だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

スパーズのドラフト指名予想

スパーズ的にはシーズンが終わったのでドラフトの予想でもしよう。デジョンテ・マレーのドラフト指名とスパーズの育成・スカウティング思想で「スパーズがマレーを狙ってたのは予想してたんだよねー」などと書いたわけですが、予想などというものは事前にするから意味があるのであって後からそんなことを言っても全くフェアではない。なので大ハズレでもいいので事前に書いとくべきだと思うのです。

で、だ。2015年と2016年に関してはチーム状況から合理的に考えれば比較的予想しやすく、2013年と2014年についても指名傾向がわかっていればまあ候補には入ってるだろうなと言うところまでは分かる年でしたが、今年に関しては本当に難しい。どこのポジションが長期的に必要か、それほど明確ではありません。また、スパーズの指名予想の難しさは「人間性を最も重視する」というところにも由来していて、指名候補のプレーそのものの情報は多く手に入る一方で人格的な面に関する情報はかなり少ないため、第三者が「この選手は人格面で要求を満たしているのか」ということを判断するのはそもそも難しい。一方でそれがわかれば「この選手は100%候補に入ってるな」とか「この選手は100%ない」と言えるのもいたりするので、その意味では第三者にも予想をしぼりやすいとも言えます。今年であればロンゾ・ボールなどは100%ないと判断できると思いますが(本人以上にオヤジが……)、29位の指名権のチームには関係ない話なのでどうでもいいですね。来年であればグレイソン・アレンはまずありえないでしょう。

ポジションの分析

来年契約がある選手をポジション別で振り分けます。ガソルはプレーヤーズオプションの行使が確実視され、2011年のドラフト2巡目指名のアダム・ハンガも加入が確実視されているのでここに含めます。

  • PG:パーカー、マレー
  • SG:グリーン、フォーブス
  • SF:レナード、アンダーソン、ハンガ
  • PF:オルドリッジ、バルタンズ
  • C:ガソル

ガード・ウィング・ビッグマンの3分類で分けると

  • G:パーカー、マレー、フォーブス
  • W:レナード、グリーン、アンダーソン、ハンガ
  • B:オルドリッジ、ガソル、バルタンズ

ドラフト指名権を持っている中で加入の可能性がありそうなのは

  • G:ハンラン
  • W:ダングビッチ
  • B:ミルチノフ、ラレーン

ダングビッチとミルチノフは来年まで契約があるので加入は再来シーズン以降でしょうか。

基本的にウィングは何人いてもいいという感じだと思いますが、再来年まで視野を広げて考えると、ガードとビッグマンも足りない状況なので、どのポジションが特に足りないとも言えないように思います。去年はガード、一昨年はビッグマンを指名したことや、ウィングの重要性がどんどん上がってきていることから考えて、まあとりあえずはウィングかなあと思います。また、ミルチノフがCなので、サイズがあってオフェンスでフロアをストレッチできてディフェンスでペリメーターを守れるポテンシャルのあるPFも長期的には必要になるでしょう。ということで、手駒からみて長期的にはウィングかPFの1巡目ドラフティーがほしいところかなと思いますので、そのへんで考えます。指名可能性の有無は今日現在のDraftExpressのモックドラフトを基準にします。評価の基準は「デジョンテ・マレーの〜」で書いた通りです。

ウィング

ウィングの定義っていうのも明確なものはないんですが、強いて言えば「サイズが一定以上(6'6")あって、ペリメーターで点が取れてペリメーターで守れる、PGでもビッグマンでない選手」という具合でしょうか。こうなると、じゃあビッグマンの定義はなんだとか、そのサイズのPGもいるぞとか色々出てくるのであれですが、まあ結局プレースタイルとサイズの組み合わせでだいたいぼんやり分類されるので厳密な定義は難しいのです。SGとSFの実質的な区別がなくなってきたところに、SGとSFのあわいから生まれて両方を包摂する概念として確立されたのがウィングということでしょう。

