だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

2020年ドラフトーク

スパーズ

特にどうということもない普通の指名でした。もっと上で指名される選手が落ちてきたとか、そいつ指名すんのかいという変な指名もなく、普通。妥当。トレー・ジョーンズは35位前後の指名で自然な感じがしますが、まさか41位まで、というわけでもない。ロバート・ウッダートあたりが落ちてきたら面白いと思いましたが、40位でした。まあでも本当に欲しいと思ったら41位に現金つけて適当な順位にトレードアップすればいい、そこまでしないということはジョーンズの評価がかなり高いということでしょう。

KENS 5のトム・ペトリーニ記者がGM、ヴァッセル、ジョーンズのリモート取材の映像を全編アップしているので、それは一通り見ておいたほうがいいのではないか。この記事自体も、インタビューの内容を踏まえつつドラフトの総評としてよく書けているので読んだほうがいいでしょう。映像はyoutubeのKENS 5のチャンネルにもあり(GMヴァッセルジョーンズ)、こっちは字幕をつけられるのでこちらで見るのがいいと思います。なるべくGMのインタビューは見ましょう。

GMのインタビューで注目すべきは、真っ先にヴァッセルとジョーンズの人間性についての評価を述べており、その後の質問でも人間性が大事だと繰り返し強調していることです。チームの最も重要な価値観に適合する選手を加えようと探している、というコメントをしていますが、その後人間性の評価がドラフトプロセスの重要な段階だと言っており、インタビュー全体の文脈から考えても、チームにとって一番大事なのは人間性だという考えだと理解していいでしょう。これはGMが変わって新体制になってもスパーズの文化の核心は変えないという意思がはっきり伝わるところで、ファンとしては安心できます。昨期はモリス兄弟のどっちかと契約合意したはずなのに反故にされ(代理人クラッチスポーツは依頼者とちゃんとコミュニケーションをしてるのだろうか?)、それを前提としてキャロルとの契約を2年から3年に伸ばしたこと、バルタンズをタダでトレードしたことが全て無駄になりました。またドラフト前にはウォリアーズと、オルドリッジ+11位指名権対ウィギンズ+2位指名権というトレードの比較的信憑性の高い情報がリークされていました。モリス兄弟は元々人間性に問題ありと言われていたわけだし、ウィギンズもwork ethicに問題があると言われ続けているわけで、本来だったらどちらもスパーズが取るような選手ではないはずです。このGM人間性を軽視しているだろうか、だとすればスパーズがドアマットになるのはそう遠くないなと思っていました。実際はそういうトレードはなかったし、ドラフトもきちんと妥当な選手を選んだと思うので、まあ良かったんじゃないでしょうか。

指名選手両者に対してGMが共通に評価していることは、インタビューでネガティブな印象を受けることは全く無く、人間性に対して非常に高い評価をしていること、高いIQを持っていて正しいバスケができる賢い選手であること、主役としてプレーするだけではないアンセルフィッシュな選手であること、競争力が高くタフであることです。ヴァッセルに対しては、良いシューターになると見ている、他のプレーヤーのためにプレーできるなど様々な異なる方法で良いプレーができる、体は人によって異なるから単純に体重を増やすことは求めないが機能的な強度を上げることは必要だ、複数ポジションでプレーできることが今のNBAで重要なことだが機能的な強度を上げることでもっとできるようになるだろう、と評価しています。

ヴァッセルに対するKの評価は前回書いた通りです。振りかぶる系のフォームはレナードも直してきたことなので、余り問題に思ってないかもしれません。大きく手を付けないで細かいところを治すのかもしれませんが、いずれにしろシューティングは大丈夫だとコーチングスタッフが判断したようなので大丈夫なのでしょう。フィジカルコンタクトの強化が最重要でしょうか。ロッタリーピックとはいえ、1年目はやはりあまり出番なしだろうと思います。

