だいたいNBA

Kだよ。だいたいNBAのことを書くのです。だいたいスパーズのことを書くのです。

シーズン終わる、八村塁はNBA Draft Combineに招待されてない?

シーズン終わる

スパーズに限っての話ですが。去年のトレードの段階で、今期は昨期よりも弱くなっているので、昨期ギリギリプレーオフ出れる程度のチームだったのだから今期はプレーオフには出れない可能性のほうがずっと高いだろうと思っていました。更にこの後マレーのシーズン全休の怪我もあったのでディフェンスが崩壊することは間違いないだろうとも思っていました。実際シーズン前半は目もあてられないような最低のペリメーターディフェンスで、ディフェンスこそスパーズのアイデンティティという意識で見続けていた人間にとっては大変うんざりするプレーぶりでした。ましてペリメーター偏重の今のNBAでそこを守れないというのは致命的です。改善の見込みもないしこれはもうダメだと思っていたところで、ホワイトがスターターに固定されてから攻守両面で別物のように良くなったのには驚きました。ロデオロードトリップのあたりにホワイトが怪我で離脱してから全く勝てなくなったことからも、今季はホワイトのおかげでプレーオフに出れたと言ってもいいと思います。一人の選手の有無であれほど結果が変わるというのは稀有なことです。指名当時は、前年にマレーを指名して連続でPGを指名するのは過剰だと思いましたが、結果的には正解だったと言えます。今期はオルドリッジ、ゲイ、ホワイトの3人でなんとかがんばれたと思います。ゲイはFAになり、可能ならばもう1年か2年契約を延長したいところでしょうが、サラリー面の調整がやはり問題になるでしょう。

良い人事もありましたが、ここ2年ほどはむしろ悪い人事が目立ちます。最悪なのはガソルとの契約延長で、キャリア終盤で成績が落ちていくことがわかりきっている選手、POでウォリアーズのスピードに全くついていけず、どんどんペースが上がる今のNBAで必要とされなくなることがわかりきっている選手に3年4800万ドルで契約したのはどう考えても悪手でした。同時期にオルドリッジと3年7200万ドルで延長しましたが、なぜこの二人にこれほど価値の差がないのか、未だに理解に苦しみます。ガソルの契約で来季は507万ドルほどキャップスペースが使われますが、来季はすでにキャップスペースがかなり埋まっているので、これが原因で契約すべき選手と契約できなくなるようなことになる可能性は十分あるでしょう。また、例のトレードも悪手と言えます。以前書きましたが、デローザンがいることで特別チームのオフェンス全体がよくなることはなく、ディフェンス面ではいないほうがチームにとってプラスでしょう。実際今期のOn/Offスタッツを見ても、デローザンがフロアにいても得点効率はほぼ変わらず、いなくなるとDRtgは大幅に改善します。単純に彼のNetRtgを見てもプラマイゼロ程度ですが、デローザンがいないほうが成績が良いのは事実です。もちろん、デローザンがいない時間というのは2ndラインナップのぶつけ合いになっている時間というケースが多く、バルタンズやポートル、ミルズにゲイなどで優位に立っているだけという見方もできますが、デローザンとほぼ同じ時間プレーして同時にプレーしている時間の長いオルドリッジが、On/OffでもNetRtgでも優れているのも事実です。率直に言って、デローザンはいないほうがマシです。できるならトレードすべきですが、外のシュートがなくペリメーターディフェンスができない、現代的なウィングに求められる能力がかけていて年俸は非常に高額、こういう選手を欲しがるチームはなく、ドラフト指名権なしではどこもトレードしないでしょう。例えば、デローザンにラプターズからもらった29位指名権をセットで出すとなると、例のトレードの成果は、レナードとグリーンをポートルと交換したという惨憺たる結果になります。ここまでになると流石にトレードする意味がなくなりますが、キープしたとすると後2シーズンはデローザンのサラリーに人事面で苦しめられる結果になります。他チームが欲しがらないゆえにプレーヤーズオプションは行使すると思いますが、そうなるとマレーを含め来年のFAに響きます。また、同時にトレードしたのが(いい選手ですが)ポートルというのも問題で、なぜミルチノフをスタッシュしているのにわざわざ似たようなCを獲得するのか理解できません。以前書きましたがヨーロッパの選手の年俸は上がっているようで、スタッシュした選手と契約しようにもサラリーは比較的高額になる傾向が強く、オリンピアコスでエース級のプレーをしているミルチノフと今年のキャップスペースで契約できるとは思えません。仮に契約したとしたらゲイの契約に響くでしょう。また、ポートルとミルチノフで二人おいてどうするのか、どちらかを使わなくなるのなら獲得した意味がなくなります。来年契約するとして、ポートルと延長しないならやっぱりRFAでリリースする程度の古典的Cをわざわざ取る意味あったのかという話になるでしょうし、両方契約するならこれも同じタイプのCを二人もおいてどうするということになります。また、そこでミルチノフと契約しないなら多分もう契約する機会はないでしょうから、無駄な指名だったということになります。そもそも、来年のオフにマレーと高額の契約が必要になれば(クラッチスポーツが代理人なので適正以上に釣り上げてくる可能性が高い)、デローザン・オルドリッジ・マレー・ミルズでキャップスペースをほぼ使い切ってしまい再来年のオフまで何もできなくなる可能性が高いでしょう。さらに今年のドラフトは、予め分かっていたことですが、レベルが低いので29位指名権は例年より価値が低く、ここでモノになる選手を指名するのは難しいのではないかと思います。つくづく合理性のないトレードだったと思います。可能性のあったセルティックスとの指名権中心のトレードのほうが遥かに有意義だったでしょう。ガソルの契約とこのトレードは悪手であったと言わざるを得ません。

