だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

カイル・アンダーソンの技術

こないだ書こうと思って忘れてたんだけども、BBALLBREAKDOWNのセラー・チレアの記事が非常に出来がいいので読みましょう。カイル・アンダーソンの攻守両面の多彩な技術、インテリジェンスの高さ、サイズの優位を活かすプレーについてこれほど良く書けてるものって他にないんじゃないかなあ。NBA有数のマニア受けする選手だと思いますが、ちゃんと注目してくれる人がいてこれだけ書いてもらえるなら幸せなことでしょう。

プレーオフ出れてよかったね、オースティン優勝してよかったね、今年のドラフト予想はやらないかも、ルカ・ドンチッチは"mystery"ではない、の話。

プレーオフ出れてよかったね

絶対プレーオフに出るスパーズの光の力と絶対プレーオフに出れないゲイの闇の力の戦いとか適当なこと書いたらここまでもつれてしまった。ゲイの闇の力やばすぎでしょ……。レナードなしでよくここまでやったなとも言えますが、見方を変えるとゲイの闇の力でレナードの怪我が長引いたと考えることもできますからね。くわばらくわばら。

怪我だらけで大変なシーズンでしたが、本来強みのはずのベンチが悪かったのが苦しんだ要因でしょうか。ベンチプレーヤーが出ているときのNETRTGがだいたいチーム平均以下。オルドリッジにおんぶに抱っこの戦い方で、実際そうするのが一番良かったんでしょうけど、これだとボールを動かしにくいので全体の効率が悪くなるのは必定で、来シーズン以降戦い方やロースターをそれなりに変えていかなければいけないのは確実でしょう。個人的にはオフェンスはどうしようもない部分も多かったのでしょうがないとして、ディフェンスがかなり悪かったという認識です。数字の上ではリーグ3位なのでかなり良いということになりますが、終盤もろくて勝てる試合をむざむざ落としたケースが多く、主観的な印象としてはスパーズらしくない、本来そういう場面できちっと凌げるようなチームでしょ、という感じ。特にパーカーはひどい。あと意外といえば意外だけど、グリーンも終盤でダメ。パーカーは攻守両面で全くダメで、はっきり言って2nd Unitとしても不合格のレベル。来期以降も契約すると思いますが、今シーズンより良くなる要素がないので、ホワイトを2番手PGにしてパーカーは3番手まで下げるべきでしょう。あまりこういうことは言いたくないけど、オフにパーカーと1000万ドルクラスの契約をしてアンダーソンあたりをみすみすリリースするようなことになるのが最悪の将来でしょう。アンダーソンがいくらになるかわかりませんが。パーカーFA、グリーンとゲイがオプトアウトで3400万ドルぐらいスペースができますが、さすがにアンダーソンに1500万ドルとかになると出せないのかな。今シーズンはオルドリッジの次に貢献度が高かったと個人的には思うので極力残すべきだと思います。

しかしまあ、47勝してやっとプレーオフ出れるウェストが地獄という他ない。近年の最地獄シーズンだった2014-2015が45勝でプレーオフ落ちで、今シーズンが46勝でプレーオフ落ち、10位のクリッパーズが勝ち越しで終盤までプレーオフ争いとかひどかった。東西格差で言うと今シーズンの勝率が東は49%西は51%で、2014-2015が東は47%で西は53%なので小さくはなっていますが(実際のところ、西の下の方のチームが平然とタンキングしていることで数字上差が縮まっているだけで、質的には大して縮まってないのではないか)、混戦具合で言うと史上最高レベルなのではないでしょうか。プレーオフ出れてよかったね、ホント。

オースティン優勝してよかったね

強っ。デリック・ホワイトがここ何試合か30点ゲームしまくっててすごかったですが、最後に大ゴケしてて笑う。ジャロン・ブロッサムゲームはGリーグでは全く問題なし、特にシーズン後半になるほど内容が良くなっていたので良いことです。多分来シーズンはNBAで契約するのでしょう。ハンランはどうかわからん。オースティン、チームのFT%が80%で1位とか普通にスパーズより良くて羨ましい。今年からHCになったブレイク・エイハーンが現役時代Dリーグ通算でFT%が.956(!)あったとかいう話なのでシューティング教えるのがうまいのかもね。高校コーチから転身して1年目からチームを優勝させるんだから偉いものです。オースティンにもSASにもいた選手なので、現役時代から資質があるとあのGMのギョロ目に見ぬかれていたのでしょう。優勝セレモニーが可愛いので見ましょうね。