ジョーンズは得点力のなさという点を除けばPGとしては足りない部分が全く無いので良い選手だと思います。シューティングはなんとかなるのでジョーンズにとっても良いチームに指名されたのではないかと思います。ミルズが契約最終年で、来季32歳でこれからは身体能力の衰えがプレーに出てくるので、長期的にミルズを置き換えるということで考えると良い選択でしょう。2巡目の選手にあまり期待してもしょうがないのだけれど、2nd ラインナップのPGとしては中の上ぐらいのところまでは確実に育つだろうという期待は持てます。PGというポジションと役割が長期的にNBAで求められるか、というのは別の話だけれども。

二人共大学2年間で大幅かつ全面的に数字を改善しており、成長力には確信が持てます。ギャンブル性の低い指名だと思います。

前回名前をあげた選手であれば誰を指名してくれても文句はなかったのですが、11位で指名できそうな選手ではパトリック・ウィリアムズが最良だろうと考えていましたが、その後の評価の上がり方が尋常ではなかったのでとても指名できなさそうな状況でした(実際4位指名だし。ワッサーマンの代理人は評価引き上げるのが本当にうまいなあ)。アチュワはいくらポテンシャルがあると言ってもスタート地点の実力とバスケットボールIQが低すぎるし、ヴァッセルとネスミスだったらサイズや身体能力、シューティング以外の能力(特に視野の広さ)と言った点から考えればヴァッセルのほうがポテンシャルがあるだろう、11位の時点ではヴァッセルが良いと考えていたので、実際そういう指名になって良かったです。ハリバートンが残ってるのはいくらなんでも話が違うよというところでしたが、流石に1巡目でPGもう一人は苦しいよなあ。サンズはクリス・ポールを獲得してなかったらハリバートンに行ってたのかしら。なんにせよキングスは大儲けの指名でした。

オルドリッジとデローザンが契約最終年なので、トレードアップするならアセット的に今年だけがチャンスでしたが、正直そんなに頑張るような年でもないし、そもそも彼らにアセットとしてそれほど価値があるとも思えないし、対価にウィギンズとか押し付けられたら迷惑だし、無理にトレードをしなくてよかったと思います。

全体の感想

今年全然荒れなかった。不作年は荒れる、の一方で来年以降が豊作なので将来の指名権を絡めたトレードは少なかろうからそんなに動かないだろうという面もあり、どうなのかなと思ったら、動くは動くんだけど派手なトレードも変な指名もそんなに無いという、あまり面白みのないドラフトでした。特に上位に価値がないのでトレードアップもしづらい、複数指名権を持っているチームが少ないのでトレードダウンもしづらい、など色んな要素があったんだろうなあとは思います。多少の前後はあってもコンセンサスから過剰に離れた指名は少なかった言えます。

評価のコンセンサスとしてはHoopsHypeのAggregate Mock Draftが最も良いでしょう。指名一覧はNBA.com、チームごとの指名一覧としてはSporting Newsの記事が見やすいか。以下感想を書きますが、各チームのロースター状況はちゃんと把握していないのでチーム状況に合っているかどうかはよく分からないで書いているものも多いです。指名が早かった順にチームごと。

1位はウルブズはアンソニー・エドワーズ。タウンズとラッセル中心のチーム状況から言えば自然な指名ではある。が、かと言って本気で指名したくてしたわけでもないだろうなあとも思う。消去法だよねこれ。この選手はメンタリティに問題あり、モチベーションが低いと言うような評価が多く聞かれました。これは28位のジェイデン・マクダニエルズにはもっとあてはまって、試合中に思い通りに行かないと不貞腐れてプレーが雑になるという、文字通り目に見えてメンタリティに問題がある選手です。どれだけ才能があってもメンタリティに問題のある選手は失敗する、個人としてそれなりの成績を残してもチームメイトやコーチとの関係を悪くしチーム全体のパフォーマンスを悪化させるというのは過去何度も繰り返されてきたことです。例えば直近では、サンズの指名ですがマーキス・クリスは試合中にすぐカッとなってプレーに悪影響が出る選手でした(今年は数字がまあまあいいですが、どんなもんだったんでしょう、ウォリアーズの試合を見てないのでわかりません。いずれにせよ結果として8位指名の価値はなかった)。ウィギンズもそうですが、こうした選手を指名したウルブズは能力に対する評価に寄りすぎていて、メンタリティに対する評価をないがしろにする傾向がないか。若手が伸びないのは育成力以前にスカウティングで見誤っているのではないか。エドワーズの指名もなるべく避けるべきで、ラメロを欲しがってるようなチームと少し無理してもトレードダウンすべきではなかったかと思います。まあ、上位指名権を持ってるチームは弱いから持ってるのであって、そういうチームは来年の指名権も好条件になるだろう(しかもかなりの豊作年と見られる)からそれは出したくないし、アセットになる選手もあまりいないから下位なのだろうし、難しいか。ともあれ、苦しい指名をしているように見えました。