来期のスターターは、マレー・ホワイト・デローザン・オルドリッジ・ポートルあたりでしょうか。現状3Pが期待できそうなのがホワイトしかいなさそうなのが厳しいです。今期はあれだけ3Pが少ない、時代に逆行する戦い方でORtgがリーグ7位、eFG%が6位と、まあ良くもやったものだと非常に感心していますが、これがこのチームの最大限で、更に外がなくなる来期に今のやり方でこれ以上に伸ばすのはおそらく難しいでしょう。来期は再びディフェンスが重要になってくると思います。

八村塁はNBA Draft Combineに招待されてない?

Yahoo!ニュース個人の菊池慶剛の記事。「コンバインに参加しない=招待されてない」というわけのわからない前提で書かれている。NBA界隈で八村がコンバインに参加しなかった「ワケ」を「招待されていないから」と考えている人間は他に皆無ではないか。ESPNのジョナサン・ギブニーは「明らかに招待を断った」と認識しており、これが当たり前の認識でしょう。

菊池が「招待されないワケ」としているのは、実力が証明されていてNBA関係者がわざわざコンバインでチェックするまでもないからだ、大学3年間で成長過程を各NBAチームが把握できているからだ、ということだそうです。

まず、コンバインが「選手の実力を把握するための場では必ずしもない」ということが分かっていないのでしょう。コンバインは、各NBAチームの指名候補者へのインタビューの場、公正な方法でサイズを確認する機会、公正な方法で身体能力を確認する機会、高い実力の選手に限定された5 on 5でどれぐらいの能力を発揮できるかを実際に見る機会、この4つの機会を全NBAチームに公平に与えるための場です(シューティングドリルはほとんど重視されないと思われます)。招待された選手で有力な選手はこれらに選択的に参加でき、インタビューだけの参加者もいれば、サイズだけ測って身体能力は測らないという選手もいたり、全部参加する選手もいる。身体能力が低い選手や実際以上に身体能力が高いと思われている選手はあえてそこだけ参加しないということもできますし、そのような自分の不利になりそうな部分はあえて隠すようなやりかたは頻繁に見られます。なので、コンバインで選手の実力が明らかになるわけではありません。

そもそも、「実力が証明されている」と言うなら1年生にして大学個人賞総なめのザイオン・ウィリアムソンも招待する理由がなくなりますが、彼はコンバインに参加します。なのでこれは説明として全く整合性がありません。「大学で3年間スカウティングされているから」というのもおかしい。「長い期間大学でプレーしている上位候補はスカウティングされ尽くしているのでコンバインに呼ぶ必要がない」と言いたいのでしょうけど、過去の事実と照らし合わせれば、同じ条件でコンバインに呼ばれている選手がたくさんいることぐらいすぐわかります。例えば2016年は不作年で上位指名候補には上級生の選手が多くいましたが、彼らはもちろんコンバインに招待され、参加しています。例えばクリス・ダンとバディ・ヒールドは二人とも4年生(ダンは3年生ですが、2年時にほぼ全休したものの大学には4年在籍し4年間毎年プレーしてはいました)ですが、アーカイブを見ればわかる通り二人共コンバインに参加していて、しかもダンは1年前から一貫してロッタリー指名予想、さらにドラフト前には3位で予想されて、またヒールドは5位指名で予想されており、八村よりも遥かに高い順位で指名予想されていました。したがって、彼らがコンバインに参加したという事実は菊池の主張する「八村がコンバインに招待されない理由」と完全に矛盾します。つまり菊池の書いていることは間違っているのです。結局のところ、「八村はコンバインに招待されたが参加しない事を選んだ」というのがごく自然な理解です。すべてのNBAチームは有力指名候補の公正なサイズや身体能力を知りたいのですから、そういう候補者は全てコンバインに招待されているはずだというのが一般的な認識でしょう。

