だいたいNBA

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NBA Draft Combineの数値2019、ドラフトロッタリーの新しいオッズはどれぐらいタンキングを抑止したか

NBA Draft Combineの数値2019

とにかくテネシー大のジョーダン・ボーンの身体能力がすごい。特にレーンアジリティ9秒台なんて初めて見ました。驚愕。過去に一人いるみたいですけど。Max Vert以外は全部門で1位、そのMax Vertも1位のジェイレン・レキューに0.5インチ差の42.5インチでほとんど誤差みたいなものでしょう。これほど全方位で最高レベルの数字を残している選手は過去にもいないと思います。コンバイン史上最高レベルの身体能力値ではなかろうか。しかしこの選手はウィングスパンが6' 3.25"しかないのが厳しい。あの小さいカールセン・エドワーズとスタンディングリーチがほぼ同じ。AST/TOで見ると良いものの、TO%は3年間通じて14%ちょいでほとんど改善しておらず、ゲームメイカーとしてどうなのかなと疑問はあります。ワークアウトの動画やハイライトを見るに、非常にバランスが良く下半身の力がボールにスムーズに伝わっているお手本のようなシュートフォームで、3P%以上に質が高そうですが、シューターとして考えるにもサイズが、というところ。今回のコンバインで評価は上がったと思いますが、それでも2巡目でも指名はされないかな、という印象です。

サイズは、でかいのが分かっている選手はやっぱりでかかったね、というぐらい。予想を裏切るすごいウィングスパン、とかはなく、有力選手の数字も過去に比べればおとなしい印象。と言うか、事前に認識されていたよりもウィングスパンが短い選手が有力選手に多い。具体的に言うとPJワシントン、グラント・ウィリアムス、アイザイア・ロビー、タイラー・ヒーローあたり。ブランドン・クラークは、もともと腕が長い印象は全くありませんが、たった6' 8.25"しかないとは。これであれだけブロックとスティールが多いのだから、どれだけ身体能力と勘がいいのか。タッコ・フォールとボル・ボルがでかいのはわかりきったことですが、それにしてもフォールのウィングスパンは一般的な予想以上ではないかと思います。8' 2.25"って。ウィングスパン/靴なし身長比も1.10なので、この比で見てもウィングスパンが大きい(平均は1.06ぐらい)。ただでさえでかいのに余分に腕が長いのでどえらいことです。

個人的に注目しているのがニコラス・クラクストン。3月にThe Stepienのベン・ルービンのレポートが出てから急激に注目を集め始めた選手で、とにかくサイズと技術の組み合わせが面白い。もともと6' 9"のSFだった選手だけあってオフェンスでもディフェンスでもウィングの技術を持っていながら、サイズはさらに成長して完全にCのそれ。つまり、オフェンス面ではボールハンドリングがうまくゲームメイクができてフロアをストレッチできて、ディフェンス面ではペリメーターからリムまで全部守れるという今のNBAで最も理想とされるビッグマンに限りなく近い能力を持っています。プレースタイル的にはCよりもPFでしょう。もともとウィングだったからインサイドプレーヤーとしての能力が劣っているかといえばおそらくそうではなく、例えばより上位で指名が予想されるジャクソン・ヘイズブルーノ・フェルナンドと比べてもBLK%は大差がなく、FTrはむしろ高く、リム付近が主戦場のCと比較してもコンタクトプレーを厭わず「ビッグマン的な能力」はおそらくそこまで差がないのではないかと思います。REB%はやや物足りないものの、STL%が1.9%でビッグマンとしては良い数字。以前少し書きましたが、どうもスティール能力にはプレーヤーの才能が反映されるのではないかと思われるところがあり、これが高いというのは特に良いことだと思います。改善点は明白でとにかく得点効率が悪いこと。NBAでうまく行くかはここの改善にかかっているのでなるべくシューティング育成に長けたチームに指名されてほしいものです。1年目から2年目にかけて全面的に大幅に成績を伸ばしており、今回のコンバインでもレーン・アジリティやジャンプ力はこのサイズの選手にしてはかなり良く身体能力も高い、年齢も20歳になったばかりで若い、1巡目下位から2巡目上位ぐらいで指名予想されている選手の中ではダントツのポテンシャルだと思います。最近の評価の上がり方から見ると10位台の指名もあり得るかなと思います。