2位ウォリアーズ、ジェームズ・ワイズマン。特に何も言うことのない妥当な指名だと思います。「ワイズマン」と聞くと装甲騎兵ボトムズを思い出しちゃってダメなんだよね。ワイズマン家の引き出しを全部開けてあげるので「ヤ、メ、ロ……キ、リ、コ……」って言いながら死んでほしいなとか、そんなことばかり考えてしまう。ワイズマンとボトムズごっこがしてえよ……。それにしてもクレイ・トンプソンが死刑囚化するとは思わなんだ。前に少し書きましたが、アキレス腱断裂したら選手生命はほぼ終わりです。パフォーマンスが100%もとに戻ることはありませんし、最大限まで戻っても大幅に能力は落ちます。カリーは年齢的に下り坂だし、ドレイモンドは早くも不良債権化しかけているし、ウィギンズはサラリーに見合うプレーヤーじゃないし、高額長期契約の4選手でチームサラリーがひどいことになっていて他にまともな選手取れないし、かと言ってこれらの選手を引き取ってもらおうと思ったら指名権も普通以上に出さなきゃいけないだろうしでどん詰りですな。ウォリアーズが優勝候補の地位に戻ることはしばらく無いと思う。その地位に戻る頃には全く違う顔ぶれになってるんじゃないかな。デュラントでさんざんやってリーグをつまらなくしてくれたので、タックス地獄含めてしばらく割食ってもらいましょ。

いやー、ラメロはね、個人的に全然評価してないんだな。結局シューティングが良くないと他がどれだけ良くてもダメで、スペース開けて守られるとドライブ封じられてそこからの展開が難しくなるし、スペースあるからと入らないシュート打ってもチームの得点効率下げる、選択肢が大幅に制限されてしまう。フォームがひどくてBEEFが全然できてないので、よくなる見込みがないと思います。変なフォームで効率のいい選手というのはごくまれな例外で、ラメロもその例外には当てはまらず極めて効率が悪い。部分的に修正してどうかなるレベルじゃなくて、0から時間かけて作り直すしか無いのではないか。さらにディフェンスがうまいロンゾと違ってこっちはかなり悪い。サイズがあってボールハンドリングとクイックネス、パスセンスは本当に素晴らしいと思いますが。まあでもせいぜいロンゾレベルじゃないかな。「ロンゾは2位で指名する価値のある選手だったか」と問われて「その価値はある」と答えられる人はほとんどいないでしょうが、ラメロについても同じことじゃなかろうか。今年は2017年と違って不作なのでしょうがない部分はあるんだけど。それにしても、最上位圏で「こいつ指名しておけば大丈夫」というのが一人もいないというのは2013年以来だろうか。本当に難しいドラフトだったと思います。32位のヴァーノン・キャリーはアズブーキと並ぶワーストペリメーターディフェンダー。ペリメーター守れない、ストレッチできない、パスできないビッグマンはどんどん淘汰されていくこのご時世に取る選手か?ビッグマンならティルマンに行ったほうが良かったんじゃないの?体重をかなり落としたみたいだけど、それでクイックネスが上がるということはそれほどないと思う。ザイオンみたいに重くても速い選手は速いし、軽くても遅い選手は遅い。アズブーキよりも足が短くて同じぐらいのフットワークしかできない選手が体重落としたところでなあ、という認識です。その点で言えば42位のニック・リチャーズは最もペリメーターディフェンスの良いCの一人で、シューティングフォームが良くてレンジも伸びる余地があるので個人的にはこっちのほうが好きなんですが。ただし、56位のグラント・リラーもそうなんだけど、年齢が高いので将来の成長がどうとかいってる時間もない。年齢が高いとポテンシャルがないというのは間違いだ、とはたしかに言いたくなることではあるが、NBA入りしたときの年齢と成績の間にははっきりとした逆相関(NBA入りしたときの年齢が若いほど良い選手になる)があるのは確か。もちろん個別のブレは大きいんだけども、全体としてその傾向は確かにある。それについては面白い記事を最近読んだのでいずれまた別に紹介しようと思います。というわけでホーネッツの指名は個人的には好きではありません。