このポジションで1巡目指名可能性があるのはテレンス・ファーガソンセミ・オジェレイロディオンス・クルックスの3人で、この中で確実にスパーズに合うと言えるのはクルックスでしょう。映像ソースが少なくはっきり言えない部分もありますが、ウィングとしてはかなりサイズがあり(DraftExpressでは身長6'8"となっていますが、多分これは靴無しで実際はもっとあると思われます。サバ読みがちなアメリカ人選手の6'8"よりは確実に一回り大きいと思います。アンダーソンぐらいはあるんじゃないかなあ。eurobasketでは6'9"となっています)、あらゆるオフェンススキルが一級品で、視野が広く安定したボールハンドリング技術と相まってゲームメイカーとしての資質もありそうです。技術的には今ドラフトにエントリーしている選手の中でも最上位レベルでしょう。身体能力もこのサイズのプレーヤーとしては高く、平面のスピードはなかなかのものです。ボールハンドリングについて基本的なことしかできないという評価がありますが、ハイライトで見る限りは単に派手なプレーをしないと言うだけで、むしろ基礎がしっかりしている印象です。スポットアップシューター的な見方をされている面が強いように思いますが、資質としてはポイントフォワード型のウィングで、ニコラス・バトゥームやゴードン・ヘイワードと同じ方向性の選手だと思います。その認識で正しいなら、スパーズには合うでしょう。ディフェンス力に関しては映像がほぼないので判断できません。線が細すぎるという以外に難点はないように思います。あと膝の怪我持ちらしいのでその点はやや指名が怖い面があります。クルックスについてはThe Step Backのトレバー・マグノッティ記者の記事が最も良いものでしょう。彼はツイッターをやっているようですが、ほとんど自らのツイートはしていないため人物像はなかなか読み取れませんが、NBA絡みでは比較的スパーズのものをリツイートすることが多いようです。同じラトビア出身の選手に関するものを多くリツイートしており、バルタンズと一緒に撮った写真などもあり、その関係でスパーズのものが多いのだと思いますが、こういうのリツイートしているので、こういうのが好きならスパーズに向いてる。2年前に「才能だけでは不十分。10%が才能で90%がハードワークだ」とツイートしており、良い心構えだと思います。あとAdidas Next Generation Tournarmentで優勝したときのインタビュー映像がありますが、受け答えも誠実でいいんじゃないでしょうか。てか手持ち無沙汰なのかずっとTシャツにぎにぎしていてかわいい。

オジェレイも指名できるなら文句なしではないでしょうか。ウィングとしては理想的なサイズで、高い身体能力、圧倒的なパワー、素晴らしいジャンプシュートのレンジと精度という、これらを揃えているプレーヤーはなかなかいないよな、という選手です(クロウダーが近いかな)。自分より小さい選手はポストアップで押し込めて、自分より大きい選手はペリメーターまで引っ張り出せる、とにかくどこからでも効率よく点が取れるのが素晴らしい。ペリメーターを守れるクイックネスもあり、PFと勝負できるパワーもあるのでディフェンダーとしてのポテンシャルも高い。ただしボールハンドリングは悪くペリメータープレーヤーとしての技術は不十分、球離れが悪く状況判断に難があるという評価もあるようです。基本的には克服可能な弱点だと思いますが。しかしながらこの選手について最も良い点は人間性に対する評価が極めて高いことです。NBA.comのクリス・ドーチ記者の記事が彼の人生経路やメンタリティについてよくかけていると思います。デューク大での2年間とSMUでの1年のレッドシャツでの計3年間殆ど試合に出れず、それらを耐え忍んでの今シーズンの大活躍ということなのですが、その3年間に対する認識の仕方が、まあこんなできた人間がいるのかという感じで。また医者の家庭に生まれたこともあってか、ものすごく勉強ができてアカデミックオールアメリカのセカンドチームに入っています。これが示すのは聡明さと真面目さと努力する能力の高さで、スパーズのプレーヤーとしては申し分なしの資質を持っていると言っていいと思います。SMUのコーチはかのラリー・ブラウンで、ポポヴィッチは彼の弟子筋にあたりますし、基本的にはブラウンがやっていたことを発展継承したのが現在のスパーズですので、ブラウンに叩き上げられた優れた人格を持ったプレーヤーというのはスパーズに合うと考えて間違いないと思います。