今年はドラフト予想やらないかも

DraftExpress死亡でやる気が無いです。スパーズはしばらくぶりに10位台の指名権になりそうなんだけど。多分19位辺りで、今のところではトロイ・ブラウン、あるいはミルズと指名権でトレードに出してクリッパーズの13位かサンズの15位あたりと交換してケビン・ノックスやマイルス・ブリッジス、ロバート・ウィリアムズなどが落ちてくるのを狙うとか、やり方はいろいろあるでしょう。なんにせよ6月の話ですか。

あと、インターナショナルプレーヤーの指名はやりにくくなっているのではないか、という気もします。1巡目だと指名から3年経つとルーキースケールに縛られないのですが、近年はヨーロッパ強豪チームの年俸がかなり上がっているのか、スタッシュしても年俸数百万ドルレベルの契約になってしまうケースが最近では多く(ボグダン・ボグダノヴィッチが年俸900万ドルアレックス・アブリネスが年俸600万ドル、いずれも3年保証契約)、スタッシュして仕上がるのを待ったり有力選手をFAで獲得しようとすると下手なNBAのFA選手よりもリスキーな契約になる可能性があります。というか、昨オフにアダム・ハンガと契約につながらなかったのはおそらくそういう面もあったのではないでしょうか。一方で北米選手の場合はNBA志向が強く、ヨーロッパで100万ドル単位の契約が可能な場合でもルーキーミニマムで契約したいというブランドン・ポールのような選手もいる。バイアウトの費用も上がってきているだろうし、スタッシュして仕上がった選手と安く契約するというインターナショナルプレーヤーの旨味が得にくくなくなってきているので、スパーズに限らず経済的にキツめのチームはドラフト&スタッシュがやりづらくなってるのではないかと思います。今年のオフは多分ニコラ・ミルチノフと契約があると思いますが、これもルーキースケールよりは高くなるのではないか。あとネマニャ・ダングビッチは確か今年で契約切れだったような。二人共ユーロリーグでかなりよくやっているので契約するなら今オフでしょう。

DraftExpressの死後にできたThe Stepienというサイトが結構頑張っているので、あの手のスカウティングレポートが好きな人は見てみると良いのではないでしょうか。多分DraftExpressがなくなって、じゃあ俺達が代わりになるもの作るぜという感じでできたのではないかな。実際にプレーを生で見たりワークアウトのたぐいを直接取材しているわけではなく、マニアがビデオ分析をしているだけだと思いますが、複数人でやって負荷を分散しているためか、個別の書き手が時間をかけたと見える結構濃い分析もあってよくやるなあという。

ルカ・ドンチッチはmysteryではない

もう本当にいい加減にしてほしい。大量のハイライトと分析記事、インタビュー等があるのに未だにドンチッチを"mystery"などというアメリカ人はどういうつもりなのだろうか。youtubeで「luka doncic highlights」で検索すると引っかかるのは20100件、ジェイレン・ジャクソンJrとかモハメド・バンバよりも多い。この種の言論に関しては去年の8月の段階でCourtSide Diariesのニック・フリントが「ルカ・ドンチッチはミステリーではない」という記事を書いて厳しく批判している。これはYahoo Sportsのベン・ロウバック記者の記事に対するもので、曰く「全てのインターナショナルプレーヤーについてその能力がNBAでは通用しないのではないかという心配がある、とか書いてるけどそんなもんアメリカの大学生含めてあらゆるドラフト候補に言えることだろ。それで言ったら全員ミステリーだわ」「90年代と違って今はインターネット上に大量の情報があるのだから、北米の選手じゃない=ミステリアスとなる理由が大してない」という話。普通にバスケ関連のアメリカのメディアを眺めているだけでもドンチッチの情報は大半のNCAAプレーヤーよりも入ってくるはず。これだけ情報があってミステリーとか言うのは、単に情報収集の努力が足りないか思い込みに過ぎない。こういう馬鹿げたラベリングは、アメリカンスタンダードがワールドスタンダードだ、あるいはアメリカが世界そのものだと無自覚に前提にしているアメリカ的な思いあがりでしょう。大谷翔平についてもこの種の"mystery"論法が山ほどあったけど、お前らとこの全てのドラフト候補やAAA選手よりも遥かにたくさん材料があったろうて。ちなみに、ロウバック記者は「どこがミステリーだ」という批判に対して「ミステリーというのはドンチッチのオフコートのことについてよくわからないということだ」と弁明していたようだけど、そもそもあんたの書いた記事はそういう趣旨の記事ではないだろうに。

