だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

パーカーが去る日

人は肉体の盛衰を避けることはできない、プロスポーツ選手にとって肉体の衰えはプレーの衰えに直結し、プレーの質がチームの要求にかなわなくなれば優先順位を下げられ、最終的には契約を続けることができなくなるわけです。パーカーの体はもうボロボロでしょう。マレー、ホワイト、ミルズと一般的なチームの2番手以上の質を持つPGが3人いるスパーズの今のロースターの状況から考えれば、昨シーズンのパーカーのプレーの質では、PGの3番手まで下げざるをえません。ESPNの記事によれば、スパーズはパーカーに対してmentorship role、上述のロースター状況も合わせて考えると、つまり事実上よりコーチに近い立場でチームにいることを求めていたということでしょう。プレーヤーとしてプレーでチームに重要な貢献をすることをあまり期待していないと言えます。プレーヤーとしては第一線から退いたとも言えます。それでもまだパーカーはプレーヤーとして死にたくなかったから、2番手PGとしてプレーできるチームの中からホーネッツを選んだ、ということでしょう。2年契約の計1000万ドルならスパーズも払えない額ではないので、給料の多寡という次元での決断ではないはずです。

昨シーズンのパーカーのプレーを見てはっきり言えますが、スパーズのPGとしては2番手としても求められる水準に達しておらず、なおかつ年々プレーの質が落ち続けており、来期以降パーカーがプレーし続けてプレータイムを求めるならば、チームの足を引っ張ることになるのがほぼ確実です。また、パーカーがいるとポポヴィッチはパーカーを使ってしまうだろうから、それはホワイトのプレータイムを減らし成長を鈍化させることにもなるため、中長期的にも無益と言わざるをえません。プレーヤーとして重要な仕事をしたいというパーカーの願いとスパーズの(短期から長期に渡る)勝利は両立しない状況です。両者が道を分かつのは必然と考えます。

移籍に関するポポヴィッチのステイトメントは読むべきです。また、この件に関する記事としてはSAENのマイク・フィンガー記者の記事が最も良いと思います。「誇り高くもエゴのない」パーカーのプレーヤー人生を振り返りつつ、ホーネッツで納得の行くプレーができることを願うのみです。

2018年ドラフトーク

スパーズの話

いいんでしょうか、ロニー・ウォーカーって今年の指名候補でもポテンシャルは上から数えて何番目とかのレベルだと思うんですが。なんでここまで落ちてきたのか全くわからん。去年膝の手術をしていて怪我のリスクがどうとか言う話はありますが、それも大げさという声もある。またガードか、というところはあるものの、流石にこのレベルの選手が落ちてきて文句言うことはなし。

数字を見る限りでは全然大したことがないものの、実際のプレーを見ると全く印象が違ってくる。やはり身体能力の高さが桁違いで、プレーのスケールがでかい、プレーの質が高い。ハイライト動画の7:28のポスターは特にすごい。今年のNBA Draft Combineの身体能力番長はジョシュ・オコーギーでしたが、実際オコーギーのハイライトと見比べてみてウォーカーのほうが身体能力が低いと思う人はあまりいないのではないか。ファーストステップのスピードやボールハンドリングの技術がもたらすクイックネスはウォーカーのほうがかなり優れている印象です。まあ、身体能力が高い印象が全く無いゲイリー・トレントもコンバインの数字はかなり良かったりするので、あれでコート上での動きの質がわかるわけでもないですが。

個人的には身体能力と同じぐらい技術が素晴らしいと思っています。ドラフト前のワークアウトの映像があって、ランドリー・シャメットアリーゼ・ジョンソンと一緒に行ったもので比較しやすいのですが、ボールハンドリングの評価が高いこの二人と比べてもなおウォーカーのほうが上手いと思います。シュートフォームも本当に綺麗で、直すところがないんじゃなかろうか。ドラフト前に大方のドラフト候補のハイライトやワークアウトの映像を見ていましたが、個人的にはシャメットとケビン・ハーターの次ぐらいに良いフォームだと思っていました。スラッシャーかと思いきやシュートの半分以上は3P、プルアップなどタフショットが多めで3P%が.346というのはかなりいい方ではないか。しかも、レベルの高いカンファレンスゲームでは、ブルース・ブラウンが怪我で離脱してオフェンスの第1オプションでマークが厳しいにもかかわらず、.361に伸ばしている。FT%もカンファレンスゲームでは.810と素晴らしい数字で、要はシーズン序盤から後半に向けて怪我の手術の影響がなくなるとともに成長していき、プレーの質を向上させていったのであって、シーズン全体のスタッツから受ける印象以上にシュート力は高いと考えるべきでしょう。どこからでも一人でスペースを作ってシュートに行ける技術と、このサイズ・身体能力を兼ね備えているのは素晴らしい。素材型の選手に見えて素材だけの選手ではない、比較的早く戦力になるのではないかと思います。レナードみたいに1年目からスターターということはないだろうけど。状況判断の改善、ディフェンス技術の向上、ミッドレンジからリングに近い位置での得点力の向上、ファールを稼げるようになること、鍛えるのはこういったところでしょうか。変に縮こまらないで、厳しい局面でビッグショットをどんどん決めに行く今のクソ度胸は変わらないでほしい。

ウォーカーの人となりについて、The Ringerのパオロ・ウゲッティ記者の記事が最高の出来なのでぜひ読みましょう。プレースタイルから脳筋系の子かと思いきや、かなりの文化系で、NBA選手としては珍しいタイプです。スパーズは「バスケットボールが人生で一番重要なわけではない」という考え方なので、記事が出た時に読んで、完全にスパーズが好きなタイプの選手だなあ、と思ってたら来てしまった。ウォーカーのためにトレードで順位を上げようとしていたという情報もあった。ビュフォードGMドラフト後のインタビューで「ウォーカーを指名順位よりも遥かに高くランク付けしていた。落ちてくると思わなかった」と答えている。他にもいろいろ読んでますが、スパーズ向きの人間性なのは間違いないです。ある程度まとまったら去年に引き続き記事を一本書こうかと思います。とりあえずThe Ringerの記事だけ読んでおけば十分でしょう。