ファーガソンはこの中では最も身体能力が高い選手で、シュートフォームが非常に良くレンジも精度も高い(3P%はけして良くありませんが、オーストラリアリーグはFIBA準拠の3Pラインだと思うので、NCAAよりも遠くから放っているはずです。クルックスについても同様です)。ポテンシャルは素晴らしいですが、現時点では攻守両面で技術的に洗練されておらず、線も細く、視野はいまいちでパス能力が低い、バスケットボールIQも低めで状況判断が悪いとあって現時点では素材型の選手と言わざるを得ないです。ただ、プレーしているリーグのレベルが少なくともNCAAよりはだいぶ上でしょうし、NCAAでは通用する技術やフィジカルが通用しないために苦労した面が強いでしょう。ファーガソンについてもThe Step Backのトレバー・マグノッティ記者の記事が最も良い分析だろうと思います。NBAドラフトにおけるいわゆるOne-and-Doneルールの成立経緯と是非論の「未来のNBAプレーヤーにとっての1&Dルール」で彼について一部書きましたが、大学よりもバスケに集中できる海外プロリーグを選んだその向上心とメンタルの強さは評価されるべきでしょう。オーストラリアでもロールプレーヤーとしての役割をしっかり受け入れていたようで、「何でも自分が一番」というタイプの人間では無さそうです。

このポジションでの1巡目の指名候補としてはクルックスが本命だと思います。技術的にすでにかなり優れていて、サイズもあり身体能力もまずまず高くコートビジョンもバスケットボールIQも良く、FCバルセロナという非常に良い環境で鍛えられていることもスパーズ的には良いのではないでしょうか。DraftExpressでは現在29位指名の予想ですが、ビッグボードでは18位で、15位から20位ぐらいでずっと予想されてきた選手なので、本当にここまで落ちてきてくれるなら最高です。次点でオジェレイでしょう。人間性は満点で真面目で頭のいい選手なので、今年12月で23歳という年齢ですが、ジミー・バトラーみたいにこういう選手は年齢に関係なく成長し続けられると思います。怪我もなくやってきたみたいなので、その点はクルックスよりも安心できます。

PF

候補になるのはアイザイア・ハルテンシュタインアイヴァン・ラブタイラー・ライドンケイレブ・スワニガンアレック・ピーターズカイル・クズマあたりでしょうか。このポジションは近年非常に厚く、今年も30位前後に良い選手がたくさんいますが、その分きちんと条件を満たす選手を選ぶと思います。視野が狭くパス能力の低い選手やバスケットボールIQが低かったり注意が散漫な選手、アンダーサイズな選手にはいかないと思うので、D.J. ウィルソン、ジョーダン・ベル、マシアス・レッサート、ジョナサン・モトリーあたりの指名は可能性が低いのではないかと思います。

この中で最も資質が高いのはハルテンシュタインでしょうか。靴無しで7フッタ―というサイズは圧倒的ですし、それにも関わらず非常に走力が高く、ヨーロピアンプレーヤーの常として技術もかなりあってリバウンド力も高い。クイックネスがありサイズの有利もあるのでペリメーターディフェンダーとしてのポテンシャルもあります。現状足りないのはパワーぐらいのものでしょうか。ジャンプシュートの精度やターンオーバーの多さなど技術的に今一つな部分もあるようですが、いずれにしろ改善可能な部類のものでしょう。感情を表に出す面があるようですが、どちらかと言うと自分のミスに対する自己批判的な態度らしいので、相手に対して挑発的とか味方に対して非難するような種類のものではないのかなと思いますが、情報が少なくなんとも言えません。人間性に関しては情報が少なく判断できません。ま、この選手についてはそもそも29位まで落ちてこなさそうなところが最大の問題か。