ブルズの4位パトリック・ウィリアムズはサプライズピックということになっているが、今年の上位の層の薄さとウィリアムズの急激な評価の上がり方を見てるとそこまで驚くようなものでもないのでは、という認識です。オコロやアヴディヤより資質の劣る選手だとは思いません。他のチームでも4位持ってたらウィリアムズ、というところは多いでしょう。それより、大学ではっきりとしたわかりやすい良い成績を残した、ある程度出来上がった選手しか指名してこなかった保守的なブルズがこういうポテンシャル志向の指名をしたことには驚いてます。今年からフロント変わったんだったかな?長期的には足りないのはウィングだし、なかなか勇気のある指名で、良いと思います。好きな選手なので、育成頑張ってね。顔はいかついけど、お家がお花屋さんで喋ってる時もじもじしてて可愛いやつだよ。

キャブスの5位アイザック・オコロは、特にどうということもなく。ガードでなければ誰でもいいという感じじゃないでしょうか。ボール持たないでいいプレーができる選手じゃないと今のメンツではダメだと思うので、その意味でもアヴディヤよりは理解できる指名だと思います。肝心のシューティングが悪いので育成は相当頑張らないといけない。

ホークス6位オニエカ・オコングー。過去2年でガードとウィングを重点的に指名したので次はビッグマンというわかりやすい順当な指名。ヤングを中心としたチームの中で、アンセルフィッシュで効率的で万能型ディフェンダーのビッグマンというのはぴったりではないかと思います。あと、50位のスカイラー・メイズは、キネオロジー(運動生理学みたいなやつ)専攻で2年時にGPA4.01でアカデミック・オールアメリカ2ndチーム、3年時にGPA4.01と4年時にGPA3.93で1stチーム、4年時にはアカデミック・オールアメリカン・オブ・ザ・イヤーとめちゃくちゃすごい学業成績。はっきりいって研究者になったほうがいいのではないか。ドラフト指名されるレベルでこれだけ成績がいい選手も珍しい。ボナーさんぐらいまで遡らないといないんじゃないの。大学の学力の差とかはよくわからんけど。