しかし、何回見てもこの写真は笑える。ペイトンですら詰め込んだのに……。

チメジー・メトゥ。メトゥ?メツとメトゥとメチュを足して割ったような発音なのでなんと書いたものやら。NBA.comも逃げる始末。暫定的にメトゥで行きます。

馬力に物を言わせるタイプでクイックネスとジャンプ力がすごい。やや細身で背筋が伸びていて身体能力馬鹿系ということでジョーダン・ベルとかマーキス・クリスを思い出します。スパーズには全然いないタイプで一抹の不安を覚える。FT%が50%台から70%台に向上していて頼もしいが、3Pがあまり良くなっていないことで評価が上がらなかったのだろうか。今シーズンはしばらく10位台の指名予想だったんですけどね。ワークアウトの映像をみても、なんとも言えず変なフォーム。手のひらが内側を向いているからだろうか、なんか体の軸の左側からボールが出てるような。あと膝曲げた時にカクンと上体が起こるのが不自然な印象を与えるのかも。入ればそれでいいんだけども、イングランドACはどう改善していくのだろうか。ディフェンスに関しては、フットワークが素晴らしくどこでも守れるタイプでしょう。今のNBAに必要なタイプのビッグマンで、いいピックだと思います。素材としては1巡目指名のレベルの選手でしょうから、育成が上手くいって欲しいところ。

しかしながら、らしくないなあ、というピックでもある。身体能力馬鹿系の指名自体あまりらしくないというのもあるけれど、この選手、前に相手選手に金的かましてキャプテン剥奪に試合出場停止(半試合分)とかやらかしてる。モックの順位もその後にぐっと落ちている。各種のスカウティングレポートでもムラっ気があるとかmaturityが足らんとか、大丈夫かなあと思ってしまいます。まあ、信頼できない人間ならそもそもキャプテンを任されたりしないだろうし、パーソナルな部分もあらかた調べ尽くしたうえで指名しているだろうから、とやかく言うことでもないですが。コンバインの時にミーティングしてその内容が非常に良かったようで、その後のワークアウトも多分良かったのでしょう。

しかし二人共背番号4かい。グリーンが4から大学時代の14に戻して、ホワイトが大学時代の21と14が使えないから4にして、こう来ると。ウォーカーは多分名前から4にしているんだろうけど、結構この数字を押していて地元で定着しているようなので難しいところだ。44はアイスマンの欠番だから使えないしね。5番といいこの4番といい、最近はドラフト指名選手の番号がかぶりまくっている。

全体の感想

今年は15位まではメンツが決定していて、順番の先後もそれほど変わらないだろうみたいな感じだったと思いますが、かなり動きました。1巡目指名がコンセンサスの選手も結構2巡目に転がった。今年は荒れたドラフトだったのでは?面白かったです。例年は各チームのロースターの状況などを見て、中長期的に欲しいポジションの人材を埋められているか、みたいな観点で良し悪しを見ていますが、今年はロースターの契約状況等ろくに調べてないので輪をかけて適当な感想です。指名が早い順から。

サンズは西のシクサーズか。4年ぐらいで一気に有力選手を詰め込んできた感じ。1位のエイトンはまあ妥当と言ったところで、ミケル・ブリッジスとザイアー・スミス+2021年のヒート1巡目指名権はかなり上手かったのでは?スミスではブッカーとポジションがかぶるし、ゲームメイクもできないし、いくらディフェンスが上手くてもサイズのあるウィングと正面からマッチアップはできないだろうからブッカーと同時に3ガードで使うのも危険だし。3年後なのでどうかわかりませんが、ヒートがそんな順位落とすようなこともなさそうなので指名権もそれほど価値が上がらなさそう。結構なトレードだったと思います。ブッカー、ブリッジス、ジャクソン、エイトン、ディフェンスはどうか知らんがオフェンスは怖い。PGはどうするんだろう?ペイトン?うーん……ユーリス?うーーん……ナイト?うーーーーーーん……もういっそ、3Pが打てて得点力があってゲームメイクがちゃんとできるオコボが一番マシなのでは。他の選手はどっちかが欠けてるからなあ。31位で指名できるPGとしてはベストの選択ができてよかったのではないか。サンズは全体として大変良いドラフトをしたと思います。なんにせよ、来シーズンもスカスカのディフェンスと当たると当たるオフェンスで大味な試合をたくさん見せてくれそうです。

キングスは知らんうちにパパヤニスウェイブにリチャードソンウェイブ、ラビシエイマイチ、2016年組がボロボロに。交換したクリスがサンズでさっぱりなのを見るに、関わった全員が失敗という悲しいドラフトであった。あ、いや、ついでにもらったボグダノヴィッチがからりよくやったので一応キングスが得した形か。ついでにもらったボグダノヴィッチが活躍、残っちゃったから拾ったラビシエが比較的マシ、期待されたのが全然ダメということで、キングスもサンズもスカウトとフロントがかなり無能に近いという実績ができてしまいましたな。この年は全体的に不作なので基本的にどこも失敗しているとは言えますが。しかし、キングスは本当に育成をガマンできない……。近年これだけ上の方で指名したんだから何人か残るだろうと期待していたものの、こりゃもう全然残らないかも。フォックス、ボグダノヴィッチ、ヒールドくらいか。ボグダノヴィッチとヒールドは役割がかなりかぶるのでどちらか片方は無用の長物になる可能性も高いし、フォックスもシュートレンジが伸びないと苦しい (あと少なくとも2年は待つべきですが)。バグリーは即ゴリゴリに通用すると思うので、バグリー中心でやるのがいいのかな。

