走力自体はこのサイズではかなり高い)、圧倒的なサイズがありBLKはかなり多く、パワーが付けば優れたリムプロテクターになれると思います。またASTは極めて少ないですが、ヨーロッパ時代のプレーを見るとなかなかいいパサーで、ポストで貰ったらとにかく自分でシュートさせる方針で指導しているためこれほど少ないのだと思われます。

結局のところ、筋力が上がってコンタクトに強くなることが攻守両面での向上に大きく繋がりそうです。パパヤニスにNBAで通用する筋力をつけさせるのと、古典的なアメリカンCにパパヤニス並みのシューティングスキルを身につけさせるのと、どちらが難しいかといえばそれは断然後者のほうが難しいわけです。しかも、パパヤニスはその技術を19歳で持っているというのがすごいところで、ポテンシャルの大きさは計り知れないものがあると思います。ディバッツGMは彼について「オールスタープレーヤーになりうる」とドラフト段階で評していたようですが、この素材を活かせるか否かはキングスの育成の問題なのでちゃんとやってほしいところです。

さて、キングスといえばこの前どデカいトレードを行いましたが、それに関してThe Sacramento Beeのマット・カワハラ記者によるバディ・ヒールドについての記事。ヒールドの練習熱心さと優れた人間性、そういったものを作り上げた人生経路についてコンパクトによく書けています。しかしながらこの記事で一番目を引くのは、どうもキングスは2016年ドラフトでヒールド狙いだったらしいこと。キングスのオーナーのヴィヴェック・ラナディブが、オールスターブレーク前にペリカンズが2度サクラメントに試合をしに来た時に、2度ともヒールドを探して「我々はまだ君を獲得するつもりだ」と言い続けていたらしい。ディバッツGMはトレードに関して「今年のドラフトはレベルが高いから」と語っている一方、単にそれだけでトレードしたわけではなくヒールドのことを相当高く買っているのが、トレードの相手がペリカンズだったことの大きな要因となったのでしょう。まあ、オーナーとGMの役割分担がちゃんと出来ているのかちょっと不安になるエピソードではありますが。オーナーが現場に積極的に関わっていくチームで強いところって過去も現在も殆ど無いですからね。

今回のトレードはほぼすべてのメディアが「ペリカンズにとっては大成功、キングスにとっては大失敗」という評価で一致していると思いますが、Kは全く逆で、キングスに分のあるトレードだったという認識です。まず、カズンズがいて今まで勝てましたか?その逆ではありませんか?ということを考える必要があります。ここ5年ほど、カズンズのUSG%は30%を大幅に超えていましたが、オフェンス面で特定の選手に過度に依存しているチームではやはりまともに勝つのは難しいでしょう。性格的な問題でチームを散々混乱させてネガティブな影響を与え続けてきたこともあります。いままでカズンズ中心のチーム作りでずっとダメだったのに、これからも同じことを続けていって良くなると考える理由がないと思います。「カズンズがいなくなった」ということが単純にマイナス要因だとは思いません。

また、今回のトレードで去年のドラフトの意味合いが俄然変わってきます。分厚いポジションに更にドラフトで増やしてどうする、というまるっきり訳のわからないいきあたりばったりのドラフトという印象でしたが(いきあたりばったりなのは間違いなくそうなんだけど)、カズンズがいなくなる事で、ここ2年のドラフト指名が宝の持ち腐れにならずに済みそうな感が出てきました。しかも、コーリー=スタインはともかく、ラビシエとパパヤニスはシュートレンジが広くて走れる現代的なビッグマンで、ここに更に優れたシューターのヒールド、3&Dとしてのポテンシャルが大きいリチャードソンがいます。大豊作と言われる今年のドラフトの上位指名権が2つあり、しかも上位候補はPGとSFに集中しており、ちょうどキングスに足りないところにはまります。今の順位で行くと6位(ペリカンズの分)と8位での指名になりそうで(キングスの指名権はブルズにトレードされており、10位以内でプロテクトなのであまり勝ってもうまくない)、6位でジョナサン・アイザックと8位で残ったPGから良い選手(デニス・スミス、ディアーロン・フォックス、フランク・ンティリキーナ)、というような選び方もできるでしょう。また2巡目の上位指名権もあり、今年の2巡目上位は例年であれば1巡目指名になるような選手が残っていると思われるので、これも価値のある指名ができると思われます。2015−2017の3年間の指名の中から、全ポジションにあまねくハイポテンシャルな選手が揃い、今後チームの中核となるようなトッププレーヤーが3人ぐらい残る可能性は一定以上あると思われます。更に言えば、3P中心の現代的なバスケットに対応できる選手が多く揃いそうですので、IT企業の創業者である現オーナーのデータボール志向なチーム作りの方向性も実現に向かっていると言えそうです。またディバッツGMの発言から、人間性に問題のある選手はチームから外していく意図が伺えますので、これまで踏んできた轍はあまり踏まなくなっていくのではないかと思います。