ピストンズはすごい頑張って指名してメディアの評価も一様に高い。7位のキリアン・ヘイズは、多分オーストラリアよりもレベルの高いリーグで、ユーロカップフットボールにおけるヨーロッパリーグにあたるもの)でも殆ど変わらないいい成績を残していて、ラメロよりよほどいい成績なので、単純にラメロよりいい選手だとみなしているんですが。ロースタースカスカでドゥンブヤのいるPFを除いて全ポジションで力のある若手が足りないですが、残ってる中では一番いい選手を指名したのではないかと思います。アイザイア・スチュワートはハッスルプレーヤーで、フィジカルな魅力とシュートレンジ拡大の期待が持てて、人間性も良さそうなので個人的に好きな選手ですが、この不作年に将来の指名権までトレードして16位はちょっと頑張り過ぎではないかという気もします。ドラフト前のプロセスで評価を上げている印象はありましたが。出した指名権の詳細がわからないのでなんとも言えませんけど、どんな年でも今年より不作の年になる可能性は低いでしょうし、ピストンズの成績がすぐにすごく良くなることもないと思うので、基本的にはロケッツに利益のあるトレードではないかと思います。本当に欲しかったんだろうね。ケナードは膝の故障持ちでルーキー契約最終年ということでリスキーな存在で、あの得点力は捨てがたいんだけど、今後の扱いが難しい。下手に長期高額契約して怪我で不良債権化したら厳しい。サディック・ベイと交換したのは十分良いトレードだろうと思います。ガード、ウィング、ビッグマンとポジションかぶらせることなく指名したので全体としてやはり良かったと思います。

ニックスの8位オビ・トッピンは良かったんじゃないでしょうか。PGかPFのどっちかだったと思うんですが、PGの若手はいないわけではないし。ちゃんとニリキナ使え。ドラフト前だと5位から下には落ちそうもないというような評価だったので、ある程度運も良かった。あとなんかごちゃごちゃトレードして25位でイマニュエル・クイックリーは、ないんじゃない?3PとFTで点を取る以外は水準よりだいぶ下でしょう。ゲームメイクができる感じでもないしディフェンスもガード相手でしかできないし。マリク・モンクの二の舞だと思うぞー。今年の1巡目で本当に意外な指名と言えるのはクイックリーとアズブーキでしょう。ディフェンスなんか知らんという力強い指名ではありました。

ウィザーズは9位アヴディヤ。これは運がいいのか。遠からずウォールとサヨナラしなければいけないだろうからハリバートンでもいいと思いますが、どっちでも正解でしょう。個人的にはFT%の低さ、ユーロリーグレベルでは通用していないことから懐疑的ではあります。少なくともドンチッチとは実績が天と地ほども違うので、比較して夢を見るのはやめましょう。2巡目のカシアス・ウィンストンはあのサイズで身体能力が低く、ディフェンスで殺されるのは目に見えてるのであまり期待しないほうがいいぞ。オフェンスで一人の力で勝つのは大変だけど、ディフェンスは一人の穴で結構負けるからな。まあ、だから53位まで落ちたのだが。

HCがまともなだけでこんなに変わる。今NBAで一番魅力のあるチームといえばもちろんサンズ。「はじめ良ければ終わり良し」「終わり良ければ全て良し」を見事実践してみせたサンズ(最終順位はともかく)。勝っても負けても試合が面白い、本当に素晴らしいチームです。急に褒めだしてなにかというと、去年のドラフトークでキャメロン・ジョンソンの指名でゲラゲラ笑っちゃってゴメンね、ってコト!今でも20位で指名できただろとか、タイ・ジェロームであんなに頑張らなくてよかっただろとか、ウォーレンをタダで出したのはイカれてるとか思ってるけどさあ、ジョンソンがあんなにやるとは流石に想像もできん。お見事でした。そんなサンズは今年も10位でジェイレン・スミスをファンタジスタ指名、ブルズとともにメディアの酷評を受け止めるのでした。まあでもこれも分かる指名。スミスは2年目に全面的に成績を伸ばして成長力に疑問がないし、普通にロッタリー下位指名の予想がされてたので、たとえセルティックスあたりとトレードダウンしても11−13位で指名されても別におかしくはなかった。というかセルティックスや他のチームが10位にトレードアップしたいと思ってたかどうかもわからないし、取りたいならここで行くしかなかったろうと思います。欲しいポジションもPGかフロアをストレッチできるPFというところだったと思うので、スミスでも合理的な指名。酷評されているのは主に「ハリバートンいるならそっちいけよ」ということでしょう。クリス・ポールが来ても2年でいなくなるか衰えて契約延長が難しくなるわけだから、その後を考えてハリバートンでも合理的ではある。何ならそっちのほうが合理的まである。でもそこで行かないのがサンズの魅力だから……。