マブスは5位ヤング+来年以降の1巡目指名権と3位ドンチッチで交換。RealGMによると2年間は5位以内プロテクト、次の2年間は3位以内プロテクト、5年目にプロテクトなしと出した指名権のプロテクトは結構厳しい条件で、来期も多分苦しいと思うものの、ドンチッチを中心に短期で再建を終わらせるという意志が見える漢のトレードアップ。かっこいいっす。2巡目は実力派のブランソンに、サイズと身体能力のある素材型のビッグマン二人。アデトクンポ弟はともかく、スポルディングのディフェンスはすぐ通用しそう。ロースターがスカスカでキャップスペースには余裕があるので、ビッグマンとウィングに力のある選手がほしい感じでしょうか。

グリズリーズは4位のジャクソンよりも32位のジェヴォン・カーター!今ドラフトで一番土臭い選手が一番土臭いチームに指名されてニッコリしました。やっぱグリズリーズはこうよ。これで4位がウェンデル・カーターだったら土臭いというかほぼ土という感じで最高でしたが、流石にそれはないよね。

ホークスは今ドラフトで一番面白い動きをしたチームと言っていいのでは?先にも書いたとおり、マブスはまだ少し苦しむ事になると思いますし、ホークス自身もまだ苦しむだろうから、来年はかなりドラフトでの条件がよくなるでしょう。今年と来年で一気にアセットが充実しそう。ヤング、ハーター、スペルマンとガード、ウィング、ビッグマンで今年のトップレベルのシューターを揃えて狙いが明確。プリンスやコリンズはもちろん重要でしょうけども、現在チームの柱がシュローダーなので、ヤングとの共存はどうするのか。ドンチッチよりも評価するぐらいだからもちろんヤングが将来の中心だと思っているでしょう。契約があと3年も残っているので、来年以降トレードのダシにするつもりなんだろうか、今の段階では。2巡目を指名しなかったのは、来年1巡目3つに2巡目3つ指名権があるので、あまりロースターをつめ込まないように、という考えだろうと思います。もともとスカスカのロースターですが、来期はミニマム契約や短期の契約のFA選手で枠とサラリーの柔軟性を確保していくんではなかろうか。まあ、来期もタンキングするのでしょう。再来シーズンから巻き返していくつもりではないかな。強いことに慣れてるし、あのオーナーはダラダラ再建期間を伸ばすつもりはなく、マブスとは違うやり方で短期で再建を終わらせる心づもりでしょう。

バンバはこのダンクが何回見ても笑える。この妖怪感。このサイズでフットワークが軽くシューティングスキルがあるのはすごいんだけれども、フィジカルなプレーヤーにはボコボコに押し込まれそうだしペリメーターでガードにスイッチされたら簡単にやられそうな気もする。この選手の場合はディフェンスがむしろ心配かなあ。しかしながらどこからでも点を取れるゴベールみたいになりうる恐るべき素材なのは確か。マジックの2巡目は去年に続き二人共腕ニョロ3&D系の選手。ジャクソンは肩幅が広くてがっしりしているのでそこまで腕ニョロ感ありませんが、フレイジャーはかなり腕ニョロで大好き。3&Dを増やすのは結構だけれども、PGどうするんだろうね。というか、何もかもどうするんだろうね……。

ブルズはお約束通りに完成度の高い即戦力指名。やっぱり22位でシニアのハッチソン。毎年のことながら、本当に冒険しない。カーターはC扱いでしょうか。インサイドだけ妙に長期契約が多く込み入ってて、ウィングが薄い。ラヴィーンと延長できればマシになると思いますが、怪我のリスクが高いから度胸がいりそう。毎年のことですが、つまらんピックです。それで上手くいってないとまでは言えないので、とやかく言うことでもないんですが。ここでポーターに行ったら「珍しくリスクとったぞ!」と喜ぶところだったんだけども。

えー、キャブスのセクストンは……なんだろう、一人相撲大学全米チャンピオンみたいな印象なのですが。最高に上手く行くと3Pが入る身体能力の少し低いウェストブルックみたいな感じになるのかな。失敗するとブランドン・ナイト。どっちにしろ、今のNBAで優勝を狙うチームの中心にはそえられないタイプじゃないかなあ。

会場のニックスファンは、もう誰を選んでもブーイングするのがお約束になっているのでしょう。オーナー様は派手で個の力が高いタイプの選手がお好きでしょうから、オーナー様的にはいいピックだったのでは?デニス・スミスじゃなくニリキナを選んだことがフィル・ジャクソン解雇の一因と言う話なので、今のGMはオーナー様のご機嫌を損ねるようなピックはしないだろう。チームの戦い方に合うとか合わないとかの話ではもうないので、これからも足し算のチーム作りで頑張ってください、としか言いようがない。ノックスはポテンシャルの塊でかつ十分実力もあるのでいい選手だと思います。