NBAに関してはそもそも米メディアのものを読まざるをえない場合が多く、いい記事もたくさんあるのでまるで米メディアが全て非常に優れているような錯覚を抱きがちだと思いますが、スポーツメディアは思い込みや調査不足のしょうもない記事のほうが多いと思います。ファンメディアというか、要は素人が書いているものも実際多く、読むだけ時間の無駄な記事が量産されています。このブログでは基本的にメディアと記者の名前を書くことにしていますが、それはその過程でメディアや記者の質というのがスクリーニングされていくと思うからです。信頼できるのは一部のメディアの一部の記者だけと言ってもいいと思います。スポーツ専門メディアはしょうもないものが多いです。各地方紙はきちんと取材した1次情報を提供するので、NBAチームに関してもドラフト候補などについても大変優れた情報源になります。

スパーズのスターターPGがトニー・パーカーからデジョンテ・マレーへ

ついに来るべき時が来た。スパーズは今日のペイサーズ戦でスターターのPGをパーカーからマレーへ変更、しかも怪我のリハビリのための負担軽減目的ではなく、恒常的な変更のようです。SAENのトム・オースボーン記者の記事あたりを読みましょう。

ポポヴィッチが試合前にパーカーに対して世代交代の時が来たと思うと告げ、パーカーはそれに対して問題ないよと快諾したようです。「ポポヴィッチがチームにとって良いことだと考えていることがあるなら、僕は自分のベストを尽くし、それをサポートする。僕はデジョンテを出来る限りささえてやり、マヌやパティとともにセカンドユニットで全力を尽くしたい。("If Pop sees something that is good for the team, I will try to do my best...I will support Pop's decision, and I will try to help DJ as best as I can and try to be the best I can in that second unit with Manu and Patty (Mills).")」

重要なのはミルズではなくマレーと入れ替わったことで、スパーズが目先の勝利よりも長期的な勝利を目指している点でブレがないこと、現時点で十分ではなくともスターターで使うに値する能力がマレーにあると認識していることでしょう。マレーをパーカーの後継者にするという覚悟がある程度定まったと言えそうです。ディフェンスに関しては昨シーズンとは別人と言っていいほど良くなっており(特に粘り強さが格段に上がった)、ガードではチームで最もディフェンスが良い選手に成長したと思います。リバウンドに関しては、ガードの選手としてはおそらくリーグナンバーワンと思われます。足りないのはゲームメイクとシューティングでしょう。AST/TOやTO%などを見る限りでは、ゲームメイク能力が昨シーズンから着実に成長してきているのは間違いないでしょうが、不用意なTOが多いのも確かで、まだ求められる水準にありません。シューティングに関しては全然ダメです。昨シーズンはほとんど相手のサードユニットとのマッチアップで、今シーズンはファーストユニット・セカンドユニットでのプレーのため難しくなっている部分はあるでしょうが、求められる水準にないことだけは確かです。オープンスリーをちゃんと決められないとペネトレイト等の他の手段の効果が弱くなるので、ジャンプシュートの質を高めることが最大の課題と言えます。しかし実際昨シーズンと比べて全く成長していないかというとそうではなくて、FT%は大学時代の66%から安定して向上させており、3P%こそ昨シーズンから落としているもののBBRのデータを見る限りではミッドレンジジャンパーの本数と率は良くなっており、シューティングレンジの拡大は進んできているという印象です。数字が悪くなっているから成長していないということではなく、一歩々々階段を上がっている姿が見えるスタッツではないかと思います。

前回ディフェンス面でのサイズの重要性について書きましたが、マレーはベン・シモンズを除けばおそらくリーグで最もサイズのあるスターターPGではないかと思います。インタビューやその他から今シーズンはマレーのウィングスパンについて「7フィートある」というような情報がよく聞かれるようになりましたが、ESPNの6' 11"という情報が多分正しかったのでしょう(代理人にでも教えてもらったのだろうか)。4番までとは言いませんが、3番までならサイズ面でミスマッチを作られることはほぼなく、マレーがPGを務めるのであればディフェンス面で他チームに対して大きく有利になることは間違いないと思います。

デジョンテ・マレーのドラフト指名とスパーズの育成・スカウティング思想の最後に「なるべく2年後までに結論出して」と書きましたが、これで出たと考えていいでしょう。マレー以外の選手がスパーズのスターターPGになるとしたら、それはミルズではなくデリック・ホワイトだと思います。昨年のドラフトで指名されたPGの中で、総合的に見てホワイトよりも実力が優れていると確実に言えるのはマーケル・フルツだけで、シューティングとクイックネスと経験以外でホワイトがミルズに劣る部分はおそらくないはずです。中長期的にマレーの競争相手になるのはホワイトでしょう。来シーズン何かの拍子にクリス・ポールあたりが転がり込んできたらどうなるかわかりませんが、キャップスペース的にまず考えにくい話です。なんにせよ、今シーズンは最後までマレーがスターターを勤め続けるということになりそうです。高いレベルでたくさんプレーすること以上にプレーヤーを成長させるものはありません。これから加速度的に成長していってくれれば嬉しいです。SAENのジャバリ・ヤング記者が最近書いた非常に良い記事を読んで、これなら大丈夫だろう、とKはある程度楽観的です。