このポジションでスパーズにとって本命と言えるのはアイヴァン・ラブでしょう。サイズはPFとしてケチのつけようがなく、走力があり攻守両面でアクティブ、リバウンド力は今年のドラフティーでNo.1を争うレベルでしょう。身体能力はまずまずで特別高いというわけではありませんが、フットワークは軽くポストプレーでのクイックネスと技術はかなりあり、またこのフットワークの軽さはペリメーターディフェンダーとしてのポテンシャルの高さを示すものでもあります。バスケットボールIQはかなり高く攻守両面でポジショニングが上手い、ASTはそれほど多くないもののダブルチームに対するパスのさばき方は上手く、スマートで視野が広くチームプレー志向が強いので明らかにスパーズ向きの選手だと思います。派手なダンクなんかしてもあまりアピールしないですぐ戻る一方で、アシストが決まるとはっきりガッツポーズをしたりするあたり、チームプレー志向のメンタリティなのは間違いないでしょう。2年になってからそれほど成績を上げていない事を問題視されますが、今シーズンのUCバークレーはジェイレン・ブラウンなどがいた昨年よりも大きくメンツが劣り、ラブの負担が大きくなると同時にダブルチームでかかられることが増えたことが要因で、能力的に衰えたわけではないでしょう。ラブに対する批判として最も大きなものは、Cでプレーするにはサイズとパワーが足りず現代的PFとしてはペリメーターでの攻守両面での技術と身体能力がないということです。レングスがあり言われるほどクイックネスも悪くないのでペリメーターディフェンスについてはトレーニングによって十分改善の余地がありますし、フィジカル的な強さも改善可能な種類のものです。問題はシューティングで、ミッドレンジジャンパーはなかなか良いものの、DraftExpressでは17フィートを超えると不安定と評価されています。素人目にみても、リリースポイントが高すぎる、肘が開いているという点は問題だと思います。前者の点については修正可能でしょうが、後者についてチップ・イングランドACがどう評価するかはわかりません。シューティングレンジの改善が実現すれば、どこからでも点を取る技術があり、どこでも守れ、強力なリバウンダーで、アンセルフィッシュでバスケットボールIQが高く攻守両面で正しいプレーを選択できる、現代的PFとしてはおよそ完璧なプレーヤーに化ける可能性のある選手と言えます。逆にこれが改善できなければPFとしてもCとしても中途半端な使いどころのない選手になってしまう可能性が高いと思います。イングランドがシューティングを改善させられなければ他のどこのチームでも難しいと思いますので、この意味で「スパーズにとっていい選手」と言うよりも「スパーズに指名されたほうがいい選手」と言えるかもしれません。人間性についても全く問題ないと思われます。彼の人生経路と人格形成についてはThe Undefeatedのマイク・スピアーズ記者の記事が非常に良く書けています。こういう過酷な環境で育ちながらも道を誤らなかった選手をスパーズは高く評価する傾向があります。真面目で学業成績も良く内面的に強く、人格面では間違いなく高く評価できると思います。実際、スパーズはラブをワークアウトに呼んでいるみたいなので指名を考慮していると思われます。

人間性で極めて評価が高いのはスワニガンとピーターズも同様です。特にスワニガンはラブよりも更に困難な環境で育ってきており、これに関しては様々なメディアで記事が出ています。ESPNのマイロン・メドキャフ記者の記事が素晴らしいので気になる人はそちらをどうぞ。二人に共通するのは高度なオフェンススキルとアンセルフィッシュなプレースタイル、フィジカルでリバウンド力があってバスケットボールIQが高く非常に効率的であること、ともにアカデミックオールアメリカに選ばれていること(スワニガンはセカンドチーム、ピーターズはファーストチーム)、そしてアンダーサイズで身体能力が低くディフェンス力がすっからかんなことでしょうか。スイッチディフェンスでペリメーターでスピードのある選手とマッチアップした場合抑えられる可能性がないと言うぐらいペリメーターディフェンスがだめですし、リムプロテクターとしても無力に近いので、彼らが一体どこで誰をディフェンスできるのかと言うのは大きな問題です。スワニガンはウィングスパンがかなりあってスタンディングリーチも過去のドラフティー平均を超えていますが、ジャンプ力が無に等しくリムより上はほぼ守れません。ピーターズはそもそもサイズが平均以下なので、近年サイズのある選手を重視しているスパーズの方針に外れます。彼らのディフェンス力の弱さは身体能力に由来するもので、トレーニングで改善できる部分が限られています。ディフェンス第一のスパーズでこれはやや厳しい感があります。