クリッパーズ。ギルジアス=アレクサンダーはほぼ各所の予想通り、実際優秀なPGが長期的に必要な状況だったので、これはもうみんな取りに行くだろうと思っていたところでしょう。3P%がいいので騙されやすいですが、3PAは少なく、ジャンプシュートそのものの成功率はかなり悪いので、この改善如何にキャリアが成功するかどうかがかかっていると思います。ジェローム・ロビンソンは謎。なんでとったんだろう?いや、取るのはいいけど、トレードダウンしても行けたのでは?それこそスパーズから18位とミルズでも引き出して18位で行けたと思うんだけれども。なんかドラフト直前に急激に評価をあげていたのは知っていましたが、それでも13位で指名するほどかなあ。おかげさまでウォーカーが落ちてきたので良かったんだが。めちゃくちゃに点を取れるのはそのとおりで、ハイライトを見てるとペリメーターで一人でスペースを作ってプルアップ3をバシバシ決めるところとか、オフボールの動きとか、なんてバスケが上手いんだろうと感心します。が、多分それ以外のこと、特にディフェンスは全くできない選手に思われます。サイズ的にもNBAに入ってからディフェンスが改善する余地は小さいと思います。ルー・ウィリアムズやジャマル・クロフォードみたいな、点は取れても結局プラスになっているのかなっていないのかわからない感じの選手になっちゃうんじゃないかなあ。ルーウィリさんは歳を取るほどうまくなっていて今はもう完全にプラスになってると思いますが、それはゲームメイク力とTO%の低さに鬼のFT稼ぎ技術など、オフェンス効率を突き詰めた成果なので、スタッツ見る限りロビンソンにそこまで期待できるかはやや疑問。まあでもこの技量と指名順位なので、成功はして欲しいです。

ホーネッツはさすがに失敗しないでしょこれは。キッド=ギルクリストもそろそろ見切りつけなくてはいけないだろうし、ハワードを出した今、ケンバとラム以外の得点力が厳しいので、中も外も確実に得点力があってパスも出せてディフェンスも1から4まで問題ないマイルス・ブリッジスは文句なしでは。薄いPGに実力のあるグレアムをもらってきたのも良かったと思います。あまり上がり目の見えないホーネッツが2巡目2つ出すのはややリスキーな気もしますが、34位と高位だから仕方ないのかな。クリッパーズとのトレードで2巡目指名権を2つもらっているものの(2020年のキャブスと2021年のクリッパーズ)、これらはあまり価値を生まないでしょう。

ナゲッツ、まさかのポーターが14位まで落ちたのを拾うの巻。どんだけ怪我がひどいんだか。まる一年かけてリハビリさせたとしても、身体能力が戻るなら長期的には大成功でしょう。今年の大荒れポイント1。ジェローム・ロビンソンを入れれば2。SGとストレッチ4ばかりのロースターにやっとサイズのあるまともなウィングが入りましたね。今年戦力になるかはともかく。2巡目のヴァンダービルトは、大学では何故かリバウンドばかりやらされていましたが、本質的にはスラッシャー型のポイントフォワードでしょう。シューティングがさっぱりで怪我に泣き続けた選手ということで、時間をかけて育成できるなら面白い素材だと思いますが、我慢がきかないチームには扱いきれないような。ウェルシュは……お前らそんなにでかいやつに3P打たせたいんかという。

トロイ・ブラウンは指名順位が20位ぐらいだったらいい指名ないんだけれども。ここもやや荒れた要素か。一番薄いのはPGなので、ウィングだけれども実質的にはゲームメイカーのブラウンは上手くハマるかもしれません。身体能力の低さとシューティングの悪さがどうかという部分ですが、それ以外は全面的にレベルの高い選手なので、時間をかけてシューティングが改善されれば使いでのある選手になるでしょう。若いし。2巡目のサノンはよくわかりません。ハイライトを見ると平面のスピードが桁違い。PGとしてはサイズもあるし、シュートのリリースも早いし、面白い素材だと思います。若いし。スタッシュするんですかね。この選手とクルボカはグローバルキャンプで評価を上げたんだったかな。なんか、そんな悪いドラフトでもない気がするなあ。

シクサーズはそのままミケル・ブリッジス使ったほうがいいと思うんですが。ブリッジスとコビントンのウィングコンビとか攻守両面で嫌すぎる。シモンズ、ブリッジス、コビントン、サリッチ、エンビートとか、ボールも動かせるしどこからでも点取れるしディフェンスでも隙がないし、そのまま優勝しそうなメンツでは。ザイアー・スミスのほうが身体能力も高いしポテンシャルはあるのかもしれないけど、3番以上は守れないだろうし、時間もかかるだろうし、これはあまり褒められたトレードではないと思います。シャメットはディフェンス以外はPGとして完璧。サイズと身体能力があるのでディフェンス面でもまだ伸びるでしょう。ミルトンはもっと評価高かったはずなんだけど、よく54位で取れたなあ。身体能力がない以外はPGとして完璧。そもそもPGのサイズではない。なんだろう、ワンサイズ小さくて3Pが入るカイル・アンダーソンみたいなやつだ。

バックスのミーハードラフトに感謝。おかげでウォーカー落ちてきたぞ。一年目の成績であれこれ言うのも可哀想だが、NCAAトーナメントで瞬間最大風速がすごかった選手を去年も取りましたが、どうでしたか?バックスはポテンシャルピック志向がかなり強いチームなので、「ああ、ロニー・ウォーカー指名するんだろうな。じゃなきゃロバート・ウィリアムズか」などと指名前は思っていたのですが、まさかのディヴィンチェンゾだったので「選ばせてくれるんだ!スパーズに!その二人を!」とテンション上がりました。ありがとうございました。で、ウィングスパンの短いディヴィンチェンゾは流石にディフェンス面でサイズの限界があるんではないか。身体能力はかなり高いけれども、シューティング以外で特筆すべき技術があるとも思えない。アシストは多いですが、これもゲームメイクできるからというよりも、ビラノバがボールシェアをしっかりやる戦い方だから流れで増えるという感じではないかなあ。得点効率が高いのも、チーム全体の力でマークが分散することとスペースが生まれるからであって、個人の力だけが反映された結果だとは思えない。例えばジェローム・ロビンソンとTS%は同じですが、Big EastとACCならACCのほうがおそらく全体のレベルが高く、その中で負け越しているチームのエースのロビンソンのほうが、環境面でもマークの厳しさの面でも難しい戦いをしていてシューティングの質は上回っているはず(うーん、やっぱロビンソンは18位では指名できなかった気がしてきた)。ディヴィンチェンゾは「アスレチックでアンセルフィッシュなシューター」にはなるでしょうけど、それ以上にはならないんじゃないかなあ。ウォーカーにここで行く方がバックスらしいと思うけど。