NBAはsmallにはならない

small lineupないしsmall ballの拡大

以前「ウィングの質がチームの質を決める、3ウィングが今後主流になる」と書きましたが、今回はそれに関する話をします。

現在NBAにおいてsmall lineupないしsmall ballと呼ばれる戦術が主流になっている、少なくとも将来において主流になるという認識はNBAファンの間では常識的なものと言えるでしょう。なんと言っても2014-2015シーズンのファイナルにおけるウォリアーズのプレーが決定的に重要で、現在のsmall ballブームは多かれ少なかれ皆がそのコピーをし始めたということでしょう。そのインパクトや影響について書かれた記事は数多くありますが、ESPNのバクスター・ホルムズ記者の記事ESPNのケヴィン・アーノヴィッツ記者の記事ESPNのザック・ロウ記者の記事あたりが良いものだと思います。small ballはウォリアーズ、というかスティーブ・カーの革命的な発明品のように扱われていますが、「ポゼッションが変わってから7秒以内のシュートが最も効率がいいなら、それをし続ければ勝てるじゃないか」という発想に基づいたダントーニのラン&ガンオフェンスが引き起こした高速化と効率性重視の大きな流れ、2012-2013シーズンと2013-2014シーズンのスパーズのボールムーブメントによってスペースとオープンなプレーヤーを作りだすアンセルフィッシュなチームバスケットを受けてのものであって、けしてカーの完全なる独創というわけではなく、オフェンス戦術の歴史的な展開から必然的に行き着いた形と言えます(アーノヴィッツの記事で、2014-2015シーズンファイナルの途中からデビッド・リーを外してアンドレ・イグダーラをスターターにしたことについて、カーは「スペースを作るために、2013-2014シーズンプレーオフのスパーズとサンダーのシリーズでのスパーズのsmall lineupのようにプレーした」と語っています。カーはこのシリーズのTV解説者でした。また、2012-2013シーズンを筆頭としてBig 3期のヒートはCを重視しないラインナップで、ダントーニ・サンズを含めてsmallであること自体はけして革命的なことではありません)。だからこそ、ウォリアーズだけが可能な特殊な戦術とは見られないで、現在NBA全体で流行し、長期的な「正しい方向性」と捉えられていると言えます。

small lineupやsmall ballと呼ばれるものをどう定義したらいいでしょうか。この戦術の本質な目的は、一定以上の機動力のあるプレーヤーをフロアに多く置き、プレーヤーとボールを動かしてスペースを作り、オープンスリーやレイアップなどの得点期待値の高いシュートを打つ機会を増やすこと、特に相手のディフェンスの整わない早いタイミングでのトランジションオフェンスを重視することと言えます。バスケにおける古典的なポジション分類はPG / SG / SF / PF / Cの5分類法で、PFとCをひっくるめてビッグマンと呼ぶわけですが、古典的なラインナップとはつまりビッグマンを2人置くラインナップということになります。しかしビッグマンは一般的に機動力とパス能力、スペーシング能力が低く、上述の戦術を取る上では足かせになってしまうため、ビッグマンは1人ないし0にすることになります。ものすごく大雑把に言えば、「ビッグマンが1人以下のラインナップがsmall lineup」ということになるでしょう。もちろん、ビッグマンの数が少ないからと言って上述のような戦術をとっているとは限らないわけですが(Big 3期のヒートと現在のsmall ballとでは、ゲームの高速化や3PA比率、ボールムーブメントといった面で違います)、今現在の文脈でsmall lineupを取るということは往々にしてスペーシングが目的のウォリアーズ的戦術をとっていることとだいたい同義であると捉えても見当違いではないでしょう。