というわけで、Kは今回のトレードはキングスにとっていいトレードだし、将来の見通しはかなり良くなってきたのではないかと思います。将来が楽しみなチームは、という話題になると東はシクサーズで西はウルブズというのがだいたいお決まりですが、キングスも多分これから面白いですよ。今まで訳のわからんキングスの経営戦略を馬鹿にして遊んできたので、余分に応援しときます。2013年にオーナーになって以降ラナディブは落ち着きがないので、また彼がおかしなことにしてしまったりする可能性はあるけど、そのときはまた馬鹿にすることにしよう。

AMDのRyzen7シリーズが発売

ベンチマークひろしげ先生による今後の展望。コスパ良すぎて気が狂いそう。KはAPU待ちなのですが(Q4ぐらいかな?)、待ちきれなくなって買ってしまうかもわからん。後はクソIntelがPentium 4対Athlon 64でAMDに押されていた時にやったみたいなリベートによる市場独占行為をしなければ、AMDの復権も近いのではないでしょうか。それほど強力だと思います、このRyzenは。これで競争が起こってIntelの殿様商売も終わるだろうし、我々ジサカーにとってはまた良い時代が戻ってきますよ。ありがてえぜ。

数字で見るカーメロ・アンソニー

カーメロ・アンソニーの周囲が喧しい。フィル・ジャクソン社長とアンソニーの関係がかなりこじれてきているようで、ジャクソンはアンソニーを放出すべくキャブスやクリッパーズといったチームとのトレードを模索している一方、2年前の契約でトレード拒否条項を組み入れたためにそうも簡単にはトレードできないようです。今のところアンソニーがトレード拒否条項を破棄する可能性があるのはクリッパーズセルティックスのようで、クリッパーズとトレードする場合はオースティン・リバースあたり、セルティックスとトレードする場合も誰かしらのプレーヤーでネッツのドラフト1位指名権は出さないということで、戦力的にはニックスに不利なものになりそうです。逆に言うとそこまでしてもジャクソンはアンソニーを出したいということでしょう。その一方でアンソニー自身はトレードについてニックスとは何も話をしていない、また、自分よりも家族の意志を優先したい、奥さんがNYでセレブ商売していることや息子がNYにいることを好んでいることから、トレード拒否を貫く可能性もあります。極めて不透明な状況(しかも取り囲んでいるのは面倒なニューヨークのメディアとニックスファン)に置かれたなかで戦わなければいけないアンソニーに対しては気の毒という他ありません。

現実に成立していないトレードやFA移籍について議論することほど不毛なことはないので、これ以上は書きたくないのですが、こうした話題の中でアンソニーのプレーをあらためて評価してみようという試みがいくつか出てきて、その中で内容の良いスタッツ分析記事が2本あるのでそれらを紹介します。

スティーブン・シアーによる分析

まずはセントアンセルムカレッジの助教授で、Basketball Analytics: Objective and Efficient Strategies for Understanding How Teams WinBasketball Analytics: Spatial Trackingという、その筋で評価の高いスタッツ分析本を執筆している(Kも前々から読みたいと思っているんですが、なかなか都合が……)スティーブン・シアーによる分析。オフェンス面での非効率性、ボールを止めてしまうこと、ディフェンスがダメなことについて批判的に論じています。

オフェンスに関して、TS%が.545しかないこと、それなのにUSG%が29%もあること、フリースローはうまいのにリムに突っ込まないのでそもそも試投数が多くないこと、コーナー3もうまいのにほとんど打つ機会がないこと、アイソレーションからのミッドレンジショットという非効率的なプレーが多すぎることを指摘しています。非効率的なプレーヤーとは、単純にシュートが下手であるか、シュートはうまいのにセレクションが悪いかの2通りあって、キャッチアンドシュートの3Pは44%以上で決められるアンソニーは後者であるとも指摘しています。BBRをみると、TS%はそもそも低い、キャリア通算で.545です。前に「平均的なNBAプレーヤー」とはどういうプレーヤーかという記事で見たように、2015-2016シーズンの平均的なTS%は.541ですので、効率性という観点から見て、アンソニーはごく平凡な得点力しかないとも言えます。USG%は、ポルジンギスという強力なオフェンスオプションが登場した今シーズンと昨シーズンはぎりぎり20%台ですが、通算では30%を超えており、こうした平凡な得点力の選手がチーム全体のシュートの多くを占めるようではチーム全体の得点力も上がらないと言えます。

アンソニーはとにかくボールを離さないと見なされている一方、1タッチあたりのボール保持時間は2.87秒で、ジミー・バトラーの4.17秒、レブロン・ジェームズの4.21秒に比べたら特に大幅に長いということはありません。しかし、ポテンシャルアシストが5.6と平均的で、バトラーの10.9やレブロンの16.6と比べたら非常に少ない、つまり、アンソニーはボールを持って意味のあるプレーをする機会が平均よりもかなり多い(=USG%がかなり高い)のにそのうち有効なパスをする割合が少ない、ボールを貰ったら淡白に比較的すぐシュートに行くことが多い、ということになりそうです。アンソニーがボールストッパーであるというのはこういうことなのでしょう。