スパーズ。「選ばせてくれるんだ!」と思ったものの、先のThe Ringerの記事を読んでいたので「ウォーカーとるんでは」と薄ぼんやり思っていました。ウィリアムズのオフコートの問題は知りませんでした。ポテンシャルピックをする機会がそもそも少ないので、貴重な機会でちゃんと残った中で一番素材がいい選手をとってくれて嬉しいです。本来ロッタリーで消えてここまで落ちてこないはずの選手なので、ここもやや荒れたポイントか。

ウルブズの指名はなんかすごかったですね。オコーギーって大体20位台の下の方から2巡目上位、ベイツ=ディアップは1巡目下位がコンセンサスで、まずオコーギーを20位というのはやや高いもののわかるとして、ベイツ=ディアップがここまで落ちるんだ、というのが驚き。一般的にはベイツ=ディアップのほうがオコーギーよりも評価が少し高いぐらいだったと思うんですが、その二人が20位と48位で同じチームから指名されるって、かなり不思議な結果になりました。25位と30位ぐらいでする指名だよなあ。ウルブズも今年の荒れたドラフトを代表するような指名と言えましょう。全体として結構得した方では。個人的にベイツ=ディアップはわりと好きなので、48位まで残ってしまった時に「ベイツ=ディアップ残れベイツ=ディアップ残れベイツ=ディアップ残れベイツ=ディアップ残れ」とマントラを唱え続けてたのですが、49位までは残りませんでした。残ったからと言ってスパーズが指名するわけではないんだけどね。

21位グレイソン・アレン。うーん。計算できるのは間違いないと思うけど。他にいたのではないか、という感は否めない。らしいっちゃらしいような気のする指名ではあるが、中長期的な補強ポイントってウィングとかPFだったのでは?

ペイサーズはいいドラフトだったと思います。コリソンとジョセフがいるけど来年UFAだから、ホリデイが活躍できそうならPGに長期的展望を持てる。インサイドターナーとサボニスがいるし、オラディポも契約期間がまだあるから、長期的に安定したチーム作りをしやすい環境になってきたのではないか。あと2巡目のアリーゼ・ジョンソンすごい好き。身長5' 9"から6' 8"まで急激に伸びてPGからPFになったとか言うたまに聞くやつ。ウィングスパンが6' 8"でPFなのにゴール下で弱いというのが悲しいものの、やたらアクティブでリバウンド力が高い(腕短いのに)、異様にボールハンドリングが上手い、元ガードだからジャンプシュートが上手いかと思いきやシューティングは悪い、とあまりに個性的な選手。たまりません。シューティングが改善すれば面白いんだけど、肘が開いているのでこれ直さないと良くならないんじゃないかなあ。性格が良くてディフェンスも一生懸命する、馬車馬になれる選手ということでロールプレーヤー向き。

ブレイザーズは、ビッグマンはいっぱい、ウィングもそこそこいてガードが薄いので、足りないところに足したというシンプルな指名ではある。サイモンズは今年のRSCI7位だったので、24位で指名できるのならなんやかんやで成功する可能性のほうが大きいのではないか。去年のRSCIトップ10の選手は、デュバル(指名なし)とミッチェル・ロビンソン(36位)を除いて皆ロッタリーピック、ポーターを除けば最上位付近での指名なので。トロイ・ブラウンやノックスよりも多少生まれが早いし、今期大学でプレーしてたとしてもあまり変わらないぐらいの成績を残していたかもしれない。トレントは身体能力は低いけど(コンバインの数字はかなりいいのに)バスケットボールIQが高い良い選手だと思います。各サイトのグレーディングでブレイザーズは評価が低いところが多いように思いましたが、個人的には面白い指名だと思います。

レイカーズは、地味!ポール・ジョージが多分来るのでロールプレーヤーできそうな選手をきちんと揃えるという意図でしょうか。悪くはないんだが、地味だなあ……。

で、ロバート・ウィリアムズ27位、セルティックス。ロッタリーピックがほぼコンセンサスだった選手がここまで落ちる。ポーターとともに今年の最も荒れたポイント。膝の怪我が多いところとかオフコートで問題があるところで避けられたようです。にしてもここまで落ちるとは。素材としてはもっとずーっと上の方でしょうけど、大学2年間で技術的に改善したようには、少なくともスタッツからは見えないんだなあ。FT%、TO%、AST%が全部悪化するとか、うまくなってないどころか下手になっているのではという気にすらなる。素材だけで終わりそうな予感が結構するので、やっぱりリスキーな選手だと思います。

ウォリアーズは3&Dです。はい。

ネッツはまた似たようなのを二人も。両方共サイズがあってかつ技術もかなりある方だと思うので、フィジカル的に向上すればかなりやれるのでは。スタッシュしないで来シーズンからすぐに加わるということで楽しみ。来年からは念願の1巡目指名権があります。良かったですね。案外再建が順調で、普通に勝っちゃって12位ぐらいの中途半端な指名権になりそうな気はする。

38位カイリー・トーマスや46位メルトンも1巡目がほぼコンセンサスの選手でなかったか。メルトンは評価の幅が大きいけど、トーマスとかベイツ=ディアップはまず1巡目指名という認識だったので結構落ちて驚きました。逆にこの辺拾えたところは得したと言えるのでは。結果が出なきゃ何も言えませんが。