NBAにおいてビッグマンが1人以下のラインナップ=small lineupは実際にどれぐらい増えているのか、Nylon Calculusのマット・イグナル記者が調査しています。2013-2014シーズンと2014-2015シーズンではsmall lineupが取られる比率はほとんど変わりませんが、その後の2シーズンでは急激にsmall lineupが取られる比率が向上し、2016-2017シーズンのプレーオフではついに古典的ラインナップよりも長い時間small lineupで戦うようになっています。また、古典的ラインナップとsmall lineupのぶつかり合いになった場合、small lineupのほうが得失点差でプラスになることも発見しています(2017年のプレーオフでは古典的ラインナップのほうが有利になっていますが、サンプル数が少なく、全体としてはsmall lineupのほうが有利になっています。おそらく、東でキャブスがラブとトンプソンのラインナップで圧倒していたことがプレーオフの数字の逆転に大きく影響していると思われます)。small  lineupの拡大はやはり必然でしょう。

しかしながら、small lineupとかsmall ballという言葉は悩ましい表現と言えます。なぜなら、smallという言葉はプレーヤーのサイズを指しているわけですが、本来は戦術を指すべき言葉です。そしてその戦術とは上述のとおり「一定以上の機動力のあるプレーヤーをフロアに多く置き、プレーヤーとボールを動かしてスペースを作り、オープンスリーやレイアップなどの得点期待値の高いシュートを打つ機会を増やすこと、特に相手のディフェンスの整わない早いタイミングでのトランジションオフェンスを重視すること」で、これを実現できるのであればプレーヤーの身長が標準より低い必要はありません。条件を満たすのであれば7フッターのプレーヤーがいても構わないでしょう。我々がsmall ballと呼ぶものをするために、プレーヤーがsmallかどうかは本質的には関係ないことと言えます。ウォリアーズのsmall ballの唯一のビッグマンであるところのドレイモンド・グリーンの身長が6' 7"でPFとしてアンダーサイズであることから、背の低い選手を揃えることが重要であるかのような誤った認識を与えやすい、サイズの重要性を見誤らせやすい状況にあると言えます。

ディフェンス面におけるサイズの重要性

small ballと呼ばれる戦術と同じものを指す言葉としてpace and spaceやpositionless basketballというものもあり、一番新しいものではskill ballというのもあります。いずれにしろ、モーション・ボールムーブ・ボールシェアリングによってスペースを作り出し効率的な手段でシュートし続けるという戦術を指すものであるということは同じです。いずれもsmall ballよりは実態にあったマシな呼び方でしょう。

さて、こういった戦術が主流になるとして、それに対してどう守るべきか。もちろん方針は相手にスペースを作らせずオープンショットを打たせない、特に3Pとレイアップをオープンで打たせないということになります。問題はそれをどうやって実現するかです。マンツーマンで対応する選手を追いかけ回すだけでは、スクリーンを多用されるといずれペリメーターでオープンなプレーヤーを作られてしまいます。これに対応するためには、徹底的にスイッチしてすべての選手をオープンにしないようにするしかありません。例えばスパーズはステフィン・カリーをオープンにさせないためにオールスイッチでマークし続ける戦略をとっています。しかし、ピック&ロールなどでカリーのシューティングやペネトレイトに対応できない選手にスイッチさせてしまえば(例えばパウ・ガソル)容易にアイソレーションから得点できます。また、サイズのミスマッチを作らせてしまえばこれもアイソレーションから容易に得点できます(例えばケビン・デュラント対トニー・パーカー)。またこうしたミスマッチでペネトレイトされればディフェンスはダブルチームに行く必要がありますが、それは他のプレーヤーに大きなスペースが生まれることと同じことです。オールスイッチへの対処についてはGolden State Of Mindのこの記事がわかりやすいでしょう。しかし、このような戦術を無効化するにはスペースを与えないように徹底的にスイッチする以外にありません。つまり、現在興隆するこのオフェンス戦術に対抗できるディフェンダーとは、1番から4番(できれば5番)までディフェンスできる技術があり、フィジカル的に誰に対しても大きなミスマッチを作らないプレーヤーということになります。こういったプレーヤーをすべてのポジションで揃えることで完全に対応することが可能になります。現在、これを理解したうえで実際にそのようなチーム構成を行っていると考えられるチームが少なくとも2つあります。ウォリアーズとセルティックスです。