ライドンはサイズはごく平均的で、シュート力は素晴らしく身体能力もまずまず良いですがそれ以外の能力で特に優れたところはなく、やや半端な印象です。現時点でのシュート力をそれほど重視しないチームなので、それ以外の部分で特徴的な部分がない選手は伸びしろが小さくわざわざ指名しないのではないかという感じがします。人間性に関する情報は特に得られませんでした。

クズマはNBA Draft Combineで急激に評価を挙げた選手です。サイズ的にはごく平均的ですが、身体能力がまずまず高くシュートレンジが広い、パス能力もかなり高くオフェンス面での多様な技術がある選手ということです。線は細いもののフィジカルなプレーヤーでリバウンド力が高いところも良いところです。ディフェンス面での評価はやや低めのようです。筋力を強化しシュート力を磨くことで攻守両面で更に伸びしろがあると評価されているようです。人間性に関する情報は特に得られませんでしたが、スパーズはすでにクズマのワークアウトを行っており、少なくともワークアウトの前までは指名を考慮していたことは確実と言えますので、おそらく人間性の面でも合格は貰っているものと思います。

PFに関してはおそらくラブが本命でしょう。まさかがあればハルテンシュタイン、場合によってはクズマといったところではないでしょうか。

2巡目

2巡目に関してはインターナショナルプレーヤーを指名する場合が1巡目以上に多いので、基本的にはインターナショナルプレーヤーを指名してスタッシュというのが可能性として高いでしょう。ということでアルファ・カバアレクサンダー・ヴェゼンコフが指名されるのではないでしょうか。カバはとにかくウィングスパンが大きくサイズが素晴らしい、Cとしても十分ですがPFとしてはなおのこと優れており、更に走力があって身体能力も高く、フィジカルが強くリバウンド力が高い、更にシュートレンジも広くパスも結構うまい、とポテンシャルが素晴らしい。技術的には洗練されておらず特にシュート精度はまだまだのようですが、そこはこのチームでは長期的にはあまり問題にならないでしょう。ヴェゼンコフは逆に身体能力は低いが技術的には非常に洗練された選手で、TS%がほとんどのシーズンで60%を超えておりヨーロッパでもかなりシュート力の高い選手と言えます。伸びしろで言うとカバのほうが上でしょうか。更にヴェゼンコフはFCバルセロナの主力で下手にNBAに来るより年俸がいいと思うので、指名したとしてもNBAに来ないんじゃないかなあと思う部分もあり。ということでカバを本命にします。

アメリカの大学生で指名の可能性があるのはジャロン・ブロッサムゲームシンダリアス・ソーンウェルナイジェル・ウィリアムス=ゴスルーク・コーネットあたりでしょうか。これらの選手はDraftExpressのモックないしビッグボードで59位前後の選手たちで、なおかつスパーズのワークアウトを行ったかその予定の選手たちです。スパーズはオフィシャルで何も情報を流さないので、情報元はSpurs Nationの記事SAENのジャバリ・ヤング記者のツイッターです。ブロッサムゲームとソーンウェルは多分59位まで残ってないと思います。ブロッサムゲームはウィングとしては理想的なサイズと高い身体能力があってチームプレー志向で、致命的な欠点はジャンプシュートの精度という完全にスパーズ向きの選手ですが、DraftExpressの予想が他より低いだけで多分2巡目中位ぐらいで消えるのではないでしょうか。ソーンウェルも同様。ウィリアムス=ゴスは身体能力は低いですが、PGとしてはかなりサイズがあり、オフェンススキルもディフェンス能力も高く人間性も非常に評価が高い、アカデミックオールアメリカのファーストチームで、いてくれて何も損することがない選手なので指名できるなら大変良いことです。コーネットはレベルが高いSECのファーストチームとオールディフェンシブチームに選ばれている実力者で、Cとして平均以上のサイズがありシュートの約半分が3Pという珍しい能力の組み合わせの選手です。ディフェンス力に対する評価が高い一方でリバウンド数がそんなに多くないのは不思議。この選手もアカデミックオールアメリカセカンドチームで人間性に対する評価が非常に高い。