大学時代のスタッツでNBA入りした後のWin Sharesと最も相関するのは何か、大学選手の成長曲線、ESPNのデータ解析に基づくドラフト候補ランキング

大学時代のスタッツでNBA入りした後のWin Sharesと最も相関するのは何か

Three and Layupのトーマス・バシンの記事。Win Sharesを成功の指標として、25歳時のNBAシーズンのWin Sharesとドラフトエントリーした年の大学での成績の相関をとって、どういったスタッツがNBAでの成功に結びつくかを調べたもの。ドラフト指名順位やポジションとNBAの成績は相関するのでそれを調整したWin Sharesとの相関をとっている。ガードとフォワードで分けて計算し、センターは除いている。

疑問点としては、そもそもWin Sharesは成功の度合いを表す指標として適当かあやしい。Win Sharesは累積数値で、たまたま25歳のシーズンに怪我などで試合に出れなかったら大幅に下げるわけだけれども、そういうものを使っていいのか。複数年の特定期間の平均か中央値を使うべきではないか。同じ累積数値でもVORPのほうがいいのではないか。Win Sharesはディーン・オリバーが開発したIndividual Offensive Rating及びIndividual Defensive Ratingからの派生スタッツで、チームスタッツに左右される部分があるので個人の成功度と純粋に見ることはできるのか。また、このIndividual Offensive Rating及びIndividual Defensive Ratingはポゼッションベースのスタッツなのに、この記事の分析では40分あたりのスタッツと相関をとっているのは問題があるのではないか(2000年ぐらいまでであれば時代を遡るほどPaceが遅くなるので、単位時間あたりのスタッツが小さくなる。この期間の平均の単位時間あたりのスタッツで計算した相関係数に、今の高い単位時間あたりのスタッツを当てはめると過大評価にならないか。Paceの早いチームでプレーしている選手ほど過大評価されて、今後の予想には使えないのではないか)。といったところ。そもそも完璧な総合指標がないのでWin Sharesを採用すること自体はあまりツッコんでもしょうがないのだけれども、せめてポゼッションベースのスタッツを使うべきではないかと思います。

結果としては、TS%、FT%、STL per 40minはポジション問わず相関が最も強い部類に入る。また、それほど強い相関ではないけれども、年齢が若いほど成功しやすいという傾向もある。若いほどポテンシャルがあるというのは大体の実感として我々が共有するところでしょうが、それよりもスティールのほうが相関が高いというのは不思議です。スティールは選手のどんな能力を表象するんでしょうね。FGAや得点数が全然相関しないのに対してTS%やFT%が強めに相関するというのは意味深長で、ショットセレクションの良さとシューティング技術はNBAでの成功に最も重要、あるいは大学時点での得点効率は過小評価されているということになります。例えば、ドラフト50位から60位ぐらいの間で指名された選手のうち、最もTS%が高い選手はその中で最も成功の可能性が高い選手、そのレンジで指名された中で最も過小評価された選手ということになりそうです。また、ガードにおいて身長・体重とWin Sharesが比較的強めの負の相関になっていて、サイズのないガードほど指名レンジの中で過小評価される傾向があることもわかります。しかしながら、ボックススコアが個人のディフェンス力をほとんど反映しないこと、それ故にそれをベースとしたDRtgと更にそれをベースとしたWin Sharesも個人のディフェンス力をほとんど反映しないこと、Kが以前書いたように、現代においてラインナップ全体のサイズはチームのディフェンス力にとって重要であることを考えると、サイズの小さいガードが狙いめとは思えません。むしろそういう選手はディフェンス力を捨象されてオフェンス力だけを評価されている、Win Sharesが過大評価している選手というべきでしょう。

この分析に意義があるとすれば、ショットセレクションやスティール能力に、プレーヤーの総合的な能力を示す何らかの面があることを示唆していることでしょうか。

大学選手の成長曲線

Nylon Calculusのアンドリュー・ジョンソン記者の記事。年齢別に各スタッツの平均値を出して、年齢が上がるにつれてどう成績が変化するかを追ったもの。

年が上がるほど成績がよくなる、という当たり前の事実を確認するものですが、どのスタッツがどのぐらい良くなるか、という変化率が見どころ。むしろ変わらない部分が面白い。これを見るとSTL%やBLK%、OREB%は全く変化しないことがわかります。OREB%はそもそも取りに行く選手がほとんど決まっているので、それを任されない選手が変わらないのは当たり前、年齢がどうこうの問題ではないでしょう。STL%の変化のなさからは、技術の向上や経験とは関係ない、この能力は生まれ持った身体的特徴やセンスでほとんど決まってしまうのではないか、という印象を受けます。上の記事でスティールがNBA入りした後のWin Shareと比較的強い相関があることがわかりますが、どうもスティールは技術や経験以上の「バスケの才能」のようなものが反映されるプレーなのではないか、と考えてしまいます。

身長別にガード・ウィング・ビッグマンに分けた、19歳と22歳の間のスタッツの変化率も計算してあります。サイズの大きい選手ほどDREB%とBLK%が鋭く伸びるところは、ウェイトトレーニングによる筋力向上がこういうフィジカルなプレーの能力向上に直結するのかなと思います。ガードのBLK%が大幅に落ちるのは謎ですが。ビッグマンのTO%がほとんど向上しないのに対してガードとウィングのTO%が大幅に改善しているのは、AST%がビッグマンでも向上していることを考えれば、経験やパス技術の向上よりもボールハンドリングの技術向上が反映されているのではないか。

こうした数字を見ると、ボールハンドリングやパスは技術的に向上の余地が大きいのだから、プロに入ってからも大幅に伸びる余地がある、TO%やAST%、あるいはDREB%についても、スカウティング段階で大学での成績のまずさはあまり気にする必要はないのではないかと思います。逆に伸びにくい部分、TS%やSTL%などは一般的に注目に値する部分ということになるでしょう。しかしTS%は全ポジションで安定的に向上していますし、オフェンスオプションとして優先度が高くなるとマークも集中して、実際の技術の向上ほどには数字が伸びにくい面もあることは注意すべきだと思います。