何度も書いてるけど、キングスは12位でタイリース・ハリバートンで、大勝利。オフェンス効率のことしか考えられないオーナー様も大満足。もう1年分の運使い果たしたでしょ。2巡目もすごくて、更に2022年の2巡目をグリズリーズからもらったのも良し。こいつら本当にキングスか?本物のキングスならもっと謎ドラフトしろ。でも「当事者の合意していないサイン&トレード」という珍ムーブをしてくれたのはさすがだったので許す。RFAの選手をFA解禁前にサイン&トレードなんてできるのかな、タンパリングになるんじゃないかしら。

ペリカンズ13位カイラ・ルイス。個人的には去年から注目していました。飛び級しているのか、1&Dルールに年齢制限の方で引っかかる珍しい事例だったので。しかもシーズン中17歳だったのにかなり成績が良かった。今年も素晴らしく、1年生選手と同年齢(というか大部分の1&Dドラフティーよりも若い)としてみたらかなりすごい成績です。

セルティックスは今年もウィング。ウィングだけが人生です。アーロン・ネスミスは使ってもらって生きる選手なので、まともなチームなら基本どこに入っても活躍するとは思います。他の指名もまあ分かる。が、正直タイレル・テリーに行くと思ってたので指名しなかったのは意外でした。グラント・ウィリアムズとかオジェレイとか頭のいい選手を取る傾向があるチームだと思っていたので。30位でも行かないのね。

毎年ドラフトークで「マジックはPGどうすんの」と書き続けてきたけど、ついにPG指名、コール・アンソニー。誰がどう見てもPGが不透明だった。ただ、「ボールホグでスコアリングファーストで非効率なPG」ってチームを負けさせるには最高の選手なので、かなりちゃんと教育しなきゃならんでしょう。今のままの君でいいのよとか言ってたら一瞬でチームがダメになると思います。

サンダーはアレクセイ・ポクシェフスキーを指名。7フッターなのにプレーはガードのようでもありウィングのようでもあり、面白い。こういう選手は評価が割れるんだけど、ほぼコンセンサス通りのところに収まったも面白い。サンダーの指名は全員ヨーロッパの選手なんだよね。37位のとか全然名前も見たことない。スタッシュしまくりでしょう。トレードで確実に戦力を強化しながらもドラフト指名券は手放さないそのトレード上手ぶりをこのブログでも褒め称えてきたプレスティGM、本気で指名権を集めるとここまでやるという1巡目指名権コレクターぶりを現在見せていますが、それでも結構しっかりした戦力を揃えているのが凄まじい。すごい男ですよ。ただ、これだけの指名権を毎年使うと、どんどんルーキーを入れ続けなければいけないので、若手をしっかり育てることもできないし力のあるベテランを獲得する枠もなくなるので明らかに持て余すでしょう。トレードアップも他のチームの思惑が絡むのでそう簡単ではないし。トレードアセットとして使おうにも数が多くて毎年毎年トレードを繰り返し続けなければならなくなりそうで、どのみちロースターの継続性が失われて、安定して優勝を狙えるようなチームを作るのはかえって難しくなるのではないか。もうトレード自体が目的化しちゃってんじゃないのかという印象すら受ける。

マブスは18位のジョシュ・グリーンも堅実だけど、2巡目もすごい。言うことなし。

20位ヒートはプレシャス・アチュワ。育成大変だと思うけど頑張ってね。アデバヨの再来的な評価が目立ちますが、そもそもこの選手は本質的にウィングであってビッグマンではないので、そこと比較してもしょうがないだろうと思います。問題はウィングなのにウィングとしての技術がからっきし無いことなのだが……。