ディフェンス面に関して、アンソニーがコートにいた時のほうがディフェンスが良かった最後のシーズンが2013-2014シーズンで、その年のDRtgが108.3でリーグ22位だったこと、相手のパスを逸らした回数や相手のシュートをコンテステッドショットにした回数が非常に少ないことを示し、アンソニーはよいディフェンダーではないとしています。Box Plus/Minusも通算で-1.2と悪く、ディフェンス力は低いと評価せざるをえないと思います。

これらの理由から、ニックスにいる限りはアンソニーは非効率的なプレーヤーであるしかないとしています。その一方でセルティックスに移籍することになれば、他に良いディフェンダーがいるのでディフェンスの負担が減ること、アイザイア・トーマスがゲームを作ってくれるのでキャッチアンドシュートの3Pをうてる局面が増えること、セルティックスはトーマスへの依存が強く彼がコートにいる・いないでORtgが115.8/105.2と全く違い、トーマス以外にキャッチアンドシュート以外の方法で点が取れて、相手のディフェンスをひきつけてオープンなプレーヤーを作れる選手が必要なことから、セルティックスでなら弱点が隠れて良い面が生かされるだろうと結論づけています。個人的には、アンソニーが持ちたがり・うちたがりな性格とプレースタイルを改めて、自分でうてる場面で適切にパスできるようにならないとセルティックスにいったところで難しい、むしろボールを比較的上手くシェアできているセルティックスの今のチームケミストリーを破壊しかねないと思いますが。使いにくい選手だなあと改めて感じます。

FiveThirtyEightのニール・ペイン記者による分析

彼の分析の面白いところは、538謹製のCARMELO(名前はもちろんアンソニーから取られている)で今シーズンのアンソニーに似た選手を割り出した上で、そうした選手たちのいるチームで成功したチームと失敗したチームを探し、それらをベースにして「アンソニーのような選手のいるチームを成功させるにはどうしたらいいか」を分析しているところです。

アンソニーのような選手のいるチームで、良い成績を残したものとそうでないものを分けるのに最も影響があるのが周りの選手のTS%であることがまず示されています。アンソニーレブロンと違って周りのプレーヤーを活かすようなプレーがあまりできない選手なので、周りに効率の良いシューターを置くことでスペースを広げるのがアンソニーのオフェンス力を活かす唯一の方法であるとしています。32歳のアンソニーに周りにパスを出して活かすようなプレースタイルに変えろといっても今更無理だろうから、そのままのプレースタイルで効率を上げるにはどうすべきかを考えるという、ある意味大変ドライで現実的な見方と言えます。

次に、周りにディフェンダーとリバウンダーを揃える事が必要だとしています。例としてアレン・アイバーソンの周りを同様の選手で固めた2001年のシクサーズを挙げています。これによって優れたスコアラーはオフェンスを遂行できるのだと。

しかしこうした要素をすでに備えているチームはウォリアーズとスパーズで、そういったチームにアンソニーが加わる可能性は極めて低い、現実的に移籍の可能性があるチームの中では、セルティックスが最もこういう要素を備えたチームであろうとしています。個人的には、こうした要素を備えたチームはアンソニーがいなくても十分強いし、そもそもこうしたチームをつくり上げるのは単純に難しいだろうと思います。

また、それでも結局アンソニー自身も変わっていかなくてはいけないかもしれない、アンソニーに似た選手のチームが最もよくチームケミストリーを発揮できた時期には彼らのプレースタイルも変化していた、アンソニーはもっと効率的にシュートしてもっとディフェンスを頑張らなければいけないし、そのために無駄なシュートとドリブルを減らして、リムに飛び込むプレーをもっとし、ディフェンスではリムプロテクトをもっと頑張れ、としています。

最終的には、ニックスがアンソニーに合うチームを作ってくれるのをもっと待つか、自分のプレースタイルを変えて他のチームで勝てるケミストリーを作り上げていくか、今がそれを決める時だ、と結論づけています。ペイン記者の意図としては、後者こそがアンソニーの進むべき方向だということでしょう。記事を見ればわかりますが、今シーズンのアンソニーのような選手がいるチームで優勝したチームは一つもなく、カンファレンスファイナルまでがいいところです。それに対して、アンソニーに似た選手の一人であるマーク・アグワイアがピストンズに移籍して優勝を果たした1989年を例にして、アンソニーでもプレースタイルを変えて然るべきチームでプレーすれば優勝できるよ、と示唆しています。アグワイアはマブスではオフェンスの第1オプションとしてUSG%が30%を超えるような選手でしたが、代表的なチームバスケットのチームであるピストンズでは25%程度まで落ち着いています。アンソニーが本当に優勝したいのであれば、やはりアンソニー自身が変わっていく他ないんだろうなあと思います。