ウォリアーズは実際にはsmallではないし、そうならない最大の理由はディフェンスにある、ということを実証的に論じたThe Athleticのトッド・ホワイトヘッド記者の記事をぜひ読みましょう、非常に優れた内容です。ホワイトヘッドは昨シーズン100分以上プレーしたすべてのチームの5マンラインナップ(合計135)の中で、ウォリアーズのそのようなラインナップ(合計6)は相対的にどれだけsmallなのかを調べています。その中でいわゆるデスラインナップ(カリー、トンプソン、イグダーラ、デュラント、グリーン)の平均身長は16パーセンタイルで実際に小さいものの、スタンディングリーチの平均は49パーセンタイルで、機能的にはリーグ平均レベルのサイズであるということを発見しています。また、スタンディングリーチの平均で見るとむしろリーグ平均よりも全体的に高いことがわかります。しかし、それ以上に重要なのは身長のばらつきが極めて少なく、特にリビングストンがPGを務めるベンチユニットはリーグで最も身長のばらつきが小さい事を発見していることです。こうした構成では全員がすべてのポジションの選手に対してスイッチすることが可能です。また、135ユニットの平均身長とDRtgの間には特に相関はなかったものの、身長のバラつきとDRtgの間にはあまり強くはないものの相関があることも発見しています。ビッグマンの身長にはチームごとの違いはあまりないと思うので、おそらくこれは(ばらつきを主に発生させる)平均よりも小さいガードがいるチームはミスマッチをつかれてディフェンス力が下がるということを示しているのではないかと思います。ウォリアーズの昨シーズンのロースターとの違いは、6' 3"のイアン・クラークを6' 7"のニック・ヤングに、6' 7"のマット・バーンズを6' 9"のオムリ・カスピに変え、6' 9"のジョーダン・ベルを加えたことです。今季のロースターで最も身長が小さいのが6' 3"のカリーで、3人のCを除いた11人が6' 6"から6' 9"の範囲に収まることになります。6' 6"はイグダーラだけなので、15人中10人が6' 7"から6' 9"の範囲に収まることになります。明らかにこれぐらいのサイズのプレーヤーを意識して揃えていると考えられます。これぐらいのサイズのプレーヤーは少なくともsmallではありません。ディフェンスの観点から見て、smallなラインナップでは戦えないとウォリアーズは見ているものと思われます。

smallなラインナップのディフェンス力――2016-2017シーズンのセルティックスについて

smallなラインナップのディフェンス力について考えるとき、主力をガードの選手が占め、しかもサイズ的に極端に小さい選手が多かった昨シーズンのセルティックスは良い材料となります。

stats.nba.comで見ると、昨シーズンのセルティックスのDRtgは105.5でリーグ12位と、平均よりも少し良いチームでした。ところが、昨シーズン多く見られたと思われるトーマス、ブラッドリー、スマートの3ガードラインナップのDRtgは112.5と跳ね上がります。これにクロウダーを加えた4マンラインナップのDRtgは113.7で更に悪くなります(アミール・ジョンソンが加わると多少良くなりますが、それでも平均以上にディフェンスが悪い。ホーフォードが加わってもまだ111.3です)。リーグ最低のDRtgはレイカーズの110.6だったので、この3ガードラインナップはリーグ最低のディフェンス力のチームよりもディフェンスがひどかったということになります。サンプルが必ずしも多くないことを頭に入れておく必要はありますが、この4人のうちトーマス以外の3人は各ポジションでリーグ最高レベルのディフェンダーと認識されていること、ディフェンスで足を引っ張っていると思われるトーマスのDRtgが108.6でこれらよりは良いこと、トーマスとブラッドリーの2マンラインナップではDRtgが107.9スターターラインナップのDRtgが106.2ということを合わせて考えると、評価の高いディフェンダーが揃っても3ガードになると大幅に成績を落とすということになり、ここから「サイズはディフェンスにおいて決定的に重要である」と言ってもいいのではないかと思います。もっと具体的に言えば、「ウィングはガードをディフェンスできるが、ガードはウィング以上のプレーヤーをディフェンスするのが難しい、小さいということはディフェンスにおいて一方的に不利である」ということになるのではないかと思います。

もちろん、点を取られる以上に取れば勝てるわけですから、たとえsmallでも圧倒的に点を取れればそれでも勝てます。しかし、すでに論じたように流行のオフェンス戦術を実行するためにプレーヤーがsmallである必要はなく、その一方でこの戦術を止めるためにはプレーヤーがsmallではいけないわけです。ディフェンスはバスケの半分であり、これを切り捨てて勝利を得るのは容易ではありません。少なくとも、リーグ1のオフェンス力を持ちディフェンス面でもトップレベルのウォリアーズ相手には勝てないでしょうから、優勝はまず無理です。優勝を目指すならサイズを捨てることはできないでしょう。

今シーズンのセルティックスも全体的にサイズは小さく、ガードに偏った面があることは否めませんが、それでもガード陣のサイズを全体的に底上げし、更に昨シーズンかなり軽視していたウィングを厚くし、7フッタークラスのCを外してビッグマンのサイズを落とし、全体的に6' 6"から6' 10"の範囲でサイズを揃える狙いが見えるロースターになっています。プレシーズンと開幕戦ではブラウン、テイタム、ヘイワードのサイズのある3ウィングで戦っており、そこに機動力のあるホーフォードをCに置く。おそらくウォリアーズと同じ方向性を見据えてチーム構成をしているものと思われます。

