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だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

数字で見るカーメロ・アンソニー

カーメロ・アンソニーの周囲が喧しい。フィル・ジャクソン社長とアンソニーの関係がかなりこじれてきているようで、ジャクソンはアンソニーを放出すべくキャブスやクリッパーズといったチームとのトレードを模索している一方、2年前の契約でトレード拒否条項を組み入れたためにそうも簡単にはトレードできないようです。今のところアンソニーがトレード拒否条項を破棄する可能性があるのはクリッパーズセルティックスのようで、クリッパーズとトレードする場合はオースティン・リバースあたり、セルティックスとトレードする場合も誰かしらのプレーヤーでネッツのドラフト1位指名権は出さないということで、戦力的にはニックスに不利なものになりそうです。逆に言うとそこまでしてもジャクソンはアンソニーを出したいということでしょう。その一方でアンソニー自身はトレードについてニックスとは何も話をしていない、また、自分よりも家族の意志を優先したい、奥さんがNYでセレブ商売していることや息子がNYにいることを好んでいることから、トレード拒否を貫く可能性もあります。極めて不透明な状況(しかも取り囲んでいるのは面倒なニューヨークのメディアとニックスファン)に置かれたなかで戦わなければいけないアンソニーに対しては気の毒という他ありません。

現実に成立していないトレードやFA移籍について議論することほど不毛なことはないので、これ以上は書きたくないのですが、こうした話題の中でアンソニーのプレーをあらためて評価してみようという試みがいくつか出てきて、その中で内容の良いスタッツ分析記事が2本あるのでそれらを紹介します。

スティーブン・シアーによる分析

まずはセントアンセルムカレッジの助教授で、Basketball Analytics: Objective and Efficient Strategies for Understanding How Teams WinBasketball Analytics: Spatial Trackingという、その筋で評価の高いスタッツ分析本を執筆している(Kも前々から読みたいと思っているんですが、なかなか都合が……)スティーブン・シアーによる分析。オフェンス面での非効率性、ボールを止めてしまうこと、ディフェンスがダメなことについて批判的に論じています。

オフェンスに関して、TS%が.545しかないこと、それなのにUSG%が29%もあること、フリースローはうまいのにリムに突っ込まないのでそもそも試投数が多くないこと、コーナー3もうまいのにほとんど打つ機会がないこと、アイソレーションからのミッドレンジショットという非効率的なプレーが多すぎることを指摘しています。非効率的なプレーヤーとは、単純にシュートが下手であるか、シュートはうまいのにセレクションが悪いかの2通りあって、キャッチアンドシュートの3Pは44%以上で決められるアンソニーは後者であるとも指摘しています。BBRをみると、TS%はそもそも低い、キャリア通算で.545です。前に「平均的なNBAプレーヤー」とはどういうプレーヤーかという記事で見たように、2015-2016シーズンの平均的なTS%は.541ですので、効率性という観点から見て、アンソニーはごく平凡な得点力しかないとも言えます。USG%は、ポルジンギスという強力なオフェンスオプションが登場した今シーズンと昨シーズンはぎりぎり20%台ですが、通算では30%を超えており、こうした平凡な得点力の選手がチーム全体のシュートの多くを占めるようではチーム全体の得点力も上がらないと言えます。

アンソニーはとにかくボールを離さないと見なされている一方、1タッチあたりのボール保持時間は2.87秒で、ジミー・バトラーの4.17秒、レブロン・ジェームズの4.21秒に比べたら特に大幅に長いということはありません。しかし、ポテンシャルアシストが5.6と平均的で、バトラーの10.9やレブロンの16.6と比べたら非常に少ない、つまり、アンソニーはボールを持って意味のあるプレーをする機会が平均よりもかなり多い(=USG%がかなり高い)のにそのうち有効なパスをする割合が少ない、ボールを貰ったら淡白に比較的すぐシュートに行くことが多い、ということになりそうです。アンソニーがボールストッパーであるというのはこういうことなのでしょう。

ディフェンス面に関して、アンソニーがコートにいた時のほうがディフェンスが良かった最後のシーズンが2013-2014シーズンで、その年のDRtgが108.3でリーグ22位だったこと、相手のパスを逸らした回数や相手のシュートをコンテステッドショットにした回数が非常に少ないことを示し、アンソニーはよいディフェンダーではないとしています。Box Plus/Minusも通算で-1.2と悪く、ディフェンス力は低いと評価せざるをえないと思います。