コンバインに招待されても参加しないというケースは毎年あります。例えば去年であれば、ディアンドレ・エイトン、ルカ・ドンチッチ、ミケル・ブリッジス、チャンドラー・ハッチソン、ミッチェル・ロビンソンが不参加でした。ドンチッチはヨーロッパがシーズン中だったので参加できなかったのでしょう。それ以外に参加しない理由としては「特定のチームとの間で指名の確約を得ている」というのが一つ考えられます。ハッチソンは予めブルズから22位での指名の確約を得ていたというのがもっぱらの噂でした。今年であれば1巡目下位指名が予想されているワシントン大のマティス・サイブルが似たような状況で不参加なので、比較的下位の指名権を持つどこかから指名確約を得ている可能性が高いと思われます(噂として出ているのはサンダー)。また、あえて情報を与えないことで不利な面を隠し評価を引き上げるという手法もありうるところです。しかし、これで評価が本当に上がるのか、知られていない怪我など教えたくない致命的な欠点があるゆえに参加しないのではないかという憶測によってかえって評価を下げるのではないかと思われる面もあり、必ずしも有利に働くわけではないでしょう。ロビンソンなどはおそらく、ミステリアスな存在にとどめておくことで「世代トップクラスの選手」という評価を独り歩きさせるつもりだったと思いますが、失敗して2巡目に転がってしまいました(ルーキーイヤーのプレーぶりはかなり良いもので、本来1巡目指名されるべき選手であったことは確かです)。2016年であれば、コンバインのあたりでは20位台の予想だったサボニスが11位指名と順位を上げているなどうまく行く例もあります。八村はサボニスと同じゴンザガ大で代理人も同じワッサーマングループなので、このときの成功例を踏襲するつもりなのかもしれません。

しかし、結局当事者以外にはコンバインに参加しない理由はわかりません。どういう意図で参加しないのか、その当事者が明かさない限り我々第三者がそれを知ることはできず、できるのは憶測だけです。したがって、「なぜ八村はコンバインに参加しないのか」という問いに対する正確な答えは、現状では「わからない」以外にはないでしょう。

菊地慶剛のこの記事は非常にレベルの低い間違った記事です。NBAドラフトに関する基本的な理解が欠けているうえ、多少の知識がある人であれば誰にでも簡単に検証できるような主張を、一切論拠を示さず、一切自ら検討した形跡も見せず、完全なる予断で書いてしまえるのは、彼がNBAドラフト分野についてライターとして無能力であることを示していると言えます。菊池は以前にもOne & Doneルールについてかなりいい加減なことを書いており、信用に値しないライターです。一定以上のNBAファンであれば今回の八村の記事が全くいい加減な話であることが一読で理解できるでしょうが、そうでない人にとっては「プロのライターが書いた記事だから信用できる」という認識をしてしまうでしょう。私が見たときに、この記事はYahoo!ニュース個人のスポーツカテゴリーで最もアクセス数の多い記事のようでした。渡邊雄太や八村、更にBリーグのおかげで日本でのNBA及びバスケそのもの話題が増えており、特に八村のドラフト関連の記事は需要があり注目が集まりやすい状況にあると思いますが、そこでこういう思い込みで書かれた間違った記事を垂れ流されるのは有害無益です。渡邊に関するデタラメ記事を書いた水野光博など、ライター連中はどうにもこうにも質の低い仕事をしている印象が拭えません。海外記事の抄訳垂れ流し系のニュースサイトも、アクセス稼ぎ目的の目先の興味を満たすだけの記事ばかりで、NBAに対する理解が全く深まらないものしかないように見えます。メディアよりもアマチュアの愛好家のほうがまっとうな気がします。プロには金をもらうにふさわしい仕事をしてほしいものですが。

この記事はYahoo!のトップページに表示される「あなたへのおすすめ」の欄に表示されていたので読んでしまったのですが、ろくなのを勧めてくれないので困ります。