ビッグマンの重要性

small ballとはビッグマンを減らすことを想定したネーミングで、名前だけでなく実態としてもビッグマンの役割は減少していると捉えられています。この戦術で求められるビッグマンとは、シュートレンジが広くフロアをストレッチでき、ディフェンスではペリメーターでちゃんと守れるプレーヤーというような認識をされていることが多いのではないでしょうか。ビッグマンのオフェンス面での役割といえば主にポストアップとスクリーンということになりますが、効率性が第一義の現代の戦術においてポストアップはアイソレーションとともに最も効率の悪い手段の一つとして軽視されており(例えば2016−2017シーズンのポストアップアイソレーションのPoint per Possessionはともに1を切っています)、「レイアップか3Pか」という極端なショットセレクションを実践するロケッツはポストアップを徹底的に切り捨てています。こうなってくると、そもそも現代においてビッグマンの必要性はあるのか、という話にもなってくるでしょう。これではサイズが大きいウィングというだけの存在でしかありません。3Pしか打たない、ポストアップもしないというのであればガードとウィングだけでいいのではないか。ところが、そう単純な話にはなりません。ビッグマンはスペーシングにおいて重要な働きをするからです。

効率的に得点するためにはスペースを作ってオープンなプレーヤーにシュートさせることが最も重要で、スパーズ的ウォリアーズ的な戦い方は全てそれを実現するためのものと言えます。そしてその上で最も効率の良い手段がリム付近のシュートと3P(特にコーナー3)ということになります。ではそれを実現するために必要なスペーシングとはどういうものかというと、相手のインサイドディフェンダーをペリメーターにおびき出すことと、相手のディフェンダーをインサイドに引きつけることです。前者においては高い位置でのピック&ロールや3Pを打てるビッグマンがペリメーターに引くなどして行うことができますが、3Pを打てないビッグマンはストレッチ能力がないなどとして現代では忌避されがちです。フロアをストレッチできないというだけでまるで役に立たないような扱いを受けてしまいがちな状況になっています。しかし、後者の相手ディフェンダーをインサイドに引きつけるという仕事をする上でビッグマンの働きは決定的に重要なものとなります。

インサイドに相手ディフェンダーを引きつけるにはインサイドにボールを運ばなければいけませんが、そのために有効なのがピック&ロールなどのスクリーンと無駄と考えられているポストアップです。BBALLBREAKDOWNのコーチ・ニックによる記事と動画がポストアップによるスペーシングについての良い解説になっています。動画が非常にわかりやすいので貼っておきます。

この記事と動画で示しているのは、同じ3Pでもどのような方法で導出されたかによって3P%がかなり違うということです。ペリメーターでパスを回して3Pを打つもの、ピック&ロールなどからドライブ&キックで3Pを打つもの、ポストアップからキックして3Pを打つものの3つをあげています。このうちペリメーターからのパスからキャッチアンドシュートで3Pを打つものの3P%はかなり悪い数字で、eFG%で換算しても到底効率的とは言えない30%代前半の数字がずらりと並んでおり、半数以上のチームでチーム平均より悪く、さらにリーグ平均の3P%(この記事が書かれた2015−2016シーズンであれば.354)よりも悪くなっています。また、3PA全体に対する比率が高いチームが多く、こうして導出される3Pはむしろオフェンスの効率を下げているものと考えられます。なぜこうなるかといえば、ペリメーターでボールを動かしてもペリメーターにスペースが作りにくく、高い確率でコンテステッドショットにされてしまうからだと考えられます。ドライブ&キックに関してはそれよりも少しマシになる傾向があるようです。しかし、ポストアップからのパスを受けての3Pは大半のチームで平均より大幅に効率が良くなっています。ポストアップは相手ディフェンダーの注意をインサイドに引き寄せやすいため外のスペーシングに極めて有用だということでしょう。またポストアップからの得点力のあるビッグマンはダブルチームを引きつけやすくより外のスペーシング能力が高くなります。ポストアップでの得点力とパス能力の高いビッグマンは3P中心の現代的な戦術においてむしろ重要と言えます。極端に3P偏重でポストアップを殆どしないロケッツの3P%が毎シーズンリーグ平均程度にとどまっているのは、外一辺倒であるが故にかえってアウトサイドのスペーシングが困難になっているからだと思われます(逆に外に徹底的にディフェンダーを引っ張りだす結果2P%が極めて良い)。