これらの理由から、ニックスにいる限りはアンソニーは非効率的なプレーヤーであるしかないとしています。その一方でセルティックスに移籍することになれば、他に良いディフェンダーがいるのでディフェンスの負担が減ること、アイザイア・トーマスがゲームを作ってくれるのでキャッチアンドシュートの3Pをうてる局面が増えること、セルティックスはトーマスへの依存が強く彼がコートにいる・いないでORtgが115.8/105.2と全く違い、トーマス以外にキャッチアンドシュート以外の方法で点が取れて、相手のディフェンスをひきつけてオープンなプレーヤーを作れる選手が必要なことから、セルティックスでなら弱点が隠れて良い面が生かされるだろうと結論づけています。個人的には、アンソニーが持ちたがり・うちたがりな性格とプレースタイルを改めて、自分でうてる場面で適切にパスできるようにならないとセルティックスにいったところで難しい、むしろボールを比較的上手くシェアできているセルティックスの今のチームケミストリーを破壊しかねないと思いますが。使いにくい選手だなあと改めて感じます。

FiveThirtyEightのニール・ペイン記者による分析

彼の分析の面白いところは、538謹製のCARMELO(名前はもちろんアンソニーから取られている)で今シーズンのアンソニーに似た選手を割り出した上で、そうした選手たちのいるチームで成功したチームと失敗したチームを探し、それらをベースにして「アンソニーのような選手のいるチームを成功させるにはどうしたらいいか」を分析しているところです。

アンソニーのような選手のいるチームで、良い成績を残したものとそうでないものを分けるのに最も影響があるのが周りの選手のTS%であることがまず示されています。アンソニーレブロンと違って周りのプレーヤーを活かすようなプレーがあまりできない選手なので、周りに効率の良いシューターを置くことでスペースを広げるのがアンソニーのオフェンス力を活かす唯一の方法であるとしています。32歳のアンソニーに周りにパスを出して活かすようなプレースタイルに変えろといっても今更無理だろうから、そのままのプレースタイルで効率を上げるにはどうすべきかを考えるという、ある意味大変ドライで現実的な見方と言えます。

次に、周りにディフェンダーとリバウンダーを揃える事が必要だとしています。例としてアレン・アイバーソンの周りを同様の選手で固めた2001年のシクサーズを挙げています。これによって優れたスコアラーはオフェンスを遂行できるのだと。

しかしこうした要素をすでに備えているチームはウォリアーズとスパーズで、そういったチームにアンソニーが加わる可能性は極めて低い、現実的に移籍の可能性があるチームの中では、セルティックスが最もこういう要素を備えたチームであろうとしています。個人的には、こうした要素を備えたチームはアンソニーがいなくても十分強いし、そもそもこうしたチームをつくり上げるのは単純に難しいだろうと思います。

また、それでも結局アンソニー自身も変わっていかなくてはいけないかもしれない、アンソニーに似た選手のチームが最もよくチームケミストリーを発揮できた時期には彼らのプレースタイルも変化していた、アンソニーはもっと効率的にシュートしてもっとディフェンスを頑張らなければいけないし、そのために無駄なシュートとドリブルを減らして、リムに飛び込むプレーをもっとし、ディフェンスではリムプロテクトをもっと頑張れ、としています。

最終的には、ニックスがアンソニーに合うチームを作ってくれるのをもっと待つか、自分のプレースタイルを変えて他のチームで勝てるケミストリーを作り上げていくか、今がそれを決める時だ、と結論づけています。ペイン記者の意図としては、後者こそがアンソニーの進むべき方向だということでしょう。記事を見ればわかりますが、今シーズンのアンソニーのような選手がいるチームで優勝したチームは一つもなく、カンファレンスファイナルまでがいいところです。それに対して、アンソニーに似た選手の一人であるマーク・アグワイアがピストンズに移籍して優勝を果たした1989年を例にして、アンソニーでもプレースタイルを変えて然るべきチームでプレーすれば優勝できるよ、と示唆しています。アグワイアはマブスではオフェンスの第1オプションとしてUSG%が30%を超えるような選手でしたが、代表的なチームバスケットのチームであるピストンズでは25%程度まで落ち着いています。アンソニーが本当に優勝したいのであれば、やはりアンソニー自身が変わっていく他ないんだろうなあと思います。