だいたいNBA

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大学時代のスタッツでNBA入りした後のWin Sharesと最も相関するのは何か、大学選手の成長曲線、ESPNのデータ解析に基づくドラフト候補ランキング

大学時代のスタッツでNBA入りした後のWin Sharesと最も相関するのは何か

Three and Layupのトーマス・バシンの記事。Win Sharesを成功の指標として、25歳時のNBAシーズンのWin Sharesとドラフトエントリーした年の大学での成績の相関をとって、どういったスタッツがNBAでの成功に結びつくかを調べたもの。ドラフト指名順位やポジションとNBAの成績は相関するのでそれを調整したWin Sharesとの相関をとっている。ガードとフォワードで分けて計算し、センターは除いている。

疑問点としては、そもそもWin Sharesは成功の度合いを表す指標として適当かあやしい。Win Sharesは累積数値で、たまたま25歳のシーズンに怪我などで試合に出れなかったら大幅に下げるわけだけれども、そういうものを使っていいのか。複数年の特定期間の平均か中央値を使うべきではないか。同じ累積数値でもVORPのほうがいいのではないか。Win Sharesはディーン・オリバーが開発したIndividual Offensive Rating及びIndividual Defensive Ratingからの派生スタッツで、チームスタッツに左右される部分があるので個人の成功度と純粋に見ることはできるのか。また、このIndividual Offensive Rating及びIndividual Defensive Ratingはポゼッションベースのスタッツなのに、この記事の分析では40分あたりのスタッツと相関をとっているのは問題があるのではないか(2000年ぐらいまでであれば時代を遡るほどPaceが遅くなるので、単位時間あたりのスタッツが小さくなる。この期間の平均の単位時間あたりのスタッツで計算した相関係数に、今の高い単位時間あたりのスタッツを当てはめると過大評価にならないか。Paceの早いチームでプレーしている選手ほど過大評価されて、今後の予想には使えないのではないか)。といったところ。そもそも完璧な総合指標がないのでWin Sharesを採用すること自体はあまりツッコんでもしょうがないのだけれども、せめてポゼッションベースのスタッツを使うべきではないかと思います。

結果としては、TS%、FT%、STL per 40minはポジション問わず相関が最も強い部類に入る。また、それほど強い相関ではないけれども、年齢が若いほど成功しやすいという傾向もある。若いほどポテンシャルがあるというのは大体の実感として我々が共有するところでしょうが、それよりもスティールのほうが相関が高いというのは不思議です。スティールは選手のどんな能力を表象するんでしょうね。FGAや得点数が全然相関しないのに対してTS%やFT%が強めに相関するというのは意味深長で、ショットセレクションの良さとシューティング技術はNBAでの成功に最も重要、あるいは大学時点での得点効率は過小評価されているということになります。例えば、ドラフト50位から60位ぐらいの間で指名された選手のうち、最もTS%が高い選手はその中で最も成功の可能性が高い選手、そのレンジで指名された中で最も過小評価された選手ということになりそうです。また、ガードにおいて身長・体重とWin Sharesが比較的強めの負の相関になっていて、サイズのないガードほど指名レンジの中で過小評価される傾向があることもわかります。しかしながら、ボックススコアが個人のディフェンス力をほとんど反映しないこと、それ故にそれをベースとしたDRtgと更にそれをベースとしたWin Sharesも個人のディフェンス力をほとんど反映しないこと、Kが以前書いたように、現代においてラインナップ全体のサイズはチームのディフェンス力にとって重要であることを考えると、サイズの小さいガードが狙いめとは思えません。むしろそういう選手はディフェンス力を捨象されてオフェンス力だけを評価されている、Win Sharesが過大評価している選手というべきでしょう。