ということで2巡目はカバが本命。

結論

1巡目は本命がロディオンス・クルックス、対抗がセミ・オジェレイとアイヴァン・ラブ。

2巡目は本命がアルファ・カバ、対抗がアレクサンダー・ヴェゼンコフとナイジェル・ウィリアムス=ゴスとルーク・コーネット。

他のチームの指名との兼ね合いなので、この辺が当たったら正解ということにしておくんなまし。ワークアウトの状況などで後で変えるかも。

6/13 20:45 追記

ロディオンス・クルックスがアーリーエントリーを取り下げました。したがって1巡目の予想を変えます。

本命がアイヴァン・ラブ、対抗がセミ・オジェレイとカイル・クズマ。

アダム・シルバーがOne-and-Doneルールについて考え直す必要があると言明

さて、これをどう捉えるべきか。これに関する記事は色々ありますが、NBA.co.jpSBNationのクリスチャン・ウィンフィールド記者の記事Yahoo Sportsのベン・ロウバック記者の記事あたりを抑えておけば一応足りそうです。

ウィンフィールドの記事は現地5月31日のFox Sportsの番組で受けたインタビューを元にしており、NBA.co.jpの記事は現地6月1日のNBAファイナル第1線前の記者会見での発言を元にしている点で異なりますが、話している内容はだいたい同じでしょう。1&Dルールは大学への腰掛けが前提になるため、学業面での悪影響やドラフトに向けて自分のプレーを見せることが目的化しチームを勝たせるような意識がプレーヤーに培われず大学チームにとって悪影響なこと、プレーヤーにとっては実質半年そこらでは大して成長できないこと、NBAチームにとってはプレーヤーの成熟に役立ってないと認識していることなどを理由に「1&Dルールは機能していない」との認識に至ったようです。シルバーは「我々の立場を考え直している(I'm rethinking our position.)」と発言しましたが、ウィンフィールドは、シルバーが従前から20歳に最低年齢を引き上げることを主張していた事を踏まえ、「2&Dの推進をやめるのでは」と認識していますが、これは必ずしもそうではないでしょう。our positionとは1&Dルールを採用している現在のNBAドラフト制度ないしそれが成功しているという今までの認識ではないかと思います。ロウバックの記事に適切に引用されているように、今回の新CBAの交渉は経済的な問題を解決することが第一で、それが終わったら年齢制限の問題に議論を移そうということだったようです。1&Dルールは上手くいっていないとういうことを共通の認識として、もっとより良いものに変えるためにNBAとNBPAでお互い知恵を絞っていきましょう、そのためには大学関係者も議論に参加してもらって議論を深めましょう、というのがシルバーの目指していることでしょう。そしてNBA.co.jpの記事にあるように、NBA側として20歳への引き上げの立場は崩していないものと思われます。