NBAで最も得点効率が高いプレーはFTですが、その次に効率がいいのは3Pではなくリム付近でのシュートです。例えば昨シーズンであれば0-3フィートの距離からのシュートのFG%は.631で3P%は.358(eFG%に換算すると.537)、コーナー3は.388(eFG%に換算すると.582)で、リム付近で得点することやリムプロテクトは非常に重要であると言えます。これらの点についてビッグマンが有効なことは言うまでもありません。また3PAの比率が増えるということはFG%が下がるということですので、OREBを取れるビッグマンの価値は相対的に上がります。NBAの主流からビッグマンが消え、インサイドのサイズとパワーがなくなってくれば上述のようなビッグマンの利点は相対的に大きくなります。

現代的な戦術における理想的なビッグマンとはどういうプレーヤーになるか、おそらくこんなところではないかと思います。

  • ディフェンスにおいてペリメーターからリムプロテクトまで対応する技術がある
  • オフェンスにおいてトランジションでしっかり走れる走力がある
  • ポストアップでダブルチームを引きつけられるだけのパワーと得点力がある
  • 3Pを打てて相手のビッグマンをペリメーターに引き出せる
  • アンセルフィッシュでパス能力が高い
  • オフェンスリバウンドを取る能力が高い

すべて揃えているプレーヤーはどれだけいるでしょう。最も完成に近いのはドレイモンド・グリーン、ポール・ミルサップ、アル・ホーフォードあたりでしょうか。スイッチディフェンスで全体をカバーできないビッグマンは高いレベルでは厳しい時代で、最低でもこれができることが求められると思います。

NBAはsmallにはならない

現代的な戦術は、まず古典的なCを駆逐します。FiveThirtyEightのクリス・ヘリング記者の記事では、数字の上では圧倒的に効率的なボバン・マリアノヴィッチがなぜ全く試合に出れないかを説明していますが、やはりディフェンスなのです。しかしその一方で、サイズのないプレーヤーがサイズのあるプレーヤーを守ることは難しいので、サイズがないプレーヤーもまた必要とされない時代になっていくと思います。古典的Cの次に駆逐されるのは、点を取るのだけはうまいがゲームメイク能力がPGの代替になれるほどではなく、ディフェンス力がないアンダーサイズなSGでしょう。こういう選手は活躍が目立ちますしオフェンス面だけで言えば現代的戦術でも必要とされますが、そのためにそれ以上点を取られるのであれば元も子もありません。いまNBAで行われているのはsmall ballというよりもskill ballなのです。skillがあればsmallである必要はなく、同じだけのskillがあるならsmallであることは不利です。結局のところ、ガードに求められるボールハンドリングやゲームメイク能力を持ったウィングがいるのであればガードは不要になるでしょう。

NBAはウィング中心になっていくはずです。ボールハンドリング、パス能力、3Pシューティング、リムに飛び込める能力、そしてオールラウンドなディフェンス力、これらを兼ね備えたアンセルフィッシュな万能型ウィングが最も理想のウィングであり、こうした理想に近いウィングをできるだけ多く揃えるのが現代バスケにおける理想のチーム作りになっていくのではないかと思います。一方で、現代的な戦術はモーションオフェンスが中心とはいえ、ピック&ロールの頻度は多くスクリーナーは必要であり、先述のスペーシングの観点からもビッグマンは必要でしょう。行き着くところは4ウィング1ビッグであり、究極的には4人のクワイ・レナードと1人のドレイモンド・グリーンのようなものが目指されるのではないかと思います。ビッグマンが少ないという点では古典的ラインナップに比べてsmallと言えますが、smallなプレーヤーがいないという意味では全くsmallではない、そういうラインナップへと向かうと思います。現在の戦術的な流れが続く以上は、古典的Cとガードの役割は減少し、ウィング偏重になることは避けがたいのではないでしょうか。

現在NBAの平均身長は6' 7"で、長期にわたってこれを維持しています。Nylon Calculusのクリシュナ・ナルス記者の記事によると、この20年ほどはじわじわとこれを切り上げているようです。傾向としては。PGとSFは近年はっきりとした上昇傾向、SGは横ばい、PFはやや上昇傾向、Cは下降傾向と言えるようです。サイズについては、ウィングスパンやスタンディングリーチも加味して考えたほうが良いのですが、ウィングは6' 7"程度、ビッグマンは6' 9"程度の身長に収斂していくと思います。

リハビリお写真帳 Vol.07

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季節感が無。