この分析に意義があるとすれば、ショットセレクションやスティール能力に、プレーヤーの総合的な能力を示す何らかの面があることを示唆していることでしょうか。

大学選手の成長曲線

Nylon Calculusのアンドリュー・ジョンソン記者の記事。年齢別に各スタッツの平均値を出して、年齢が上がるにつれてどう成績が変化するかを追ったもの。

年が上がるほど成績がよくなる、という当たり前の事実を確認するものですが、どのスタッツがどのぐらい良くなるか、という変化率が見どころ。むしろ変わらない部分が面白い。これを見るとSTL%やBLK%、OREB%は全く変化しないことがわかります。OREB%はそもそも取りに行く選手がほとんど決まっているので、それを任されない選手が変わらないのは当たり前、年齢がどうこうの問題ではないでしょう。STL%の変化のなさからは、技術の向上や経験とは関係ない、この能力は生まれ持った身体的特徴やセンスでほとんど決まってしまうのではないか、という印象を受けます。上の記事でスティールがNBA入りした後のWin Shareと比較的強い相関があることがわかりますが、どうもスティールは技術や経験以上の「バスケの才能」のようなものが反映されるプレーなのではないか、と考えてしまいます。

身長別にガード・ウィング・ビッグマンに分けた、19歳と22歳の間のスタッツの変化率も計算してあります。サイズの大きい選手ほどDREB%とBLK%が鋭く伸びるところは、ウェイトトレーニングによる筋力向上がこういうフィジカルなプレーの能力向上に直結するのかなと思います。ガードのBLK%が大幅に落ちるのは謎ですが。ビッグマンのTO%がほとんど向上しないのに対してガードとウィングのTO%が大幅に改善しているのは、AST%がビッグマンでも向上していることを考えれば、経験やパス技術の向上よりもボールハンドリングの技術向上が反映されているのではないか。

こうした数字を見ると、ボールハンドリングやパスは技術的に向上の余地が大きいのだから、プロに入ってからも大幅に伸びる余地がある、TO%やAST%、あるいはDREB%についても、スカウティング段階で大学での成績のまずさはあまり気にする必要はないのではないかと思います。逆に伸びにくい部分、TS%やSTL%などは一般的に注目に値する部分ということになるでしょう。しかしTS%は全ポジションで安定的に向上していますし、オフェンスオプションとして優先度が高くなるとマークも集中して、実際の技術の向上ほどには数字が伸びにくい面もあることは注意すべきだと思います。

ESPNのデータ解析に基づくドラフト候補ランキング

ESPNのポール・セイビン記者とセス・ワルダー記者の記事。ドラフト指名予想ではなく、今年の指名候補で最もNBAで成功しそうなのは誰か、というランキング。分析の手法は記事の下の方にあり。NBAでの2年目から5年目までの期間のBPMの予想に基づく(1年目はしばし外れ値になるため除く)。予想はESPNのスカウトランキングと大学の直近2年間のスタッツを組み合わせたモデルを利用している。インターナショナルプレーヤーについても同様。それだけでは予測が難しい(特にインターナショナルプレーヤーが)ので、ESPNのスカウトランキング、合衆国の選手はNCAA・AAU・FIBAのPaceと相手チームのレベルを調整したスタッツ、インターナショナルプレーヤーも同様のものとリーグのレベルを調整したスタッツ、ポジションごとのNBA Draft Combineの身体測定値という別のモデルも用意して予測したとのこと。各モデルの計算式は不明。

これらを活用して有りうるBPMを予測したランキングと、それと実際のBPMとの相関を表したグラフが一番下にある。ドラフト指名順位との相関が最も高く偏差も小さいのでさすがと言ったところですが、TOP10以内の最上位レベルの選手の成績予測はこの解析によるランキングのほうが優れているでしょうか(偏差は大きい)。10位以下になるとほとんどランダムで当てにならなさそう。スカウトランキングが一番当てにならなそうではある。

というわけでランキング10位以内でみると、大体予想通りのメンバーの中にザイアー・スミスがいるのが注目すべきところでしょうか。あとマイカル・ブリッジスが5位で一般的なランキングやモックの順位よりも高い。この辺が来シーズンの「予想以上」になるかもしれないところです。まあ、このランキングが掘り出し物を見事に当てるとは全然期待していませんが。これより下はランダムくさいので当てにしなくてもいいでしょうけど、スカウトランキングよりは偏差も小さいので訳に立ちそうな気もします。一般的なランキングとはかなり違いがあるので、酒の肴に楽しむにはいいんじゃないでしょうか。