シルバーは「私は大学バスケの大ファンだが、プレーヤーの一番大事な時期にその成長を阻害させていないか心配("Selfishly while I love college basketball and I’m a huge fan of college basketball, I worry about potential stunted development in the most important years of these players’ career,”)」「不幸にも彼ら(注:1&Dプレーヤーのこと)の最大の関心事はNCAAトーナメントで勝てるかどうかではなく、NBAドラフトのすすめるかどうかだ。だから、自分のスキルをどれだけ見せられるか、どれだけプレータイムを得られるか、そしてもちろん怪我しないかどうか、そんなことを心配しなくてはならない。あまりよろしくはないね。("their biggest concern unfortunately becomes not whether they win the NCAA tournament, but whether they drop in the NBA draft. So then they have to be worried about how their skills are showcased, how many minutes they get, of course whether they get injured. So, it’s not a great dynamic.”)」などと発言していますが、1&DルールはNBAとNBPAの合意で作ったのであって、本来NCAAは1&Dルールの当事者ではありません。NBAに巻き込まれる形で混乱している大学バスケの状況を根拠に1&Dルールは上手くいっていないというのは卑怯な物言いで、シルバーは「NBAが望んで作った1&Dルールが、NBAにとって上手くいっていない」ということを正しく認識すべきではないかと思います。これは紛れもなくNBA自身に全ての責任があるNBA自身の失政なのだ、ということを。NCAA会長のマーク・エマートが1&Dルール廃止論者であることは心強いですが、高卒ドラフトが復活すると大学に有力選手が来なくなり大学バスケの弱体化が進むため、有力選手の大学在籍期間を伸ばすために、基本的に他のNCAA関係者は最低年齢引き上げ論者のほうが多いと思われますので、「話し合いのテーブルには有力大学コーチとアスレチックディレクターたちも参加すべきだと思う( “I think the top college coaches and (athletic directors) should be at the table.")」というシルバーの考えは、最低年齢を引き上げるための援護を増やす思惑があるのではないかと邪推してしまいます。

シルバーは対立する年齢制限問題について「我々は原点に立ち戻って「バスケットボールにとって何が最も利益になるのかを問わねばならない(I think it’s something that we’ve gotta step back [and ask] ‘What’s in the best interest of basketball?’)」と語っていますが、少なくとも2&Dルールは大学バスケもNBAのレベルも落としてしまう可能性が十分あるとKは認識しています。詳しくはNBAドラフトにおけるいわゆるOne-and-Doneルールの成立経緯と是非論で書いたので暇な人はそちらをどうぞ。英語圏も含めて、多分WEB上で読めるものとしては1&Dルールについての最も包括的な論考だと思います。代表的な代替的ドラフト制度の合理性をここまで詰めて検討し、2005年CBA以前のドラフト制度だけが合理的なドラフト制度であるということを論じたものは、Kの知る範囲では読んだことがありません。特に、シャシェフスキー案(高卒でドラフトエントリーを認めるが、ここでエントリーしないときは少なくとも2年後のドラフトまではドラフトエントリーできない)やMLB方式が、インターナショナルプレーヤーの立場から見ると全く合理性がないということを指摘している記事は読んだことがありません。先のロウバックの記事も、最後に「MLBと似た方式のドラフト制度もアリなんじゃないか」みたいなことを書いてますが、いかにもアメリカ的というか、自国中心主義的で視野が狭いなあと思います(結構いますこういう記者)。「プロとそのステップとしての大学」というアメリカンスポーツの構造を共有していない地域には合理性がないんですけどね。手前味噌ですが、Kが書いたものはNBAドラフト制度論としてはおそらく最先端のものの一つだと思います。読んで損するものではないと思います。とか言って他に同じようなことを書いている人間がいたら恥ずかしいですが……知らぬが仏、たまには調子に乗っとこう。

レブロン・ジェームズのフリースロールーティンの変遷と苦闘

ESPNのトム・ハーバーストロウ記者による記事。前に取り上げた同記者の記事の続編というべきか。

今期のレブロンのFT%は.674で通算の.740に比べて明らかに低い数字で、18種類もの異なるルーティンをシーズン中に試すなど、シーズン通してリズムをつかめなかったようです。レブロンはそもそもキャリアを通じて頻繁にフォームやルーティンを変える方で、これはNBA選手としてはかなり珍しく、FTがすごく上手い選手もすごくだめな選手も両方指導してきたスタン・ヴァン・ガンディは「普通の選手はキャリアを通じて1回か2回しか変えない。下手な選手はもっと変えるけど」と発言しています。レブロンはFTシューターとしてはごく平均的な選手ですが、なかなかFT%が向上しないことやリズムが掴めないことへの焦りからか非常に頻繁に変えている。