他に目のついたところでは、ブルーノ・フェルナンドがCとしては走力が高いことと、外のシュートをほぼ打たなかった割にシューティングドリルの結果が結構いい。NBAレンジからクラクストンとほぼ同じぐらい入っている。FT%が高いのは知っていましたが、案外この選手も現代的なビッグマンになれるかもしれません。あとディラン・ウィンドラーの身体能力が意外と高い。メジャーカンファレンスとそうでないところの差は技術よりもフィジカルな部分が大きいと思いますが、サイズ的にSFの標準以上かつ身体能力で優位に立っているのは良い兆候ではないかと思います。非メジャーカンファレンスのドラフト候補としてはミイエ・オニのほうがアスレチックな印象だったので意外でした。クリス・ウィルクスもウィングとして標準以上のサイズと身体能力があって技術のある選手なので、このへんは2巡目指名なら面白いところ。

ドラフトロッタリーの新しいオッズはどれぐらいタンキングを抑止したか

Nylon Calculusのトッド・ホワイトヘッド記者の記事。タンキングによる下を目指す戦いを防止するためNBAは今年からロッタリーのオッズを変更、負けるインセンティブを減らすことでタンキングを抑止せんとしていますが、それで実際どれぐらい抑止できているのか。

この分析で面白いのは勝敗ではなく、それぞれのチームの、プレータイムで加重平均したチームの平均年齢でタンキングしてるかどうかを判断しているところ。タンキングしているチームは実力ある主力ベテランプレーヤーのプレータイムを減らしてベンチの若手にプレータイムを割くことで、来期に向けたチームの実力の底上げと今期の敗北の両方を得ようとするだろうという考え方でしょう。

結果を見ると、プレーオフに出れなかったチームの中で、そのようなチームの平均年齢がシーズン最初の試合に比べて同じか上がったチームは昨期が3に対して今期は6、平均年齢が下がったチームは昨期が11に対して今期は8とだいぶ減っている。一番下にあるチャートでプレーオフに出れなかったチームに限定して昨期と今期を比較してみるとわかりやすいですが、明らかに年齢が下がりにくくなっています。ただ、昨季は今期と比較して西で上と下の差が大きく早期にプレーオフ行きを諦めるチームが多かったからこうなったのではないかという気もします。有利さの度合いが減ったとはいえ、結局負けるほどドラフトで有利なのは変わらないので、昨季並みに実力差があればやはり昨季並みにタンキングが起こったのではないか。14チームで1位から3位ぐらいまでを引く確率を完全にフラットにすればまずタンキングは起こらないでしょうが(いや、8位と9位の間で負けるインセンティブが生まれるか)、今回のルール変更がどれぐらいタンキング抑止に有効かはまだ判断しにくいように思います。タンキングしない利益があるのはプレーオフに出れるかどうかのところで争っているプレーオフ圏外の東西各1〜2チーム程度ですし、そのへんのチームはルール変更の有無にかかわらずタンキングをする利益はないでしょう。それ以下のチームはルール変更にかかわらずやはり負けるほどいいわけですから、そういったところも行動は変わらない。今年のロッタリーは荒れましたが、過去にも下から9番目のブルズが1位指名権を得ることもあり、荒れた結果があったからと言ってタンキングはなくならないのではないか、負けるインセンティブがはっきりと存在する以上は負けるための行動をほとんど抑えられないのではないか。これから10年ぐらい結果を積み上げないとルール変更による効果の有無は明確にはならないように思います。

(5/19 20:15 追記)

The Ringerのロジャー・シャーマン記者の記事。新しいオッズによって14チーム中の真ん中前後がそれまでと比べて大幅に有利になった結果、プレーオフに出れる可能性があったチームもそれが難しいとわかった途端により低い順位目指してタンキングしだすということをペリカンズとレイカーズを例に示しています。ロッタリー指名権を得るチームの中でタンキングするメリットのないチームは結局全体の下から14位か13位ぐらいで、それ以下のチームのオッズが大幅に改善した結果むしろ負けるインセンティブが増加すらしているのではないかという感じもします。