ESPNのデータ解析に基づくドラフト候補ランキング

ESPNのポール・セイビン記者とセス・ワルダー記者の記事。ドラフト指名予想ではなく、今年の指名候補で最もNBAで成功しそうなのは誰か、というランキング。分析の手法は記事の下の方にあり。NBAでの2年目から5年目までの期間のBPMの予想に基づく(1年目はしばし外れ値になるため除く)。予想はESPNのスカウトランキングと大学の直近2年間のスタッツを組み合わせたモデルを利用している。インターナショナルプレーヤーについても同様。それだけでは予測が難しい(特にインターナショナルプレーヤーが)ので、ESPNのスカウトランキング、合衆国の選手はNCAA・AAU・FIBAのPaceと相手チームのレベルを調整したスタッツ、インターナショナルプレーヤーも同様のものとリーグのレベルを調整したスタッツ、ポジションごとのNBA Draft Combineの身体測定値という別のモデルも用意して予測したとのこと。各モデルの計算式は不明。

これらを活用して有りうるBPMを予測したランキングと、それと実際のBPMとの相関を表したグラフが一番下にある。ドラフト指名順位との相関が最も高く偏差も小さいのでさすがと言ったところですが、TOP10以内の最上位レベルの選手の成績予測はこの解析によるランキングのほうが優れているでしょうか(偏差は大きい)。10位以下になるとほとんどランダムで当てにならなさそう。スカウトランキングが一番当てにならなそうではある。

というわけでランキング10位以内でみると、大体予想通りのメンバーの中にザイアー・スミスがいるのが注目すべきところでしょうか。あとマイカル・ブリッジスが5位で一般的なランキングやモックの順位よりも高い。この辺が来シーズンの「予想以上」になるかもしれないところです。まあ、このランキングが掘り出し物を見事に当てるとは全然期待していませんが。これより下はランダムくさいので当てにしなくてもいいでしょうけど、スカウトランキングよりは偏差も小さいので訳に立ちそうな気もします。一般的なランキングとはかなり違いがあるので、酒の肴に楽しむにはいいんじゃないでしょうか。

impressiveを「感銘的」と訳すこと

バスケの話でなくてあれですが。先月にFull-countという野球専門のニュースサイトに以下の内容のメールを送りました。

大谷翔平、3度目先発の相手は強豪Rソックスに 地元紙は争奪戦の“裏話”紹介」の記事の中で「感銘的」という形容詞が出てきます。
https://full-count.jp/2018/04/16/post121449/

元になったボストン・ヘラルドの記事を当たるとこれがimpressiveの訳語であることがわかります。
http://www.bostonherald.com/sports/red_sox/2018/04/red_sox_took_their_shot_with_shoehei_ohtani

この記事のみならず、他の記事でもこの「感銘的」という語がよく出てきますが、感銘的などという日本語はありません。「感銘」という単語を使うのであれば普通「感銘を受ける」という用法をするはずです。
impressiveは「ポジティブな印象を与えるようなもの / 強い印象を与えるようなもの」を修飾する語で、何かを褒める・良い評価をするようなときなどに頻用する口語です。我々日本人が何かをほめたり良い評価をするときに、「感銘的だ」などと言いますか?そもそも、「感銘的」などという言葉を口から外に出したことのある日本人など皆無ではありませんか?「感銘を受ける」ですら滅多に使わないのではありませんか?アメリカ人が頻用する口語を翻訳するときは、日本人が頻用する口語でもってするべきです。素晴らしい、優れた、印象的な、すごい、こんなような語で十分でしょう。件の記事の文であれば「ほんとうに素晴らしかった」とでも訳せばいいでしょう。日本語に存在しない語をわざわざでっち上げて使う必要はありません。Full-countに限らず、何故か様々なスポーツメディアの翻訳記事で「感銘的」という語を近年良く目にします。誰が最初に使い始めたか知りませんが、いい加減やめるべきです。「不自然な、下手くそな日本語」という印象しか受けません。私だけではなく、ほとんどの日本人がそう感じているはずです。訳者は、翻訳スポーツメディアと関わりの薄い周囲の人間に「感銘的」という語が日本語として不自然かどうか聞いて回るべきでしょう。

 「我々日本人」とか主語がでかいのが恥ずかしいですが、言いたいことはこれが全てです。Kは日本人として平均的な英語力しかありませんが、オックスフォードケンブリッジロングマンウィクショナリー等々の英辞書の定義と理解は離れていないでしょう。アメリカ英語としてのimpressiveは強めの褒め言葉、というのはこの手のニュースを読む機会が多い人なら自然とわかってくることです。そんなことは訳者も分かっているはずで、問題は、なんでこんな変な日本語で訳すのか、普通に訳せばいいでしょということです。

言語は変化していくので、過去に常用された語も時代の流れでなくなったり変わったりしていくものです。新しい語も生まれます。個人的には「言葉の乱れ」をあげつらう立場を取るのは好きではありません。しかし、「感銘的」という語は特定のスポーツメディアでしか見かけず、社会においても全く定着していない語です。既存の、完璧に定着している自然な語で訳出できるものを、わざわざ全く不自然な造語を使う必要性がありません。

殆どの人は訳出された文章を原文と突き合わせたりしません。翻訳の上手さとは、結局日本語の上手さです。極端に言って、原文と全く趣旨の異なる訳をしても、日本語として全く自然な文章であれば読み手はそれを「上手い翻訳」と認識します(もちろん、まるででっち上げの「翻訳」などしてもわかる人にはすぐバレて問題になるので、そのようなことをしてはいけません)。だからこそ普通の自然な語を使って訳すべきでしょう。