ある元チームメイトはこれをイップスと認識していますが、ハーバーストロウもこれに同意しています。FTとイップスについては前に取り上げた記事を読むのがいいでしょう。FTが極端に不得意な選手は、手がでかいとか背が高いとかの物理的要因や練習量が少ないからそうなっているわけではなく、心理的な要因によって入らなくなるのだということをハーバーストロウは主張していますが、それが正しいなら、ビッグマンでもなければまずまずの3P%を残しているシューターであるレブロンがFT%を異様に落としていることの説明にもなります。それと同時に、心理的な要因で成功率を落としているのであれば、様々なフォームやルーティンを試みても解決しないということになります。タイロン・ルーHCはレブロンに対して何も変えるべきではないと言っているようです。

FTに対する自信の欠如は実際のプレースタイルにも影響を及ぼしているという分析も行っています。まずテクニカルスローを他の選手に任せるようになりました。さらに、試合終盤の点差が詰まっている状況で大幅にコンタクトプレーを避けるようになってしまっていることを明らかにしています。レブロンはデビュー以来、残り試合時間1分以内でワンポゼッションゲームの状況おいて1シーズン平均18本のFTAを獲得しており(最小でも11本)、昨シーズンも15本獲得していましたが、今期はそれが僅かに2本と激減しています。今期は上記の状況において13本のシュートを打ちそのうち8本が3P、13本のシュートのリングに対する平均距離は19.4フィートで、昨シーズンは平均10.8フィートと倍近く違います。これはつまりこのような緊迫した状況において、プレッシャーに耐えてFTを2本沈められるだけの自信がなくなってしまったために、果敢にリムを攻められなくなっている事を示します。レブロンはリム付近での得点力が抜群に高い選手なので、ファールを恐れてインサイドに飛び込めなくなることは、キャブスにとっては大事な場面で大きく得点効率を下げる要因になります(今期の3PのみのeFG%は.545なので、確率通りに決められるならFTを貰ったほうがまだ得点期待値が高いということになります)。

ハーバーストロウが書くように、ルーティンをあれこれ試すことがFT%の改善につながるとは思えません。良いシューターは常に一定のリズムで打っており、例外を知りません。レブロンに限ってその例外ということはない、というのは数字が示すところです。レブロンは基本的にジャンプシュートが下手な選手ですが、3Pはキャリアを通じて数も率も長期的には改善しており、FTが上手くいかないのは技術的な問題ということではないでしょう。また、レブロンはビッグマンというほどのサイズはありませんし、昨期と今期でいきなり身長が伸びたり手が大きくなったりしたわけでもありませんので、FTの巧拙が打点の高さや手の大きさといった物理的な要因に由来するという考え方も間違いでしょう。FT%が極端に悪い選手はイップスであり、これは心理的な問題だから練習でも解決できない、というハーバーストロウの主張はレブロンという材料を得たことで説得力が更に増したと思います。

FTについてはもう何十年とあれこれ議論がされ続けている話題だと思いますが、ハーバーストロウの一連の記事は大変優れたものでその決定版というべきものではないかと思います。FTに関する手がでかいから論や練習不足論は事実からみても根拠が薄く、心理的な要因に根拠を求める考え方の方がより説得力があります。「お前は生まれつきFTが下手なんだ、もっともっと練習しろ」という主張が下手なシューターを更に心理的に追い詰めている面すらあるので、手がでかいから論や練習不足論のような古典的な考え方は積極的に放棄すべきではないかと思います。

リハビリお写真帳 Vol.02

(クリックで拡大。1500x1003px。はてなfotolifeにオリジナル

darktableのほうがRawTherapeeよりも何も手を付けていない状態で暗部の描画がうまいように見えること、慣れりゃ似たようなもんということでdarktableをRaw現像ソフトとして活用することにする。