シクサーズはメディアの評価が一様に高い。指名された3人共「メディアの評価に基づけばもっと高い順位で指名されていたはず」ということで高評価されているのでしょう。個人的には全員好きじゃないのでなんとも。タイリース・マキシーは、全体的に中途半端でいいところを探すのが難しいな、という印象です。何よりこのサイズならゲームメイクができないと使い道がなくなるんだけど、そこが怪しい。ヘイゲンズとクイックリーとで役割を食い合ってたので、そういうところでパッとしなくなってる部分もあるかな。

ナゲッツは22位でジーク・ナージと24位でRJ・ハンプトン。24位のために2023年の1巡目(ロッタリープロテクト)を出したのは、基本的にやるべきではないトレード。というのも、コロナのあれでいろいろなことが遅れていて、高卒ドラフトの解禁が2023年になるかもしれないという観測が出てきてるから。仮に2022年に解禁されても、2022年にエントリーして評価を下げるくらいならとエントリーを遅らせるプロスペクトも出てくるから、いずれにせよ2023年も豊作になる可能性が高い。ナゲッツは2021年は強いと思うけど、2023年に関しては確実な予想ができるわけではない。ハンプトンはなんだろうね、非効率でエゴイストでディフェンスもゲームメイクもあまりできないという印象で、チーム全体に対してプラスになる要素が少ないと思います。ナージはかなり好きな選手。いいところはいっぱいあるけど、「ビッグマンとしては」という但書が不要なぐらいシューティングフォームが良いのが一番魅力的。顔面もかっこいい。ディフェンスは怪しい。

ジャズの27位アズブーキは驚き。Cの仕事をさせたら世界一だと思いますが、NBAに今Cの仕事ってたいして無いでしょうよ……。クイックネスが全然ないので、ペリメーターに引っ張り出されたらヘルプでペイントエリアに戻れないですよ。ペリメーターディフェンスもひどいから誰でも抜けると思う。クローズアウトも本当に遅い。どうやって使うつもりなんだろう、逆に楽しみになってきた。サラリーダンプでトレードしたトニー・ブラッドリーは、確かスパーズが指名しそうだからとトレードアップして指名した選手なんだけど、その時出した42位指名権でレイカーズが指名したトーマス・ブライアントがあの活躍だから、世の中わからんよなー。というかジャズは古典的Cを過大評価し過ぎではないか。

ラプターズのマラカイ・フリンは特に感想が思い浮かばない。PGの長期的な置き換えを期待してるんだろうなあというのは分かるけど。

グリズリーズは相変わらず土臭い指名でたまらん。グリズリーズの指名には故郷のような安心感がある。ゼイビアー・ティルマンはとても好きなので頑張ってほしい。Two-Wayでキリアン・ティリーというのもいいけど、もう一人のショーン・マクダーモットという選手は個人的に注目していました。シューターなんだけども、通算の2P%が.619とか異常な数字で、TO%やUSG%の低さといい、非効率的なプレーは絶対しないという鉄の意志を感じるスタッツです。レベルの高いカンファレンスで、プレーを制限していながらあらゆる種類の発展的スタッツが極めて高いのがすごい。例えばT−RankのPORPAGATU!という面白い指標では、有名選手がズラッと並ぶ中で、USG%が20%を大幅に切る選手として唯一上位に入っています。Kの目から見ればかなり異様な光景です。サイズもウィングとして十分ですし、6' 6"で体重もそこまで重くない選手としてはREB%が高いのも不思議で(チームメイトが結構サイズがあるのでリバウンドの中心にはならなそうなのに)、相当勘のいい選手ではないかという印象を数字からは受けます。年齢がもう24歳らしいので残された機会は多くないと思うんですが、頑張ってほしい。数字を信頼するなら、グリズリーズは根拠のある良い指名とTwo-Way契約をしたと思います。

2巡目だけのところには触れません。デヴォン・ドットソンが指名なかったのは驚きました。ESPNのランキングで急に評価を落としたなという印象は受けましたが、指名から漏れるとは流石に思わなんだ。

全体としては、やっぱり不作だなあと思いました。今年のオフの裏テーマ「ロケッツにとってアリーザとはなにか」については手に余るのでみんなで考えて。

おしまい。