また、ニュースの翻訳の場合は言葉の細かいニュアンスを訳し分けることに腐心する必要はないと考えます。「impressive」「great」「excellent」「terrific」「beautiful」「outstanding」「awesome」等、「強めの褒め言葉」で使われる形容詞はたくさんありますが、こういったものはその微妙なニュアンスの違いを気にせず、全部ひっくるめて「素晴らしい」とでも訳しておいて問題ないと思います。そもそも、それらの違いに対応するような常用の日本語のバリエーションはそれほど多くあるでしょうか、「素晴らしい」で全てのニュアンスを内包しているのではないでしょうか。そういった違いを訳し分けようと努力した結果、不自然で読みづらい日本語になってしまっては本末転倒でしょう。「どう訳し分けるか」という点に翻訳家の腕の見せ所があるのはわかりますが、翻訳家目線の訳の上手さと読者目線の訳の上手さは異なるので、その違いを忘れると翻訳家の一人相撲になってしまいます。文芸作品や、用語の正確性を問われるような専門的な分野の翻訳はともかく、普通のニュース記事で出てくる普通の語の翻訳は、文意を外さない限り些細なニュアンスは気にせず、読者目線で全く違和感のない自然な日本語での翻訳を目指すべきではないでしょうか。

このメールを送ったのは4月16日の夕方頃だったかと思いますが、yahooで「感銘的」でニュース検索すると、4月17日07:03配信のこの記事を最後に感銘的という訳語を使わなくなったようです。検索結果を見るとそれまでかなりの頻度でこの語を使っていたのが解ると思います。原文と突き合わせてないのでわかりませんが、impressiveは頻用される語ですし、この1ヶ月の間にホームランもかなりいいピッチングもあり、大谷上げのニュースの需要が極めて強いことを考えても、impressiveを訳す機会がなかったのではなく感銘的という語を使うのをやめたのだと思います。Full-count以外ではTHE ANSWERというサイトとFootball ZONEというサイトで特徴的に使われ、それ以外ではほぼ使われていない訳語です。Full-coutTHE ANSWERはともに株式会社Creative2というところが運営、Football ZONEはfangate株式会社というところが運営、ただしいずれも「広告管理:株式会社メディア・ヴァーグ」とあり、所在地も同じ「東京都目黒区上目黒5-8-8 リネアB」なので実質的に同じ会社なのでしょう。社員が翻訳業務をしていて、その中の特定の社員がこういう変な訳をしていたということだと思います。

今回はこのメディア・ヴァーグのimpressiveの変な訳についての狭い話でしたが、翻訳系のスポーツメディアはどこも訳の質、ひいては日本語の質が低いと感じます。yahooニュースにも配信していて目に触れる機会も多いのだから、汚い訳文を大量供給するのはわりと有害だと思います。自分たちで取材しているわけでもなく、アクセス稼ぎ出来そうな記事の翻訳を商売でしているのだから、金をもらうに値する水準の仕事をして欲しいと思います。Kもこのブログで必要に応じて訳出はしますが、他人をとやかく言えるような代物でもないので、他山の石としなければいけないことではあります(ビタイチ収入になりませんが)。

今年のNBA Draft Combineの数値

身体測定値などのデータが出ている。シューティングに関してはあまり意味がないので、身体測定値身体能力値だけ眺めるといいでしょう。

まず、ジョージア工科大のジョシュ・オコーギーという選手の身体能力が飛び抜けているように思います。身体能力値は意外と得意不得意が出て、スプリント系はいいけどジャンプ力が意外とないとかバラつきが出ますが、オコーギーはレーン・アジリティ以外の全ての項目で最高レベルで、ここまで揃って数値のいい選手はなかなかいないように思います。靴なしの身長が6' 3"でウィングスパンが7' 0"と腕も非常に長く、今回の測定で最も評価を上げたのはこの選手でしょう。2年生ですが年齢も9月までは19歳と若く、スタッツもかなりのもの。このサイズ・ポジションの選手としてはREB%やBLK%もかなり高く(STL%も素晴らしい)、サイズと身体能力が活きているのでしょう。2P%が悪いのでTS%が低いですが、ワンマンに近いチーム事情のようでマークが集中したのだろうと思います。3P%は高く、FTArもかなり高いため、シューティング技術とフィジカル的な頑強さを兼ね備えているだろうと思われ、効率的なプレーに集中させれば使いでのある選手になりそうな感じはします。TO% が悪いのは問題で、The Stepienによるとボールハンドリングは悪いとのこと。技術的な面が伸びしろと言えそうです。サイズやフィジカルから見れば1番から3番までは守れるでしょう。個人的にはこの選手が最も目につきました。今年の身体能力番長はハミドゥ・ディアロかザイアー・スミスかなー、と思ってましたが、オコーギー、お前がナンバーワンだ……。あと、意外と言ってはなんですが、ドンテ・ディヴィンチェンゾも相当いいですね。低い方ではトニー・カーがひどい。PGでこれはないぞ。シェイク・ミルトンも測ればこんなもんだったと思いますが。正直にテスト受けてる分だけ誠実で信頼できると言えるか。

(5 / 19 12:30 追記:昨日見た時から身体能力値が追加されていました。ミルトンはまあ悪い方ですが、カーほどはひどくないですね)

身体測定値はモハメド・バンバのウィングスパン7' 10"に目がくらむ。こんな数字はじめて見た。スタンディングリーチ、ウィングスパンともゴベール超えで、来シーズンNBA最大の選手ということになるかもしれません(マリアノヴィッチのほうがでかいかもしれないけど)。計測の仕方の違いもあるかもしれませんが、シーズン前に出回った数値より全体的に上がっている。あんまり育ってもペリメーターディフェンスで不利になりそうなのでいいのか悪いのか。あと、大学No.1リムプロテクターのサガバ・カナテという選手はサイズ的にも身体能力的にも飛び抜けた面がないので、主にタイミングでブロックしてるんだなと思いました。

以上。